Oリングの密封機構

Oリングの密封機構(Sealing mechanism of an Oring)

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Oリングは、断面がO形(円形)の環状のガスケットです。使用方法は、溝に装着し適度に圧縮させて、油や、水、空気、ガスなど、液体気体を問わず色々な流体のシールとして使用されます。

固定用、運動用、航空機用など、色々な規格が規定されています。密封流体の種別や、温度などの使用条件が適さない場合、膨潤や、圧縮割れなどの不具合を生じます。

 

1.Oリングの材料に要求される性質

Oリングは、押しつぶされることにより発生する応力によって密封作用を得ています。基本的に、異常な変形を起こさない範囲で、適度な圧縮応力を持つことが、基本的に要求される性質です。そしてこの基本的な性質は、長時間使用しても維持される(永久ひずみが小さい)ことが要求されます。

このような性質を持つ材料としては、各種組成の合成ゴムが最も適しています。流体の種別や用途に応じて、ゴムの種類を使い分ける必要があります。

図1 Oリング材料に要求される性質

 

2.Oリングの密封原理

Oリングは、溝に装着して、一定量の圧縮を与えて押しつぶすことにより、ゴムの反発力(接触圧力)により密封する作用をします。大気圧付近の低圧の場合は接触圧力のみで流体の漏れを閉止します。このOリングの圧縮量(=Oリングの太さ-溝寸法)をつぶし代と言い、元のOリングの太さに対するOリングの圧縮量の割合をつぶし率といいます。
流体圧力が増加すると、Oリングはその圧力によって変形して、溝の低圧側に寄せられて、O形からD形に変形します。D形になると接触圧力が増加して、高圧でもシールすることが出来ます。理論的には、ゴムが破壊されるまでシールすることが可能です。

図2 Oリングの密封機構

図3 Oリングの密封機構(加圧時)

 

3.高圧密封時のはみ出しとその対策

Oリングは、原理上はゴムが破壊されるまでシールすることが可能です。しかし、Oリングの使用個所は、接合面や摺動面になりますので必ず隙間が存在します。密封流体の圧力が高くなると、その隙間からOリングがはみ出して破壊されて密封機能が低下します(図4)。密封流体が高圧の場合は、バックアップリングを使用することにより、このはみ出し現象を防止することが出来ます(図5)。バックアップリングはOリングの両側から高圧が付加される場合はOリングの両側に取付ける必要があります。高圧が片側からしか付加されない場合は、Oリング側にのみバックアップリングを取付ければよいことになります。

図4 過大圧力によるOリングのはみ出し

図5 バックアップリングによるはみ出し防止

 

バックアップリングは、密封流体の圧力が6.9MPa(70kgf/cm2)以上は使用が推奨されます。Oリングのはみ出しは、作用する圧力や、Oリングの硬さ、取付け部の隙間に関係します。詳細に設計する場合は、図6に示すOリングのはみ出し限界値を参考にして、バックアップリングを使用することが望ましいです。

図6 Oリングのはみ出し限界値

 

4.参考

(1)Oリングの線径と密封性

Oリングは、円形断面をつぶして(圧縮して)密封性を確保しています。従って、使用中にゴムの弾性による反力(接触圧力)が減少すると機能的に不安定になります。Oリングの材料は合成ゴムですので、加圧状態が継続すると永久変形して反力(接触圧力)の現象は避けられません。

圧縮率を一定にして、一定温度一定時間保持した場合の圧縮永久ひずみ率のグラフを示します(図7)。このように、圧縮率を一定にした場合、Oリング線径の太い方が圧縮永久ひずみ率が小さくなり、反力(接触圧力)の減少程度も小さくなりますので、安定した密封性を得るためには線径の太いOリングを選定するようにします。
特に、運動用に使用する場合は、線径の太い方がねじれ防止にも効果があります。

図7 Oリング太さと圧縮永久ひずみ率

 

(2)Oリングのつぶし代

Oリングは、密閉のために一定量圧縮されます。この圧縮をつぶし代といいつぶし率で計算します。つぶし率は一般的には8 ~ 30%になるように設計されます(図8)。Oリングのつぶし率を決める要因として、組付け性への配慮が必要になります。これは、組付け時にむしれやかじり、噛み込みなど、Oリングに傷がつくのを防いだり、ゴムの反力が大きくなって組付け性の悪化を避けるためです。平面固定用より円筒面用のつぶし率が小さいのは、組付け性への配慮によるものです。

図8 取付け部によるつぶし代の差異

 

また、運動用(回転/摺動)と固定用とでは運動用の方がつぶし率を小さめに設計します。これは運動用では、つぶし率が大きくなると摺動抵抗が増加すること、およびOリングの摩耗が早くなることを避けるためです。
具体的なOリング溝の設計は、Oリングメーカのカタログに記載されている数値、および注意事項を参考にして行ってください。

ここでは、つぶし代と、つぶし率の計算式を示します(図9)。

つぶし代 = A+B = (Oリング線径- 溝深さ)

つぶし率(%)= (A+B)/ Oリング線径 x 100

図9 つぶし率の定義

 

(3)バックアップリング

バックアップリングは、Oリングが運動用及び円筒面固定用の場合に、密封される流体圧力、或いは溝隙間がはみ出し現象の限界を超える場合に使用します。バックアップリングはOリング取付け部の両側から圧力が付加される場合はOリングの両側に装着し、一方向からのみ高圧力が付加される場合は、低圧側にのみ装着すればよいことになります(図10)。
しかし、バックアップリングは、Oリングの破損原因の大半を占めるむしれや損傷を防止して、Oリングの寿命を長くする効果があるので、するのではみ出しが問題にならないような低圧の使用条件でも適用する場合があります。その場合は、2個のバックアップリングをOリングの両側に取付けるのが好ましいです。

図10 バックアップリングの装着

 

バックアップリングの形状には、スパイラル(T1)、バイアスカット(T2)、エンドレス(T3)の3種類があります。はみ出し防止効果が最も優れているのはエンドレス(T3)ですが、取付け性についてはバイアスカット(T2)、スパイラル(T1)が優れています。一般にはスパイラル形状が最も多く使用されています(図11)。
スパイラル(T1)は、流体圧力が10 ~ 20MPaの範囲で使用します。使用温度が100℃を超える場合は10MPa未満で使用します。バイアスカット(T2)は、流体圧力が15 ~ 20MPaを超えても使用できます。エンドレス(T3)は、流体圧力が25MPaを超え、使用温度が135℃を超える場合に適用します。

図11 バックアップリングの形状

 

バックアップリングの材料は、ほとんどの流体に対して低温から高温まで広範囲に化学的に安定で、溶解や腐食を起こしにくい、四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)を使用しています。

 

 

 

 

参考文献
NOK Oリングカタログ
KOYO オイルシール&Oリングカタログ
三菱電線工業HP
華陽物産HP
JIS B2401-4

 

引用図表
図1 Oリング材料に要求される性質   NOKカタログ_参照
図2 Oリングの密封機構    三菱電線工業HP_参照
図3 Oリングの密封機構(加圧時)    三菱電線工業HP_参照
図4 過大圧力によるOリングのはみ出し   華陽物産HP_参照
図5 バックアップリングによるはみ出し防止   華陽物産HP_参照
図6 Oリングのはみ出し限界値   NOKカタログ_参照
図7 Oリング太さと圧縮永久ひずみ率   NOKカタログ
図8 取付け部によるつぶし代の差異   NOKカタログ
図9 つぶし率の定義     華陽物産HP
図10 バックアップリングの装着   NOKカタログ
図11 バックアップリングの形状    JIS B2401-4_参照

 

 

ORG:2019/6/19