1. 温度計測の特徴

1. 温度計測の特徴(Features of temperature measurement)

 

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本コンテンツでは、温度測定の特徴について記述したいと思います。
温度は、日常生活や産業、科学研究など、さまざまな分野で非常に重要なパラメータです。ここでは、このHPのスタンスとして工業関係での使用事例を中心に記述を進めたいと考えます。
温度測定法には多くの種類があり、それぞれに特有の特性があります。

1.1 温度測定の基礎

温度測定は、物体の熱的状態を数値で表す方法です。温度を測定する装置を温度計といい、様々な種類があります。主な温度計には、水銀温度計、電子温度計、赤外線温度計などがあります。これらは使用される環境や必要とされる精度、応答速度、費用などによって選ばれます。

 

1.2 温度測定の原理

温度計は大きく分けて接触型と非接触型に分類されます。
接触型温度計は、測定対象に物理的に接触して温度を読み取るタイプです。液体封入ガラス製温度計や熱電対などが、接触型に該当します。
一方、非接触型温度計は、赤外線などを利用して対象の放射エネルギーから温度を推定する形式です。

1.3主要な温度測定方法

 

1.3.1 液体封入ガラス製温度計

液体封入ガラス製温度計は、温度変化によって体積が変わる液体(多くは水銀または着色アルコール)を使用しています。ガラス管内に封入された液体が膨張または収縮することで、ガラス管外面の目盛により温度が読み取られます。液体封入ガラス製温度計は、そのシンプルな構造と直接読取りが可能なので、教育現場や家庭のみならず、工場での簡易的な測定などに広く使用されています。ただ水銀は有毒ですので取扱いには注意が必要です。

 

1.3.2 サーミスタ温度計

サーミスタ温度計は、温度に応じて電気抵抗が大きく変化するセラミック素材のサーミスタ(温度感応抵抗体)を利用した温度計です。非常に高い感度と迅速な反応速度を持ち、環境監視や精密機器の温度制御に適しています。
電子体温計や、エアコン、自動車エンジン温度センサーなど、広範囲に使用されています。

1.3.3 抵抗温度計

抵抗温度計(RTD)は、温度変化に伴う金属の抵抗値の変化を利用して温度を測定します。特に化学的に安定でしかも高純度のものが得られやすいプラチナを使用した白金抵抗温度センサは、JISC1604に規定され標準温度計として用いられています。
化学工業や食品加工業など、プロセス制御において信頼性の高いデータが得られます。

1.3.4 熱電対

熱電対は、異種の金属を組み合わせた接点において、温度差が生じると起電力が発生します。この起電力を測定することで温度を推定します。非常に広い温度範囲をカバーできるため、工業用途に非常に適しています。
適用温度範囲によりいくつかの種類が決められています。
比較的低コストで、広い温度範囲をカバーすることができるので、特に高温を取扱う産業プロセスに適しています。

1.3.5 バイメタル式温度計

バイメタル式温度計は、熱膨張係数が異なる2つの金属の薄板を重ね合わせたもの(バイメタルストリップ)を使用します。置かれた場所の温度が変化すると、2種の金属に伸縮差が生じて、ストリップが曲がり、その動きを通じて温度が測定されます。
主に低コストが要求される家庭用機器や一般産業機器に使用されます。機械的な信頼性と耐久性を持ち、広範な応用が可能です。

1.3.6 圧力式温度計

圧力式温度計は、密閉された容器内の液体や気体が温度変化によって、圧力が変化することを温度の指標として利用します。化学工業などのプロセス制御や食品加工での冷凍庫温度監視や殺菌装置の温度制御などに用いられます。で見られる温度計です。

1.3.7 放射温度計

放射温度計は、物体から放射される赤外線エネルギーを測定して温度を算出します。接触せずに温度を測定することが可能で、高温や危険な場所、移動する対象の温度測定に使用されます。
製鉄炉やセラミックス製造など、直接温度計を使うことが難しい環境での温度管理に役立ちます。また、リアルタイムでの温度監視が可能であるため、産業自動化において重宝されています。

 

1.4 温度測定技術進展と今後の展望

温度測定の技術は日々進化しており、精度と速度の向上が見られます。よりリアルタイムでの温度監視が可能になり、産業や研究での適用範囲が広がっています。
例えば、ワイヤレスセンサーネットワークの利用により、大規模な施設や機械の温度を遠隔から効率的に監視することができるようになりました。
またマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)技術により、温度センサーはより小型化と高性能化が進んでおり、医療機器やポータブルデバイスに組み込まれるようになりました。
さらに、人工知能(AI)の導入により、収集された温度データからより深い洞察を得ることができるようになり、予測保全やプロセス最適化が行えるようになります。これにより、エネルギー効率の向上やコスト削減が期待されます。

1.5 温度測定の課題

一方、温度測定技術にはいくつかの課題が存在します。例えば、高温や極低温などの極端な環境下での測定精度の確保、測定データの安定性と再現性の向上、さらに環境に左右されずに正確な測定を行うための技術開発が求められています。
また、非接触式温度計の場合、測定対象の材質や色、表面状態によって測定値が影響を受けることがあります。これらの問題を解決するために、より高度な校正技術やアルゴリズムの開発が進められています。

1.6 まとめ

温度測定は、今後も多くの分野で重要な技術として位置づけられます。持続可能でかつ、効率的な社会の実現に向けて、温度測定技術の進化は不可欠です。この技術の進展により、私たちの生活や環境がより良くなることが期待されます。

 

参考文献
温度はどうすれば正しく測れるか  服部晋  化学教育Vol.25 No.1
ガス製造業における温度計測   坂上誠一et al.  計測と制御Vol.42No.11 2003年
Measurement & Instrumentation Principles 3rd ed. Alan S Morris Butterworth Heinemann 2001年

ORG:2024/04/18