3. 太陽電池の種類

3. 太陽電池の種類(Solar cell type)

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私達が太陽電池と言えば、シリコンを用いたものを思い浮かべます。一番最初に身近に見たのは電卓の上の方に何枚か貼り付けているたものでした。

今、電池について調べていると、太陽電池にはいろいろな種類があることに気付きました。シリコンを使った太陽電池についても昔はシリコンウェーハから製作されたものとの思っていました。

では早速はじめましょう。

太陽電池は、いろいろな分類方法がありますが、もっとも一般的なものは材料による分類だと思います。大きく分類して、シリコン系、化合物系、有機系の3種類に分類できます(図3.1)。歴史も有り、現在最も広く用いられているのはシリコン系です。最近、量産し始められたものは化合物系、現在最もホットなペロブスカイト系を含むものが有機系です。この他、ここでは記述しませんが、構造や動作原理による分類も可能です。

図3.1 材料による太陽電池の種類   出典:産総研HP  https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/types/groups2.html

主な太陽電池の種類について、簡単にまとめていきましょう。

 

3.1シリコン系

単結晶シリコン太陽電池
一番最初に考案された太陽電池です。高性能で変換効率が高いのが特徴です。単結晶シリコン太陽電池は、1954年にUSベル研究所のシャピン(Daryl Chapin)、フーラー(Calvin Souther Fuller)、ピアソン(Gerald Pearson)によりpn接合型シリコン太陽電池として開発されました。

多結晶シリコン太陽電池
多結晶シリコン太陽電池は、現在最も広く使用されている太陽電池です。単結晶シリコン太陽電池と同様に、pn接合型です。ただ原材料は単結晶シリコンでは無くて多結晶シリコンを使用します。単結晶シリコン太陽電池と同等の耐久性・信頼性が得られます。
多結晶シリコン太陽電池の原材料となる多結晶シリコンは、単結晶シリコンの断片を溶解し鋳型内で冷却するキャスト法を用いて製造されます。このキャスト法で作られる多結晶シリコンのインゴットは、結晶成長工程が必要な単結晶シリコンのインゴットと比較して製造コストを安価に抑えることができます。また、単結晶シリコンインゴットの端部などを原料として、再利用できることから原料コストも安く抑えることが可能です。
一方短所として、多原材料の不純物や構造欠陥の影響で単結晶シリコン太陽電池よりも変換効率が劣ることです。

 

リボンシリコン太陽電池
リボンシリコンは、多結晶シリコンの一種です。溶融シリコンから直接、平らな薄膜を引き出すことにより製造されます。インゴットから切断する必要がありませんので、シリコンの廃棄物が大幅に削減され、多結晶シリコンより安価に製造できます。ただ、効率も低くなります。

球状シリコン太陽電池
直径1mm程度の球状の多結晶シリコンを、多数並べて構成する太陽電池です。1980年代にアメリカの企業により、新しい低コスト太陽電池方式として検討されました。太陽電池モジュールの3分の1を占めるシリコンの使用料を大幅に低減される方法です。意匠性に富んだモジュールが造れる特徴があります。

薄膜シリコン太陽電池
膜厚が数μm以下の薄膜状のシリコンの層を利用した太陽電池をいいます。アモルファスシリコン、または微結晶シリコンが用いられます。シリコンの使用量が他のシリコン系太陽電池と比較して少ないため、原料の資源的な制約が無く、大型の基板や柔軟性を持つ基板への発電層を一括で製作できるので、大量生産が可能で低コスト化が図られます。また、薄膜構造で集積型太陽電池を製作することが、意匠性に考慮した建材一体型太陽電池の製作が可能です。
一方、発電効率は結晶シリコン太陽電池と比較して低い欠点があります。

アモルファスシリコン
アモルファスとは、原子が不規則に配列された結晶構造を持たない状態をいいます。アモルファスシリコンは、結晶質シリコンと比較して熱力的に不安定な状態ですが、未結合手に水素を結合させて(水素化)安定化させています。これを水素化アモルファスシリコンともいいます。
結晶系シリコンがp型半導体とn型半導体との接合したpn接合型半導体なのに比較して、アモルファスシリコンはp型半導体とn型半導体との間に、真性半導体であるI層(Intrinsic Layer)を挟み接合したpin接合型半導体になります。
長所は、光を吸収する範囲(光吸収端)は結晶シリコンよりも短波長で可視域に位置しており、紫~赤色までの可視光を吸収します。また、結晶系シリコン太陽電池よりも温度上昇時の出力低下が小さい特徴があります。その他、大面積に一括製膜(プラズマ援用化学気相堆積法)が可能で製造コストが安価なこと、薄膜なので加工性に優れ、自由に曲げることが可能なので、様々な形状の太陽電池を製作できます。
一方短所としては、初期に強い光を照射することで内部の水素結合が切断されることにより出力低下を起こします。この初期劣化は10%程度低下してから安定化します。また、変換効率が低いのは水素などの不純物がシリコン原子の間に不規則に混入することにより、原子間距離が不規則になっているためで構造的に改善が困難です。

微結晶シリコン
微結晶シリコンもアモルファスシリコンと同様、主としてシリコンと水素原子とから構成されます。非常に微細なシリコン結晶のまわりにアモルファスシリコン層が囲む複合的な構造をもちます。
光学的特性は、結晶シリコンとほぼ同じで、可視域~近赤外域で発電できる太陽電池材料です。アモルファスシリコンと同様、プラズマ援用化学気相堆積法でメートルサイズの大面積に一括製膜できます。また、微結晶シリコンは、アモルファスシリコンのように光照射によって性能が劣化することはほとんどありません。

ヘテロ接合(HIT)太陽電池
ヘテロ接合とは、物性の異なる材料同士の接合をいいます。ヘテロ接合太陽電池は、n型単結晶シリコンの両面にアモルファスシリコン半導体が形成された構造です。一番最初に製品化したのは三洋電機で、現在はパナソニックが事業を継承しています。なお、HITとは、”Heterojunction with Intrinsic Thin-layer” の頭文字を取ったものです。
ヘテロ接合型太陽電池の長所は、一般的な多結晶シリコン型太陽電池の電力変換効率が14%程度なのに対して、ヘテロ接合太陽電池の場合は、効率が良い場合は19%程度と変換効率が高いこと。裏表両面で発電できること、製造時のエネルギー使用量が結晶型シリコンと比較して少ないこと、高温時でも出力低下が少ない点などがあります。
一方短所は、n型単結晶シリコンの基板の両面に、i型アモルファスシリコン層、さらに外側にp型及びn型アモルファスシリコン層を形成する製造工程が複雑になるので、製造コストが高くなってしまいます。

 

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3.2化合物系

III-V族多接合型太陽電池(GaAs等)
代表的なものは、GaAs太陽電池で変換効率は最大で29.1%であり、短接合太陽電池としては最も高い変換効率です。さらに変換効率を上昇させるために多接合化が考えられています。多接合太陽電池は、種類の異なる半導体をバンドギャップの⼤きい順に直列に接続することにより、太陽光スペクトルを広範囲に利⽤し,⾼い変換効率を得る太陽電池です。代表的なものに、InGaP/GaAs/Geを材料とした3接合太陽電池です。上層のInGaP(インジウムガリウムリン;1.89 eV)が短波⻑域(700nm以下)を吸収し、中層で基板となるGaAs(ガリウムひ素;1.42 eV)は中波⻑(600~900nm)、下層がGe(ゲルマニウム;0.67 eV)で⻑波⻑域(900nm以上)を吸収することで⾼効率を実現します。集光すると最大の問題点は、製造コストが非常に高い問題があります。

CIGS系、CIS系太陽電
薄くて性能も良い、最近実用化がはじまったばかりの新顔の太陽電池です。省資源でなおかつ多結晶シリコンに近い性能が期待できます。光吸収層のp型半導体層にはいくつかの種類があり、CIGS系、CIS系、カルコバイライト系などがあります(代表的な材料について、図3.2に示します。)。

図3.2 CIGS系、CIS系などの光吸収層の種類   参考:産総研HP  https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/types/CIGS.html

ここでは、代表的なものとして、CIGS系太陽電池について簡単に示しましょう。これはCu,In,Ga,Se(銅、インジウム、ガリウム、セレン)の4つの元素の頭文字をとったものです。CIGS系太陽電池はシリコンの代わりに、この4つの元素の化合物です。化学式はCu(In,Ga)Se2です。これらの元素を混合させた化合物は、シリコン同様の半導体になります。しかも結晶質シリコンに比べて光を吸収しやすく、太陽電池そのものの厚みは2~4μm程度の薄膜です。
この電池の特徴は、用いる材料や製造法が選べることです。例えば、印刷法(安価)、同時蒸着法(高性能)や、セレン化(硫化)法(中間的な性能と価格)などがあります。材料や製造法をうまく使い分けることで、低価格品から高性能品まで、幅広い対応が期待されます。また、薄膜状ですので基板材料によりフレキシブルにもできるので、用途に合わせていろいろな形状やア営農の製品を製作で来ると考えられます。宇宙空間における放射線に強いという性質もありますので、人工衛星や探査機などへの応用も期待され、開発が進められています。

CdTe太陽電池
CdTe(テルル化カドミウム)の半導体皮膜を用いた薄膜太陽電池です。毒物であるカドミウムを使用するため、日本ではパナソニックが開発まで完了しましたが、日本国内では結局製造はされていません。海外では、USのファーストソーラー社が変換効率16%程度のモジュールを販売しています。
長所としては、高温時の出力低下が少ない。薄膜化により省資源化が図れる。成膜工程が比較的低温かつ短時間のため製造コストが安価。エネルギーペイバックタイム(EPT:Energy pay back time)が短い(1年未満)。などがあげられます。
一方短所は、原材料に毒性の高いカドミウムを使用していること。レアメタルのテルルを使用していることなどがあります。現在カドミウムについては、使用済みモジュールのリサイクルが製造メーカにより行われています。また、テルについては埋蔵量が白金と同程度であり、将来的にはモジュールのコスト上昇を懸念する声もあります。

 

3.3有機系

色素増感太陽電池
色素増感太陽電池は、1991年にスイスのローザンヌ工科大学のグレッツェル教授により、多孔質酸化チタンにルテニウム金属錯体色素を吸着させて、ヨウ素系電解液で構成されます。色素の種類を変えるといろいろな色の太陽電池の製作が可能です。材料が安価なため製造コストが抑えることができます。短所としては、発電効率が低い(研究室レベルで約10%)。劣化が早いため耐久性に問題があるなどです。

 

ペロブスカイト太陽電池
2009年に桐蔭横浜大学の宮坂教授により、ハロゲン化鉛系ペロブスカイトを利用した太陽電池です。2009年に用いられたものはCH3NH3PbI3で変換効率は3.8%でした。新たな材料の開発などにより、研究レベルでは多結晶シリコンなみの変換効率が確認されています。低温で製造でき製造コストの低減が期待され、また薄膜で柔軟でカラフルなものも製造可能なため、将来の低コスト太陽電池として有望視されています。初期の発明は日本ではじまりましたが、課題となる耐久性の向上や量産技術の開発が世界中で開発が進み、特に中国は量産設備の立上げなど指導権を取ろうとしています。
ペロブスカイトは、170年以上前にロシアのウラル山脈で発見された立方体やダイヤモンドのような結晶構造をもつ鉱物をいいます。主に、地球のマントルに多く存在して、地表近くの鉱床にも存在しています。ペロブスカイトという名前は、ロシアの鉱物学者レフ・ペロフスキーにちなんで名づけられました。

有機半導体太陽電池(有機薄膜太陽電池)
通常の太陽電池はp型半導体層とn型半導体層の二層に分かれていますが、有機半導体太陽電池は、n型とp型の両方の半導体を混合させて塗布して、電極を取り付けることにより電池になります。もちろん、通常通りにp型とn型の2層構造のものも製造できます。
近年開発が始まったばかりですが、製造が簡単な上、様々な色や形が実現でき、半透明のものやフレキシブルなものも製造が可能です。変換効率はまだ3~5%程度で改善の余地が大きい、耐久性の問題などが課題になっていますが、屋内用の用途から実用化が始まっています。

 

3.4 各種の太陽電池の研究所レベルでの最高効率

Wikipediaに示されている、National Renewable Energy Laboratoryが製作した、各種太陽電池の研究所レベルの最高効率の図表を引用します(図3)。

図3.3 各種太陽電池の研究所レベルの最高効率   出典:Wikipedia

原出典:Reported timeline of research solar cell energy conversion efficiencies since 1976 (National Renewable Energy Laboratory)

 

 

 

 

主要参考文献
産総研HP:太陽光発電技術_太陽電池の分類  https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/types/groups2.html
Solar cell   Wikipedia    DL:2023/06/03
Soka-cell efficiency   Wikipedia    DL:2023/06/03

 

参考文献
図3.1 材料による太陽電池の種類   出典:産総研HP  https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/types/groups2.html
図3.2 CIGS系、CIS系などの光吸収層の種類   参考:産総研HP  https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/types/CIGS.html
図3.3 各種太陽電池の研究所レベルの最高効率   出典:Wikipedia  原出典:Reported timeline of research solar cell energy conversion efficiencies since 1976 (National Renewable Energy Laboratory)

 

ORG:2023/06/05