工場が関係する法令

工場が関係する法令(laws related to factories)

 

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工場が関係する法令には、いろいろな法律、政令、規則、条例などが、細かく詳細まで規定されています。
すべてを網羅することは難しいですが、主要なものを紹介します。

 

1. 工場建設時に検討しなければならない法令

工場を新たに建設する場合、建設可能な場所や、工場の大きさ、緑地の比率など、様々な面で規制を受けます。
ここでは、代表的な法律を例として挙げます。ただ、工場の種別によってはそれ以外の法律にも関連してきます。

工場建設に関する法律や条例の適用については、高度の専門知識が必要になります。そのため、工場建設に精通している建設会社やコンサルタントの助言を受けることが大切です。

(1)工場立地法

工場立地法は、工場の立地が環境の保全を図りつつ適正に行われるようにするための法律です。工場立地法は、高度経済成長期が終わりを迎える1973年に制定されました。この時代は、右肩上がりに経済成長を続ける一方、工業化の過程で、様々な環境問題が表面化した時代でもありました。各地で公害病の発生が表面化した時期でもあります。皆さんもお聞きになっているかも知れませんが、「水俣病」、「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」や、「第二水俣病」が有名です。このような状況下で、経済発展と福祉向上を目的として制定されたのが、工場立地法です。

 

・ 目的:

工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行われるよう、工場立地に関する調査を実施し、準則等を公表し、勧告、命令を行うことで、国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上に寄与することです。

・ 対象となる工場:

– 製造業、電気供給業者(水力、地熱及び太陽光発電所は除く)、ガス供給業者、熱供給業者

 

・ 対象となる規模:

– 敷地面積 9,000m2以上 又は 建築面積 3,000m2以上

 

・ 届出内容:

対象工場でかつ対象規模に該当する工場は、特定工場と呼ばれます。届出は、新設時ばかりでなく、増設や用途変更、および生産品の変更などいろいろな場合に必要です。

– 工場等の概要(名称、所在地、敷地面積、生産施設の面積、緑地面積、環境施設の内容等)

– 事業計画の概要

– 周辺地域の環境状況

– 環境影響評価の結果

 

(2)都市計画法

工場を建設する場合、その土地が属する地域により「建てられる建物」と「建てられない建物」を定めているのが都市計画法です。都市計画法によって街全体のバランスを考えて、用途地域を定めています。

都市計画法における用途地域は、全部で12種類ありますが、大まかには住宅系・商業系・工業系の3地域に分類されます。

工場の建設に適した用途地域は基本的には工業系で、準工業地域・工業地域・工業専用地域の3種類になります。それぞれの用途地域には細かな規制があり、建設可能な工場の種類が制限されます。

例えば準工業地域であっても、火薬や石油などの危険物を多く貯蔵する施設は、著しい環境悪化を招く恐れがあるといった理由で建設できません。逆に、住宅系の用途地域であっても一定規模以下であり危険性も少なく、環境悪化の恐れが少ないと判断されるものは建設できる場合もあります。

 

(3)建築基準法

建築基準法は、工場だけではなく、すべての建物に適用される法律です。建築基準法で、建物の建蔽(けんぺい)率や容積率、建物高さなど様々な規制が設けることにより、無秩序な建設を防止します。

工場を新設する際には、以下の3つの段階に分けて建築基準法に適しているか特定行政庁による審査・検査が行われます。

 - 建築計画の作成(設計)段階: 建物の建設計画段階で、その建物が建築基準法に適合しているのか審査され、問題が無いことが認められてから、着工となります。

– 施工段階: 工場の建設途中でも、特定の工程が完了した時点で、建築基準法が定める基準に適合しているか検査が行われます。

– 施工完了後: 工場完成後に、最終検査が行われます。この最終検査で問題が無いことを認められなければ、工場の使用許可が下りません。

 

工場の建設に密接に関係する法律は、これら3つの法律です。しかし、業種や営業内容、工場立地などによって、その他にも関係する法律があります。

 

 

2. 安全衛生に関する法令

工場を含め労働者が働く環境で、企業が遵守すべき労働環境を規制するための法令について、概要を述べます。

 

(1)労働基準法:

1947年に制定されました。すべての労働者を対象に、労働賃金、労働時間、休憩・休日などの労働条件についての最低基準が定められています。

(2)働き方改革関連法:

2019年から順次施行されています。残業時間の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保について、定められています。

(3)労働安全衛生法:

労働基準法のうち、労働安全衛生に関する条文を分離独立する形で1972年に可決成立された法律です。労働者の安全と健康の確保を目的とし、職場の安全衛生管理、危険防止措置、健康診断などの規定が含まれています。工場における機械設備の安全性や労働環境の改善に関わる法律です。

(4)消防法:

火災の予防・警戒・鎮圧や、災害等による傷病者の搬送を適切に行うため、建築物などについて防火・消防上必要な規制を定めた法律です。消防法は、すべての建築物に対して適用されます。建築物を管理する企業は、防火管理者の設置、危険物の貯蔵や取り扱い、消防設備の整備や定期点検などの規制に注意しなければなりません。

(5)高圧ガス保安法:

高圧ガスの製造、販売、使用、輸送などを安全に行うための基準を定める法律です。事故防止のための技術基準、保安管理、設備の検査などが規定されています。高圧ガスの製造、貯蔵、販売、使用等について定め、安全性を確保するための法律です。高圧ガス保安協会による保安検査等を実施し、高圧ガス事故の防止に努めます。

 

 

3. 環境に関する法令

工場設置にあたっては、工場周囲の環境を保全する必要があります。主な法令を以下に示します、

 

(1)環境基本法:

日本の環境政策の基本となる法律で、人間と環境の調和ある共生を目指しています。公害対策基本法と自然環境保全法に代わって、1993年に制定・施行されました。環境の保全に関する基本理念や方針を定め、環境保護のための具体的な政策推進を義務付けています。

(2)大気汚染防止法:

大気汚染の防止および公害健康被害の防止を目的としています。自動車や工場などから排出される有害物質の排出基準を定め、清浄な大気環境の保持に努める法律です。

(3)水質汚濁防止法:

水域の保全と公害防止を目的とし、工場や家庭から排出される汚水による水質汚濁を防ぐための規制を定める法律です。排水基準や浄化施設の設置が義務付けられています。

(4)騒音規制法:

日常生活環境内の騒音を規制することにより、快適な生活環境を確保することを目的とする法律です。特に、工場や交通機関から発生する騒音の規制に重点を置いています。

(5)振動規制法:

騒音規制法と同様に、生活環境内での振動を規制し、快適な生活環境の確保を目的とした法律です。工事現場や工場などから発生する振動に対する規制が含まれています。

(6)廃棄物処理法:

廃棄物の適正な処理を通じて公衆衛生の保持と生活環境の保全を目的とする法律です。廃棄物の収集・運搬・処理・処分に関する基準や、リサイクルの推進が規定されています。

(7)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法):

人の健康や生活環境への影響を考慮して、化学物質の製造、輸入、使用に関する規制を定める法律です。新規化学物質の評価・管理を中心に、リスクに基づいた規制が行われます。

 

 

4. 製品安全に関する法令

製品の安全性や被害発生防止などが、製品別や業種別に関係する法律が決められています。代表的なものについて記述します。

 

(1)製品安全法:

消費者が安全に製品を使用できるように、特定の製品に安全基準を設け、製造者や販売者に対して製品の安全性の確保を義務付ける法律です。不安全な製品の回収や、消費者への情報提供も含まれます。

(2)電気用品安全法:

電気用品の安全性を確保するため、製造・輸入事業者に対して国が定めた技術基準の遵守を義務付ける法律です。また、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することを目的としています。特定の電気用品には、PSEマークの表示が求められます。

(3)機械安全法(機械製品安全法):

使用者の安全を確保するために、特定の機械製品に対して安全基準を設け、これらの製品の製造や輸入、販売に関する規制を定める法律です。対象となる機械製品は、法律によって指定されます。

(4)玩具安全基準:

子供が使用する玩具の安全性を確保するために設けられた基準です。化学物質の含有量や、窒息などの危険を防ぐための形状・構造に関する基準があり、製造者や輸入者はこれらの基準を満たす必要があります。

(5)食品衛生法:

食品の安全性と衛生を確保することを目的とする法律で、食品の製造、加工、販売から消費に至るまでの過程における衛生管理の基準を定めています。また、有害物質の混入防止や、食品添加物の使用基準なども規定しています。

(6)PL法(製造物責任法):

製造物の欠陥が原因で、他人の生命・身体・財産に損害が生じた場合、製造業者等に賠償義務を負わせる法律です。

(7)食品安全基本法:

日本の食品の安全性を確保するための基本的な法律です。この法律は、消費者が安心して食品を消費できるように、食品の安全管理に関する基本的な方針や体制を定めています。

 

 

5. その他

その他、工場や製造業のみならず、一般人や組織に適用される法律として、代表的なものを示します。

 

(1)労働契約法:

労働契約に関する基本原則やルールを定めた法律です。労働者と事業主間の契約における権利と義務を明確にし、労働条件の明示、契約の更新、不当解雇の禁止など、労働契約に関わるさまざまな事項を規定しています。労働者の保護を目的とし、公正な労働関係の確立を促進します。

(2)民法:

日本の私法の中核をなす法律で、人の身分や財産に関する基本的なルールを定めています。契約、不法行為、相続など、個人間の権利関係を広範に規制しており、日常生活における様々な法律問題に適用されます。

(3)会社法:

会社(株式会社、有限会社など)の設立、組織、運営に関する法律です。会社の法人格、株主の権利と義務、取締役や監査役の職務と責任など、会社運営に必要な基本的なルールを定めています。企業活動の健全な発展と、投資家保護を目的としています。

(4)特許法:

発明に関する法律で、新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有する発明に対して、一定期間、独占的な権利(特許権)を付与することを規定しています。特許権者は、特許を受けた発明を自由に使用することができるほか、他人がその発明を使用する場合には、許諾を得る必要があります。技術革新の促進と、発明者の利益保護を目的としています。

 

 

ここで挙げた法令以外にも、工場や製造業に関係する法律は多々あります。また、社会の変化に対応するため、これらの法令は定期的に改正されています。最新の法令の内容を把握しておくことが重要です。

 

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参考文献
e-Gov 法令検索:[https://elaws.e-gov.go.jp/]
経済産業省HP:[https://www.meti.go.jp/]
厚生労働省:[https://www.mhlw.go.jp/]
環境省:[https://www.env.go.jp/]

 

ORG:2024/04/03