8.1 配管振動の種類

8.1 配管振動の種類(types of piping vibration)

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1. 配管振動の種別

配管振動には、配管系が揺れる機械振動と、流体の動きによる音響振動とがあります。

1.1 機械振動

機械振動は、配管系を構成する要素が揺れる振動をいいます。例えば、配管や回転機器の回転軸の横振動(軸直角方向)、スプリングの縦振動(軸方向)と横振動、弁体の振動、架構の振動などが考えられます。振動には横波と縦波とがあります。

1.2 音響振動

音響振動は、配管内の流体(液体、気体)中を圧力波が伝播する振動です。流体中を伝播する波は縦波(疎密波)のみです。例えば、配管内の流体中を伝播する圧力脈動や、管楽器内の空気の振動などがあげられます。

 

2. 横波と縦波

固体中を伝播する振動は横波と縦波との両方があります。流体中を伝播する振動は縦波のみです。

図8.1.1 に機械振動に起因する横波の例を示します。図8.1.2 に流体の振動波である縦波の例を示します。縦波は、媒体が振動が伝わるポイントで密度が上昇したり減少したりすることにより、媒体中を伝播していきます。縦波の挙動を考える際、媒体の疎密で表すのは定量的にイメージが難しいので、密のポイントを山部、疎のポイントを谷部として横波に置き換えて考えることが多いです。

図8.1.1 機械振動に起因する横波の例

図8.1.2 流体振動に起因する縦波の例

 

3. 振動の用語

図8.1.1、図8.1.2 に従って、振動で用いられる用語を解説します。

・平均応力、平均圧力:振動する物体(固体、流体)に負荷される応力、圧力の平均値(単位;N/mm2、Pa)
・応力振幅、圧力振幅:応力波形、圧力波形の全幅の半分
・音速C:1秒間に音が物体中を伝播する距離(単位;m/s)
・周期T:1波長が伝播する時間(単位;s) T=1/f
・振動数、周波数f:1秒間当たりの振動数(単位;Hz) f=1/T
・角振動数、角周波数ω:1秒間当たりの回転角度(単位;rad/s) ω=2π/T
・波長λ:1サイクル当たりの波の長さ(単位;m) λ=C/f
・位相差φ:同一の振動数の複数の波が、相対的に時間軸に対してずれている場合のずれの差(単位;deg)

 

4. 振動の基本的な性質

(1)正弦波の組合せで表される

周期的に同じ波形を繰り返す振動については、どんな複雑なものでも基本周波数の正弦波と高次の周波数の正弦波との組合せにより表されます。図8.1.3 に11次の正弦波とそれらを組み合わせた波形を示します。11次までの周波数の組合せで、方形波に近似できることがわかります。

図8.1.3 7次正弦波までの組合せ

 

(2)振動が発生する条件

振動が発生する条件は以下の2つです。

1)質量をもつ物体が運動することにより、運動エネルギーを持つ。
2)運動による変形によりエネルギーが蓄積される。

 

(3)振動数に影響を与える要因

振動数に影響を与える要因は、配管系の質量と剛性です。系の質量が増加するは振動数は低下します。一方、系の剛性が増加すると振動数は上昇します。
系の質量と、剛性がわかれば、固有振動数が求められます。

 

5. 配管系に発生する振動の分類

配管系に発生する振動は大きく分けて、強制振動や、流体励起振動、自励振動に分類されます。

図8.1.4 配管系に発生する振動

5.1 強制振動

配管系に外部から周期的な変位、または負荷が与えられた際に、同じ周期で振動する現象を強制振動といいます。強制振動は、外部からの刺激が無くなれば無くなります。
強制振動の原因として、以下のようなものがあります。

・ポンプや圧縮機などから発生する脈動
・気液二相流
・弁による流れの乱れ
・配管に接続されている回転機器からの振動の伝達

など。
外部から付与される振動数と配管系の固有振動数とが一致すると共振状態になります。

5.2 流体励起振動

振動する要素が無い流れから発生する振動です。ただ、自励振動のように系の固有値のみの振動とは異なり、流れの状態により発生する振動数が変化します。
流体励起振動の原因として、以下のようなものがあります。

・流れ中の置かれた物体と流れの相互作用により、規則性を持って発生する渦列(カルマン渦)により励起される物体の振動
・流路中の凹み(キャビティ)の死水部で発生する渦列の振動によるキャビティトーン
・ベローズの谷部の死水部で発生する渦列の振動で起こる振動

5.3 自励振動

配管系内の要素が動いたり系内圧力が高まったりする変動が、配管系内の振動成分の無い定常流からエネルギーをもらって、配管系の要素の持つ揚力や弾性力、慣性力などにより加振力を生じて、機械的振動や圧力変動が増加します。
最初に何らかの要因で振動が発生すると、配管系が固有振動数で自励的に、減衰量とバランスするまで振幅が増大する現象を自励振動といいます。
自励振動の原因として、以下のようなものがあります。

・全開したバタフライ弁のフラッタ
・絞り弁微開時の弁体の振動

 

6. 配管系の共振現象

6.1 機械振動の共振

配管系の構成機器の持つ固有振動数(もっとも振れが大きくなる振動数)付近の振動数を受けると大きく振動します。
例えば、ポンプの固有振動数が、接続している配管系の固有振動数と一致するときに共振が発生して、場合によってはポンプや配管が破損することがあります。

6.2 気柱振動の共振

配管系の管の空洞部には、長さや容積などを諸元とする空洞固有の、圧力変動をしやすい振動数があります。この気柱の固有振動数と同じ振動数の圧力変動が外部より加わると、空洞内で共振して、その振動数で空洞が大きく圧力変動します。
例えば、リコーダは、吹き口から吹き込まれた空気の渦の振動数が、指で押さえることにより決まる管の長さで決まる周波数で選択されて共振(音の場合は共鳴)する現象です。

 

 



まとめ

・配管系の振動には、系の構成要素の機械振動と、配管内の流体中に圧力波が伝播する音響振動があります。
・機械振動は横波と縦波の両方があります。一方、音響振動は流体中の伝播なので縦波だけが伝播します。
・振動の基本的性質は以下の通りです。
 /すべての振動は正弦波の組合せで表すことができます。
 /振動発生の条件は、運動エネルギーを持ちそのエネルギーが築盛されることです。
 /振動数に影響を与える要因は、配管系の質量と剛性です。
・配管系に発生する振動は、強制振動、流体励起振動、自励振動の3種類に分類されます。

 

 

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参考文献
「配管設計」実用ノート   西野悠司  日刊工業新聞社

 

引用図表
図8.1.1 機械振動に起因する横波の例   「配管設計」実用ノート
図8.1.2 流体振動に起因する縦波の例   「配管設計」実用ノート
図8.1.3 7次正弦波までの組合せ   ORG
図8.1.4 配管系に発生する振動   参考「配管設計」実用ノート

 

ORG: 2021/05/15