28.10 インボリュート歯形とサイクロイド歯形との比較

28.10 インボリュート歯形とサイクロイド歯形との比較(Comparison between Involute and Cycloidal Gears)

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産業機器に使用される歯形としては、インボリュート歯形とサイクロイド歯形とがありますが、動力伝達用の歯車には、インボリュート歯形が多く使用されています。その理由は以下によります。

インボリュート歯形の長所

1. インボリュート歯形の最も重要な優れた点は、速度比を変えずに、ある範囲内で1対のインボリュート歯車の中心距離をある限界の範囲内で変化させることができることです。つまり、中心距離誤差のバラツキが、回転精度、噛合いに影響しないことです。
一方、サイクロイド歯形は、中心距離を正確に保つ必要があります。

2. インボリュート歯形では、圧力角は歯同士の噛合いの開始から終わりまで一定値を維持します。そのことは、滑らかな運転と歯の摩耗の低減のために必要な要件です。
一方、サイクロイド歯形は、圧力角は噛合いの開始時点で最大で、噛合いの進行につれて減少し、ピッチ点でゼロになり、再び増加し噛合いの終了時点で最大になります。この結果、歯車の滑らかな運転が得られません。

3. インボリュート歯形の歯末(face)と歯元(flank)とは、一つの曲線で形成されています。一方、サイクロイド歯形では、歯末と歯元で2つの曲線(エピサイクロイド(epicycloid)とハイポサイクロイド(hypocycloid))がそれぞれ適用されます。

4. インボリュート歯形は、形状が簡単、工作が容易、低価格で精度が出しやすい。一つの工具で歯数の異なる歯車を製作可能です。

 

サイクロイド歯形の長所

1. サイクロイド歯形は歯元面が広いので、同じピッチのインボリュート歯形よりも強くなります。そのため鋳造材の場合にはサイクロイド歯形の方が良好です。

2. サイクロイド歯形では、歯面の接触は凸面と凹面との間で起こります。一方、インボリュート歯形では凸面同士が接触します。これは、インボリュート歯形と比較してサイクロイド歯形の方が摩耗が少なくなります。しかしながら、摩耗の差は無視できるほどです。

3. サイクロイド歯形では、干渉はまったく発生しません。このことはサイクロイド歯形が有利な点です。
一方、インボリュート歯形が歯数が少ない場合に干渉が発生します。しかしながら、切り下げ限界以内で転位(profile shift)を行うことにより回避することができます。

 

それぞれの歯形の定義

図28.10.1 にインボリュート歯形のもとになるインボリュート曲線の定義を示します。
図28.10.2にサイクロイド曲線の定義を示します。図28.10.3はサイクロイド曲線を歯車に適用する場合のエピサイクロイド曲線とハイポサイクロイド曲線の創生を示します。

図28.10.1 インボリュート曲線

図28.10.2 サイクロイド曲線

図28.10.3 エピサイクロイド曲線とハイポサイクロイド曲線の創生

 

参考文献
A Text Book of Machine Design by R.S.Khurmi, J.K.Gupta
KHKの歯車ABC_入門編    KHK
HANDBOOK OF GEAR DESIGN 2TH ED Gitin M Maitra Tata McGraw-Hill    1994

 

引用図表
図28.10.1 インボリュート曲線   ORIGINAL
図28.10.2 サイクロイド曲線   ORIGINAL
図28.10.3 エピサイクロイド曲線とハイポサイクロイド曲線の創生  HANDBOOK OF GEAR DESIGN

 

 

ORG: 2017/9/3
REV: 2018/10/17; 誤字修正(御覧頂いている方よりの御指摘による)
REV: 2020/07/19; 曲線を追加