2.1.3 層流と乱流

2.1.3 層流と乱流(Laminar Flow and Turbulent Flow)

 

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1. 層流と乱流の発生条件:レイノルズ数(\( R_{ e } \))の役割

配管内を流体が流れる際、その流れの性質は層流(Laminar Flow)と乱流(Turbulent Flow)及びその両方の特徴を持つ遷移流(Transition Flow)のいずれかに分類されます。層流は、流体が層状に滑らかに流れる状態を指し、乱流は、速度や圧力が不規則に変動し、激しい混合を伴う状態を指します。また、遷移流は層流から乱流へ移行する不安定な領域を遷移流といいます。一般には、層流から乱流へ移行する際の状態を言いますが、乱流から層流への遷移(逆遷移)する状態の流れも遷移流といいます。
プロセス配管設計においては、流体がどのモードで流れているかにより、圧力損失計算や熱交換効率の予測の基礎となります。
これらの流れのモードを決定する無次元数が、レイノルズ数 (\( R_{ e } \))です。レイノルズ数は、慣性力と粘性力の比を表し、以下の式で定義されます。
\( R_{ e } = \displaystyle\frac{ V D \rho }{ \mu } = \displaystyle\frac{ V D }{ \nu } \)
ここで、
\( V \) : 平均流速 [\( m/sec \)]
\( D \) : 管内径 [m]
\( \rho \) : 流体密度 [\( kg/m^3 \)]
\( \mu \) : 流体の粘性係数 [\( kg・( m \dot sec ) \)]
\( \nu = \mu / \rho \) : 動粘性係数 [\( m^2/sec \)]

レイノルズ数が低いと粘性力が支配的となり層流に、高いと慣性力が支配的となり乱流になります。

層流から乱流へ遷移するときのレイノルズ数を、臨界レイノルズ数(\( R_{e, c} \))といいます。
一般に、円管内流れでは、\( R_{ e } \) が約2000未満であれば層流、\( R_{ e } \) が約4000以上であれば乱流(完全発達乱流)として扱われます。この臨界範囲の判断は、配管設計の初期段階で流体の特性(密度や粘性係数)を考慮し、特に粘度の高い流体(例:グリセリン:密度1264 kg/m3の動粘度係数は、1180 mm2/sec 程度)を扱う場合には極めて重要です。粘度が温度によって大きく変動する流体もあるため、設計条件における粘度を正確に把握する必要があります。
層流領域では、流体抵抗係数(摩擦係数)がレイノルズ数のみの関数となるのに対し、乱流領域では、レイノルズ数に加え、配管内面の相対粗度(\( \epsilon / D \))が重要な影響因子となります。

図 層流と乱流  出典:高圧ガス保安技術 -甲種化学・機械講習テキスト- 高圧ガス保安協会 平成7年

 

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2. 流れのモードがプロセス設計に与える実務的影響

配管内の流れのモードは、流体の輸送効率だけでなく、プロセス全体に影響を及ぼします。

2.1 層流の特徴と設計上の注意点

層流では、配管の中心付近の流速が最大となり、壁面付近では流速がゼロになる放物線状の速度分布(Parabolic Profile)を示します。この性質上、配管壁面付近の流体がほとんど混合しないため、熱交換器(Heater/Exchanger)や反応器へ供給する配管では、流体全体としての熱伝達や混合が不均一になりやすいという問題が生じます。また、層流は比較的低い流速で発生するため、液体の配管ラインで層流が発生すると、ドレンの滞留や気体の巻き込み(スラッグ流)が発生しやすくなり、腐食(Corrosion)の原因にもなり得ます。特に油圧配管の設計においては、標準流速が設定されており、一般配管では2 m/sec程度、速くても 5 m/sec を超えないことが推奨されていますが、層流が発生しない範囲で流速を確保することが実務上の要諦です。

2.2 乱流の特徴と設計上の影響

乱流では、流体の激しい混合により速度分布が平坦化し、配管壁面近くの境界層が薄くなります。この「流れの平坦化」は、流体輸送の観点からは抵抗の増大(圧力損失の増加)を意味しますが、プロセス工学の観点からは、流体全体の混合が促進され、熱伝達効率や反応効率が向上するという大きなメリットがあります。
しかし、乱流を伴う高流速は、配管の健全性や機器の保護の観点から問題を引き起こす可能性があります。具体的には、流速が過大になると、配管の屈曲部などでエロージョン(侵食)やキャビテーションを促進し、配管の肉厚減少や損傷を招くリスクが高まります。さらに、流体の不規則な変動(乱流変動)は振動源となり、特にポンプなどの回転機器に接続された配管や、支持スパンが不適切な箇所で配管の固有振動数と共振し、亀裂や漏洩の原因となる場合があります。したがって、プロセス配管では、機能的要件と機械的健全性のバランスを取った最適な流速範囲(標準流速)を設定することが重要です。

図 層流と乱流との性質  出典:「配管設計」実用ノート  西野悠司 日刊工業新聞社 2017年

 

3. 摩擦損失の評価と配管サイズ設計への応用

配管設計における主要な業務の一つは、適切な配管サイズの選定であり、これは許容される圧力損失(または損失水頭)の制約の下で行われます。流れのモードに応じて、摩擦損失係数(Friction Factor, \( f \) または \( \lambda \)) の計算方法が大きく異なります。

3.1 層流における摩擦損失

層流(\( R_{ e } < 2000 \))の場合、摩擦損失係数は、配管内面の粗さに依存せず、レイノルズ数のみの関数として定義されます。これは、ハ-ゲン・ポアズイユの法則として知られており、摩擦損失の計算が比較的容易であることを意味します。

3.2 乱流における摩擦損失

乱流領域(\( R_{ e } > 4000 \))では、摩擦損失係数はレイノルズ数と相対粗度(\( \epsilon/D \))の両方に依存します。高レイノルズ数の流れ(高圧ガス輸送など)では、流速や流量を増加させても抵抗係数が一定に近づき、配管の粗度(Roughness)が支配的な要因となる完全乱流領域に入ります。この領域では、層流の場合とは異なり、粘度変化の影響は無視でき、摩擦損失はほぼ粗度のみに依存します。

3.3 配管サイズの選定

配管サイズの選定は通常、まず経験に基づいた標準流速(Standard Velocity)から仮のサイズを決定し、その後、選定された配管経路に基づき圧力損失を計算し、許容損失と比較してサイズを調整する手順で行われます。この圧力損失の計算時には、使用する流体の性質(特に粘度)と流速からレイノルズ数を算出し、流れのモードを特定し、モードに応じた適切な摩擦損失係数(例:ムーディー線図、またはコールブルックやニクラーゼの式)を用いて厳密な計算を行う必要があります。
特に、粘度の高い流体(例:重油、高分子溶液など)を扱う場合、配管サイズが大きくなると、流速が低下し、\( R_{ e } \) が急激に低下して層流に移行する可能性があるため、配管サイズ選定時に流速と\( R_{ e } \) を常に確認することが、適切なポンプ動力や熱交換設計を保証するために不可欠となります。

 

 

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参考文献
「配管設計」実用ノート  西野悠司 日刊工業新聞社 2017年
高圧ガス保安技術 -甲種化学・機械講習テキスト- 高圧ガス保安協会 平成7年
PIPING HANDBOOK 7th ed  Mohhinder L. Nayyar P.E. MacGraw-Hill 2000年

図表
図 層流と乱流  出典:高圧ガス保安技術 -甲種化学・機械講習テキスト- 高圧ガス保安協会 平成7年
図 層流と乱流との性質  出典:「配管設計」実用ノート  西野悠司 日刊工業新聞社 2017年

ORG:2025/10/07