4.5 ストレインゲージ型圧力変換器

4.5 ストレインゲージ型圧力変換器
(Strain Gauge Pressure transducers)
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Contents
0. はじめに:ストレインゲージ式圧力測定の重要性と位置づけ
圧力計測は、機械系技術者にとって開発設計、生産技術、品質保証といった幅広い業務において不可欠な技術です。流体の挙動を把握するため、システムの健全性を評価するため、あるいは製品の性能を保証するために、正確かつ信頼性の高い圧力測定が求められます。
ストレインゲージ式圧力測定器は、その高い精度、堅牢性、小型軽量性、そして電気的な出力信号という特長から、工業分野において極めて重要な位置を占めています。
ストレインゲージの原理を応用した圧力変換器は、機械的な変形を電気信号に変換することで、遠隔での計測やデータロギング、さらには自動制御システムとの連携を容易にします。これにより、プラントのプロセス制御、油圧・空圧システムの監視、自動車や航空機の開発試験、構造物の健全性診断など、多岐にわたる分野で活用されています。
1. ストレインゲージの基本原理:抵抗変化とひずみの関係
1.1ストレインゲージとは
ストレインゲージは、物体の変形(ひずみ)を電気抵抗の変化として検出するセンサです。
その基本的な原理は、導体の電気抵抗が、その長さ、断面積、そして材料固有の電気抵抗率に依存するという物理法則に基づいています。
物体に外力が加わり、引張方向のひずみが生じると、ストレインゲージの導体はわずかに伸び、断面積が減少します。これにより、導体の電気抵抗は増加します。一方、圧縮方向のひずみが生じると、導体はわずかに縮み、断面積が増加し、電気抵抗は減少します。
1.2ひずみ(ε)と抵抗変化率(ΔR/R)の関係
ストレインゲージを測定対象物に電気絶縁体を介して接着すると、対象物が外力によって伸縮する際に、ストレインゲージ内の金属抵抗体も同様に伸縮します。この伸縮によって抵抗体の電気抵抗値が変化するため、この抵抗値の変化を測定することで、対象物に生じたひずみの程度を間接的に把握することができます。
ひずみ(\( \epsilon \))と抵抗変化率(\( \Delta R / R \))の間には、以下の関係式が近似的に成立します。
\( \Delta R / R = G \epsilon \)
ここで、\( R \)はひずみがない状態でのストレインゲージの抵抗値、\( \Delta R \) はひずみによって生じた抵抗変化量、そし( \( G \) はゲージ率(strain factorまたはgauge factor)と呼ばれる定数です。ゲージ率は、ストレインゲージの材料や構造によって決まる無次元量であり、金属箔ストレインゲージとして一般的に使用される、銅ニッケル合金(コンスタンタン)やニッケルクロム合金(クロムニッケル)では、2程度の値になります。また、半導体ストレインゲージの場合、ゲージ率は数十から数百と非常に高く、高感度なひずみ計測に適していますが、温度特性などが複雑になる場合があります。
1.3ストレインゲージ型圧力変換器の動作原理
ストレインゲージを用いた圧力測定では、圧力を受ける受圧素子(例えば、ダイヤフラム、ブルドン管、ベローズなど)の変形をストレインゲージで検出し、その抵抗変化から圧力を間接的に測定します。ストレインゲージ型圧力変換器は、ダイヤフラムを受圧素子にすることが多いです。
この受圧素子の変形量を検出するために、弾性体のひずみが最大となる箇所にストレインゲージが接着されています。ストレインゲージは、弾性体の変形に応じて伸縮し、その電気抵抗値を変化させます。この抵抗値の変化は、計測アンプによって増幅され、圧力に対応した電気信号として出力されます。
多くのストレインゲージ型圧力変換器では、計測体に取り付けられた4つのストレインゲージがホイートストンブリッジ回路で接続されています。計測アンプは、これらのストレインゲージに励起電圧を供給し、ブリッジ回路の出力信号を収集・処理することで、ストレインゲージの抵抗変化を圧力値として表示したり、制御システムへ送信したりすることが可能になります。
この変換の精度は、受圧素子の設計、ストレインゲージの選定と接着、そして電気回路の構成などに大きく左右されます。
2. ストレインゲージ式圧力変換器の構造と種類
2.1 ストレインゲージ式圧力変換器の構造
ストレインゲージ式圧力変換器の基本的な構造は、圧力を受ける機械的な受圧素子と、その変形を検出するストレインゲージ、そして電気信号を処理・出力するための回路から構成されています。
受圧部には、金属製のダイヤフラムが用いられることが一般的です。このダイヤフラムの裏側には、抵抗ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)を構成する4つのストレインゲージが貼り付けられています。ダイヤフラムに圧力が加わると、その圧力に応じて中央部がたわみ、このたわみによってストレインゲージが伸縮します。
金属製ダイヤフラムの面内では、圧力によってひずみの大きさが場所によって異なるため、歪みの偏りを補正し、より正確な圧力を検出するために、4つのストレインゲージが最適な位置に配置されています。また、耐久性や信頼性を高めるために、溶接やOリングなどのつなぎ目を極力なくし、ダイヤフラムと圧力導入部が一体構造となっているものもあります。
図1 ストレインゲージ型圧力変換器の例 出典:共和電業カタログ
2.2ストレインゲージ型圧力変換器による圧力測定のメカニズム
ストレインゲージ型圧力変換器による圧力測定のメカニズムは、以下のステップで進行します。
1)圧力印加: 測定したい圧力が圧力計の受圧部に導入されます。
2)ダイヤフラムの変形: 導入された圧力によって、受圧部のダイヤフラムが変形(たわみ)します。
3)ひずみ発生: ダイヤフラムの変形に伴い、裏面に接着されたストレインゲージにが伸縮してひずみが生じます。
4)抵抗の変化: ストレインゲージの金属箔抵抗体が伸縮することにより、その電気抵抗値が変化します。引張ひずみに対しては抵抗値が増加し、圧縮ひずみに対しては抵抗値が減少します。
5)電圧の出力: ホイートストンブリッジ回路に接続されたストレインゲージの抵抗値が変化することで、ブリッジ回路の出力電圧が変化します。この出力電圧は、印加された圧力に比例します。
6)圧力の算出: 計測された出力電圧を、あらかじめ校正された関係式に基づいて圧力値に換算します。
このように、ストレインゲージ型圧力変換器は、圧力を機械的な変形に変換し、その変形を電気的な信号に変換することで、高精度な圧力測定を実現しています。
2.3 ストレインゲージ式圧力変換器の種類
ストレインゲージ式圧力変換器に用いられるストレインゲージの種類は、大きく分けて金属ひずみゲージ式と半導体ひずみゲージ式の二つがあります。
(1)金属ひずみゲージ式
金属ひずみゲージは、薄い金属箔をエッチング加工によって微細なパターンにしたもので、受圧素子のひずみが生じる箇所に接着剤で貼り付けられます。銅ニッケル合金(コンスタンタン)やニッケルクロム合金(クロムニッケル)などが一般的に用いられます。
比較的広い温度範囲で使用でき、安定性や耐久性に優れているという特長があります。また、製造技術が確立されており、コストパフォーマンスが高いことも利点の一つです。
金属ひずみゲージは、ゲージのパターンによってさらに箔形ゲージ、線状ゲージなどに分類されます。箔形ゲージは、様々な形状の受圧素子に適合しやすく、感度や精度も比較的高いことから、多くの圧力変換器で採用されています。
(2)半導体ひずみゲージ式
半導体ひずみゲージは、シリコンなどの半導体材料を用いて作製されます。金属ひずみゲージと比較してゲージ率が数十倍から数百倍と非常に高く、微小なひずみでも大きな抵抗変化が得られるため、高感度な圧力測定に適しています。特に、小型で高精度な圧力変換器の実現に貢献しています。
しかし、半導体ひずみゲージは、温度特性が金属ひずみゲージに比べて大きく、非線形性もやや強いという欠点があります。このため、温度補償回路や線形化回路を組み込む必要があり、一般的に金属ひずみゲージ式よりもコストが高くなる傾向があります。高精度が要求される特定のアプリケーションや、小型化が重要な場合に選択されることが多いです。近年では、半導体製造技術の進歩により、温度特性や安定性も改善されてきています。
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3. ストレインゲージ式圧力変換器の特性と選定
ストレインゲージ式圧力変換器を選定する際には、以下の特性を考慮する必要があります:
(1)測定範囲と精度:
測定したい圧力の範囲(定格圧力範囲)を正確に把握し、その範囲を十分にカバーできる圧力変換器を選定する必要があります。一般的には、測定箇所の最大圧力の1/2程度となるように選ぶことが推奨されています。また、予期せぬ圧力スパイクに備えて、許容過負荷圧も確認しておく必要があります。用途によっては、負圧(連成圧)や絶対圧の測定が必要となる場合もあるため、対応可能な製品を選ぶ必要があります。
求められる圧力測定の精度(非直線性、ヒステリシス、再現性など)は、アプリケーションによって異なります。一般的に、高精度な測定が求められる場合には、補償回路や校正技術が高度な製品が選択されます。精度は、フルスケールに対するパーセント表示や、読み値に対するパーセント表示などで示されます。
(2)温度特性:
ストレインゲージの抵抗値や受圧素子の材料特性は温度によって変化するため、圧力変換器の出力信号も温度の影響を受けます。使用環境の温度範囲を考慮し、温度補償が適切に行われている製品を選定することが重要です。
温度補償の方法としては、温度特性が逆の素子を組み込んだり、電子回路で補償したりする方式があります。温度特性は、一般的にゼロ点の温度ドリフトやスパンの温度ドリフトとして仕様書に記載されます。
(3)応答性:
圧力の変化に対して、圧力変換器がどれくらいの速さで出力信号を追従できるかを示す応答性は、動的な圧力変化を測定するアプリケーションにおいて重要な要素となります。
応答性は、一般的に応答周波数や時定数で表されます。高速な応答性が求められる場合には、受圧素子の小型化や軽量化、および高性能な電気回路が採用された製品が選択されます。
(4)耐久性と信頼性:
工業環境で使用される圧力変換器には、振動、衝撃、腐食性ガス、粉塵などに対する耐久性が求められます。また、長期間にわたって安定した性能を発揮する信頼性も重要な選定基準となります。受圧素子の材質、ハウジングの構造、保護等級(IPコード)などを確認し、使用環境に適した製品を選定する必要があります。
(5)適用環境:
測定する圧力媒体(液体、気体、腐食性流体など)の種類や、使用場所(屋内、屋外、危険場所など)の環境条件を考慮して、適切な材質や防爆構造を持つ圧力変換器を選定する必要があります。特に、腐食性流体を測定する場合には、耐食性に優れた材質(ステンレス鋼、チタンなど)が用いられた製品を選択する必要があります。
(6)出力信号:
圧力変換器の出力信号は、アナログ電圧信号(例:0-5V, 1-5V, 0-10V)、アナログ電流信号(例:4-20mA)、またはデジタル信号(例:HART, Modbus, Fieldbus)などがあります。使用する計測・制御システムとの互換性を考慮して、適切な出力信号形式の製品を選定する必要があります。特に、ノイズの影響を受けにくい電流出力(4-20mA)は、工業プロセス計測において広く用いられています。
4. ストレインゲージ型圧力変換器の長所と短所、他方式との比較
4.1長所
ストレインゲージ型圧力変換器は、他の方式の圧力計と比較して、以下のような長所があります。
1)設置の自由度: 基本的に、設置場所や姿勢による制約を受けにくいです。ただし、一部の製品や用途では垂直設置が推奨される場合もあります。
2)荷重測定も可能: ロードセルとして応用することで、測定対象に加わる荷重値を測定することができます。
3)長期安定性: ドリフトが少なく、長期的な圧力モニタリングに適しています。
4)広い圧力範囲: 低圧から高圧まで、幅広い圧力範囲に対応できる製品があります。
5)高精度測定: 高精度な圧力測定が可能です。特に、校正された製品では高い信頼性が得られます。
6)高温対応: 高温環境下で使用可能な製品もあります。
7)堅牢性・長寿命: 一体構造などにより、堅牢で長寿命な製品があります。
8)高速応答性: 圧力変化に対する応答が速い製品があります。
4.2. 短所
一方、ストレインゲージ型圧力変換器は、以下のような短所が考えられます。
1)電源が必要: 電源駆動タイプの場合、定期的な電池交換が必要となることがあります。外部電源駆動タイプでは、電源の設置場所に制約を受けることがあります。
2)読取りの直感性: デジタル表示させた場合、圧力の変動が激しい際には直感的に、読取りにくいことがあります。
3)故障要因: デジタル式の場合、機械式に比べて故障する要因が多い可能性があります。
4)信号処理: ピエゾ抵抗効果による抵抗変化だけでは、十分な測定結果が得られない場合があり、適切な信号処理が必要となることがあります 36.
4.3 ストレインゲージ方式と他の方式との比較
ストレインゲージ型圧力変換器は、他の代表的な圧力計と比較して、以下のような特徴があります。
・ ピエゾ抵抗式圧力計:
半導体材料のピエゾ抵抗効果を利用し、高い感度と小型化が可能です。ただし、静的な圧力測定には不向きな場合があります。
・ 静電容量式圧力計:
ダイヤフラムの変形による静電容量の変化を検出し、微小な圧力変化を高精度に測定できます。ただし、材料や環境による制約がある場合があります。
・ブルドン管式圧力計、ダイヤフラム式圧力計、ベローズ式圧力計、液柱式圧力計:
これらは機械式の圧力計であり、電源を必要としない利点がありますが、電気的な出力が得られないため、遠隔監視やデータロギングには別途工夫が必要です。
ストレインゲージ型圧力変換器は、これらの比較から、広い圧力範囲と高い精度を持ち、電気的な出力を容易に扱えるため、様々な産業用途に適していると言えます。
表2 ストレインゲージ方式と他の方式との比較 出典:Gemini Deep Reserch
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5. ストレインゲージ式圧力変換器の使用事例
ストレインゲージ式圧力変換器は、その優れた特性から、様々な産業分野で幅広く応用されています。
(1)プロセス制御における圧力計測:
化学工場や工場設備、生産ラインなどのプロセス制御の分野では、様々な圧力計測にストレインゲージ型圧力変換器が利用されています。
具体的には、化学プラントにおいて管路を流れる高圧・高粘性流体の圧力を連続的に監視したり、圧縮機や冷凍機の圧力測定、水力発電所での水圧測定、工場内の油圧装置、ボイラーの蒸気圧、ガスタンクの残量監視などに用いられています。生産設備のプレス機械や射出成形機などの圧力制御など、幅広い用途で活躍しています。
タンクの内容量測定や制御にも、ストレインゲージを応用したロードセルが利用されています。
(2)油圧・空圧システムの圧力監視:
建設機械、特殊車両、および工作機械などにおいて、作動油や圧縮空気の圧力を精密に計測し、システムの効率的な制御や安全管理に貢献します。
(3)構造物のひずみ計測と圧力換算:
橋梁、建築物、航空機などの構造物に発生するひずみをストレインゲージで測定し、その値から応力や荷重、さらには間接的に圧力を評価するために用いられます。例えば、風洞実験における圧力分布測定などにも応用されます。
(4)自動車産業における圧力センシング:
自動車分野では、エンジンの燃料噴射制御、ブレーキ制御(油圧制御や電子制御ブレーキシステムEHB)、無段変速機(CVT)の油圧コントロール、タイヤの空気圧監視などに適用され、エンジンの効率向上、排出ガス低減、安全性の向上に貢献しています。また、カーエアコンの冷媒圧力測定、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化システム(DPF)の目詰まり監視、燃料電池車の水素や空気、生成水の圧力モニタリングなど、環境性能や安全性能に関わる重要なシステムにも応用されています。さらに、エキゾーストマニホールドの応力測定など、部品の耐久性評価にも活用されています。自動車の自動変速機試験装置など、開発・試験の現場でも高精度な圧力測定に貢献しています。
また、近年では、半導体圧力センサが小型軽量化に貢献しています。
(5)医療分野における圧力計測:
医療分野では、高精度・高安定性が求められる様々な用途でストレインゲージ型圧力変換器が用いられています。具体的には、低侵襲手術に用いられるカテーテル、人工透析装置、人工呼吸器、点滴搬送システム、輸液ポンプなど、患者の生命に関わる重要な医療機器に利用されています。手術中に外科医に触覚フィードバックを提供したり、手術後やリハビリ中の患者の筋肉の状態をモニタリングしたりする目的にも、ストレインゲージが応用されています。患者用体重計や乳児用体重計など、正確な体重測定が求められる場面でも、ストレインゲージ式のロードセルが活用されています。
身近な用途として、血圧計は欠陥の微小な圧力を高精度に計測する目的で使用されます。高感度な半導体ストレインゲージが活用されています。
(6)航空宇宙産業における圧力計測:
航空宇宙分野では、ロケットエンジンの推進剤圧力測定や、機体の構造試験におけるひずみ測定などに利用されています。ジェットエンジンの性能試験における推力測定にも、ストレインゲージを応用したロードセルが用いられています。旅客機の落下衝撃試験やグライダーの主翼の破壊試験など、安全性を評価するための実験においても、機体各部のひずみを測定するためにストレインゲージが重要な役割を果たしています。耐環境性に優れたストレインゲージ型圧力変換器は、航空機の高度計測(気圧)、油圧系統の圧力監視、ロケットエンジンの燃焼圧計測など、過酷な環境下での高精度な圧力計測に用いられます。
6. ストレインゲージ式圧力変換器の取付けと配線
ストレインゲージ式圧力変換器を正しく使用するためには、適切な取付けと配線が必要です:
6.1 取付け方法
(1)取り付け場所の選定:
振動や温度変化の影響を受けにくい場所、測定対象の圧力を正確に伝えられる場所を選定します。配管に取り付ける場合は、圧力変動が少なく、流れの乱れがない箇所を選ぶことが望ましいです。
(2)取付け姿勢:
液体圧を測定する場合は、液柱による圧力差が生じないように、可能な限り測定箇所と同じ高さに取り付けます。気体圧を測定する場合は、特に制限はありません。
(3)接続方法:
1)ねじ込み接続: 一般的な圧力変換器はねじ込み式の接続となっています。適切なトルクで締め付け、シール材(パッキンやシールテープ)を用いて漏れがないように確実に接続します。締付けトルクが不足すると漏れの原因となり、締付けすぎると変換器を破損する可能性があります。
2)フランジ接続: 高圧や大口径の配管では、フランジ接続が用いられることがあります。規定のボルトで均等に締め付け、適切なシール材を使用します。
(4)配管の取り回し:
配管の取り回しは、変換器に無理な応力が加わらないように注意します。必要に応じて、サージ圧から変換器を保護するためのアキュムレータやスナバを設置することも検討します。
6.2 配線と電気的接続
(1)ケーブルの選定:
使用環境の温度、湿度、ノイズレベルなどを考慮して、適切なシールドケーブルを選定します。特に、アナログ出力信号を伝送する場合には、ノイズ対策が重要になります。
(2)配線方法:
変換器の取扱説明書に従って、正確に配線を行います。電源線、出力信号線、アース線を間違えないように接続します。
(3)シールド処理:
シールドケーブルを使用する場合は、シールド線を適切な箇所に接地します。両端接地はグランドループの原因となることがあるため、通常は受信側の信号処理回路のグランドに片端接地します。
(4)ターミナルブロック接続:
変換器によっては、ターミナルブロックによる接続方式が採用されています。端子番号を確認し、確実に接続します。
(5)コネクタ接続:
コネクタ接続の場合も、コネクタの形状とピン配列を確認し、確実に接続します。防水コネクタを使用する場合は、正しく嵌合させます。
6.3 ノイズ対策
(1)シールドケーブルの使用と適切な接地:
上述のように、シールドケーブルの使用と適切な接地は、ノイズ対策の基本です。
(2)ツイストペア線の使用:
出力信号線にツイストペア線を使用することで、外部からの誘導ノイズを低減できます。
(3)フィルタ回路の挿入:
必要に応じて、ローパスフィルタなどのフィルタ回路を信号処理回路の入力段に挿入し、高周波ノイズを除去します。
(4)サージ保護:
雷サージなどから変換器や信号処理回路を保護するために、サージ保護素子を設置することを検討します。
(5)配線ルートの分離:
電源線やノイズ発生源となる機器の配線と、信号線をできるだけ離して配線します。
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7. ストレインゲージ式圧力変換器の校正と保守
ストレインゲージ式圧力変換器の精度を維持し、信頼性の高い測定を行うためには、定期的な校正と適切な保守が重要です。
7.1 校正方法
圧力変換器の校正は、既知の正確な圧力(標準圧力)を印加し、その際の出力信号を測定することで行います。校正の結果は、校正証明書として記録され、圧力と出力信号の関係を示す校正曲線や校正定数が示されます。
圧力計の校正については、JIS B7547-1:2020 「圧力計の特性試験方法及び校正方法」の規定がJIS規格にあります。
(1)基準器の準備:
校正には、**より高精度な標準圧力発生器(例:重錘形圧力計、液体式圧力標準器など)**と、高精度な電圧・電流測定器が必要です。これらの基準器は、トレーサビリティが確保されている必要があります。トレーサビリティとは、測定結果が国家標準などの上位標準に連鎖的に比較校正されている状態を指します。
(2)校正手順:
測定範囲内で複数点の標準圧力を印加し、それぞれの圧力に対する出力信号を記録します。上昇時と下降時の両方で測定を行うことで、ヒステリシスを確認することも重要です。
(3)校正結果の評価:
記録された圧力と出力信号のデータを用いて、直線性、ヒステリシス、再現性などを評価します。必要に応じて、オフセット調整やスパン調整などの調整を行います。
(4)校正頻度:
校正の頻度は、圧力変換器の使用頻度、使用環境、求められる精度などによって異なりますが、一般的には1年に1回程度を目安に行うことが推奨されます。重要な計測に用いる場合は、より短い間隔で校正を行う必要があります。
(5)外部校正機関への依頼:
自社で適切な校正設備がない場合は、計量法校正事業者認定制度(JCSS)などによって認定された外部の校正機関に校正を依頼することができます。認定された校正機関で発行された校正証明書は、国家計量標準へのトレーサビリティが保証されています。
7.2 定期点検とメンテナンス
(1)外観点検:
定期的に圧力変換器の外観を点検し、損傷、汚れ、配管の緩みなどがないか確認します。
(2)配線確認:
配線に緩みや断線がないか、端子台やコネクタの接続状態を確認します。
(3)清掃:
受圧部や配管内に異物が詰まっていないか確認し、必要に応じて清掃します。特に、粘性の高い流体や固形物を含む流体を測定する場合には、定期的な清掃が重要です。
(4)ゼロ点調整:
必要に応じて、無圧状態での出力信号(ゼロ点)を調整します。
(5)過負荷防止:
定格圧力範囲を超える圧力を印加しないように注意します。過負荷は、圧力変換器の特性劣化や破損の原因となります。必要に応じて、安全弁などの過圧保護対策を講じます。
(6)記録:
点検や校正の記録を保管し、圧力変換器の状態を把握できるようにします。
8. ストレインゲージ、最新の技術動向と将来展望
8.1. 最新技術動向
ストレインゲージ技術は、様々な分野でのニーズの高まりを受け、常に進化を続けています。近年では、以下のような技術動向が注目されています。
・ ワイヤレスセンシング技術の進展:
センサーの小型化と低消費電力化により、ワイヤレスでデータ伝送が可能なストレインゲージ式圧力センサの開発が進んでいます。これにより、設置場所の制約が軽減され、遠隔監視やIoT(Internet of Things)との連携が容易になります。
・ 小型化・高精度化:
より小型で、かつ高精度な測定が可能なストレインゲージや圧力センサの開発が進んでいます。MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)技術の応用により、微細な構造を持つ高感度なセンサが実現されています。
・ デジタル化:
センサーに信号処理機能を内蔵し、デジタル信号を直接出力できるスマートセンサの開発が進んでいます。これにより、ノイズの影響を受けにくく、リアルタイムでのデータ処理や解析が容易になります。
・ 環境対応:
持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の少ない材料や製造プロセスを用いたストレインゲージや圧力センサの開発が進められています。
・ 薄膜技術の応用:
薄膜形成技術を用いることで、従来のストレインゲージよりも高感度で、温度安定性に優れた製品が開発されています。
・ 光ファイバ技術の導入:
光ファイバを利用したストレインゲージ技術も注目されており、電磁ノイズの影響を受けにくく、長距離や多点での計測に適しています。
8.2. 将来展望
ストレインゲージ型圧力変換器の市場は、今後も継続的な成長が予測されています。特に、自動車、航空宇宙、医療、エネルギーといった主要産業における需要増加が、市場成長を牽引すると考えられています。
背景には、精密測定とデータ収集の重要性の増大、スマートセンサーの普及、IoTとの連携強化、そして過酷環境下での利用ニーズの増加といった要因があります。
将来的には、より小型で高性能、かつ低コストなストレインゲージ式圧力センサが開発され、様々な分野での応用がさらに拡大していくと予想されます。自己診断機能を持つ高機能なセンサや、ワイヤレス技術を活用した柔軟な計測システムなども普及していくと考えられます.
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9. 管理人のおまけ
このタイプの圧力変換器は、転職した油圧機器メーカで使い倒しました。前職のターボポンプ屋のときは、ブルドン管式圧力計か、他のコンテンツで述べましたマノメータ位しか使いませんでした。他の設計者は、マノメータも使いませんでした。
圧力変換器で測定すると、感熱紙プリンタに応答性の良い圧力のデータが吐き出されてくることに、びっくりしました。前職では、目で読むだけでした。ただ、感熱紙はとても高価だった記憶があります。前職で、こんな使い方をしたら、怒られるな と言うレベルの使い方なので、企業に大きさは技術開発の場面でも格差が出るわな。問妙に納得した記憶があります。
もっぱら、共和電業さんの圧力変換器を使っておりました。
本コンテンツを書く過程で少し調べたら、懐かしく思い出しました。
参考文献
圧力計技術の発展の系統化調査 清水明雄 国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第15集 2010年
機械工学便覧 第6版 α04-18章、β05-05章 日本機械学会
Measurement_Instrumentation_and_Sensors_Handbook CRC Press LLC 1999年
Lessons in Industrial Instrumentation Ver.0.6 Tony R. Kuphaldt 2009年
Fundamentals of Industrial Instrumentation and Process Control William C. Dunn McGraw-Hill 2005年
Measurement and instrumentation theory and application Alan S. Morris, Reza Langari ELSEVIER 2012年Instrumentation and Control Manual 400 Pressure Measurement Chevron Corporation 2000年
PG-U型圧力変換器-取扱説明書
図表
図1 ストレインゲージ型圧力変換器の例 出典:共和電業カタログ
表2 ストレインゲージ方式と他の方式との比較 出典:Gemini Deep Reserch
ORG:2025/03/21

