3. 圧力測定の作動原理と対応する圧力計、圧力センサ
3. 圧力測定の作動原理と対応する圧力計、圧力センサ
(Working principle of pressure measurement and corresponding pressure gauges, pressure sensors)
スポンサーリンク
アフィリエイト広告を利用しています。
Contents
1. はじめに
圧力の程度を計測する場合、印加される圧力によって発生する 力、変位(変形)や、ひずみを利用します。
また、この力、変位や、ひずみを、機械的機構によって処理し、表示することにより定量化する方法と、電気的機構によって処理、定量化する方法とがあります。主な圧力計、圧力センサの分類を図1に示します。
以下に、これらの分類に従って、圧力計測方法の特徴を記述します。
図1圧力計測の種類 出典:参考;圧力計測の種類と特徴(2) サンサイトHP
2. 機械式圧力計
2.1 アネロイド型圧力計
アネロイド型圧力計は、ブルドン管、ベローズ、ダイヤフラムなどの弾性素子を受圧部にもつ圧力計です。弾性素子は、圧力を受けると変形する性質を利用し、その変位を拡大機構によって指針の動きに変換することで圧力を表示します。アネロイド形圧力計は、液柱形圧力計と比較して、小型軽量で、取り扱いが容易 であるため、産業分野で広く使用されています。
2.1.1 ブルドン管式圧力計
(1) 概要
ブルドン管圧力計は、アネロイド形圧力計の一種で、ブルドン管を弾性素子として使用します。ブルドン管は、フランスの技術者ユージン・ブルドンによって 1849 年に発明されました。 ブルドン管圧力計は、構造がシンプルで丈夫、しかも安価ですので、現在でも最も広く使用されている圧力計の一つです。
(2) 構造と原理
ブルドン管は、断面が扁平な円形の金属管をコイル状に成形 したものです。ブルドン管の一端は圧力計本体に固定され、もう一端(管先)は自由端となっています。 圧力がブルドン管内部に加えられると、管先がわずかに移動し、この移動を内部拡大機構(内機) を介して指針に伝達することで圧力を表示します(図 2)。
ブルドン管は、圧力と管先の変位が比例するというフックの法則 が成立する範囲(弾性限度)内で使用されます。 弾性限度を超えると、ブルドン管が永久変形を起こし、圧力計に狂いが生じます。
図2ブルドン管圧力計の構造 出典: JIS B7505-2:2020
(3) 種類
ブルドン管圧力計は、ブルドン管の形状、材質、測定圧力範囲などによって様々な種類があります(図 3)。
1. 巻き形状による分類
・ C形ブルドン管: 最も一般的な形状で、生産性に優れています。弾性変位は大きくないため、主に低圧・中圧用に使用されます。
・ スパイラル形ブルドン管: C形の巻き数を二次元的に増やすらせん状にすることで大きな弾性変位を得ることができ、精密な計測や高圧用に使用されます。
・ ヘリカル形ブルドン管: スパイラル形とは異なり円柱状(ばね様)に巻くことで巻き数を増やし、大きな弾性変位を得られる形状です。高圧・超高圧(例:500MPa)用に使用されます。
・ ねじれ形ブルドン形: ブルドン管を、ねじってらせん状に成形して、圧力を受けたときに戻ることで大きな変位を得るようにした圧力計です。
図3ブルドン管の形状 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
2. 断面形状による分類
・ 平円形: 板材時代には一般的な断面形状でしたが、管材の登場により、長円形が主流となりました。
・ 長円形: 管材を用いることで実現可能になった断面形状で、ブルドン管の剛性を高める効果があります。低圧用から高圧用まで幅広く使用されています。
・ その他、楕円形、D 形、円形に近い形状など、いろいろな形状が考案されており、特殊な用途に使用されます。
図4 代表的なブルドン管の断面 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
3. 材質による分類
・ 低圧用: 黄銅、リン青銅や、アルミブラスなどが使用されます。
・ 中圧用: 主として、ステンレス鋼管が使用されます。ちなみに、ステンレス鋼管(シームレス管)は1950年代に誕生しました。ステンレス鋼管の登場により、それまでは高圧用削り出しブルドン管や特殊材料として対応した、10MPaから70MPaの範囲に対応できるようになりました。
• 高圧用: ステンレス鋼、ニッケル合金、モリブデン鋼(~ 500MPa)などが使用されます。
(3) 製造技術
ブルドン管の製造は、圧力計メーカーの最高機密とされています。 ブルドン管の製造工程は、圧力、大きさ、材質などによって異なります。
1. 低圧用ブルドン管
低圧用ブルドン管は、主として 冷間成形で製造されます。
・ 板材からの製造: かつては、黄銅板などを芯金を入れてプレス加工した後、ろう付けを行うことにより製造していましたが、現在では、管材を用いる方法が主流となっています。
・ 管材からの製造: 精密な寸法に加工された素管を、ローラー成形機を用いて成形します。
2. 高圧用ブルドン管
高圧用ブルドン管は、熱間成形あるいは棒材からの削り出し によって製造されます。
・ 熱間成形: 鋼材を高温で加熱し、金型を用いて成形します。
・ 棒材からの削り出し: 鋼棒材を切削加工によってブルドン管の形状に仕上げます。
(4) ブルドン管圧力計の長所と短所
1. 長所
・ 構造がシンプルで堅牢
・ 安価
・ 広い測定範囲
・ 比較的高精度
2. 短所
・ 衝撃や振動に弱い
・ 温度変化の影響を受けやすい
・ ヒステリシス誤差が生じやすい
2.1.2ベローズ型圧力計
(1) 概要
ベローズ型圧力計は、ベローズを弾性素子として使用したアネロイド型圧力計です。ベローズは、ジャバラ(蛇腹)状の薄い金属管で、圧力を受けると伸縮します。ベローズ形圧力計は、微圧から低圧(5kPa ~ 2MPa)の測定に使用され、高感度 であることが特徴です。
(2) 構造と原理
ベローズの一端は圧力計本体に固定され、もう一端は自由端となっています。 圧力がベローズ内部に加えられると、ベローズが伸縮し、その変位を リンク機構 や 電気的なセンサ を用いて検出します。 ベローズの材質や形状によって、測定可能な圧力範囲や精度が異なります。
また、一般的には適切な変位を取り出すためにばねと併用して使用されます。
(3) 種類
ベローズ形圧力計は、ベローズの材質、形状、測定圧力範囲などによって様々な種類があります。
1. 材質による分類
・ リン青銅: 一般的なベローズの材質
・ ステンレス鋼: 耐食性が高いベローズの材質
・ PTFE: 耐薬品性を必要な用途に使用されます。
2. 形状による分類(図 5)
・ 成形ベローズ: 板材を絞ってパイプ状に成形し、油圧成形によってベローズ形状に加工します。
・ 溶接ベローズ: 薄い板材を同心円状に溶接してベローズ形状に加工したものです。成形ベローズよりも変位特性に優れていますが、コストが高いという欠点があります。
図5 ベローズの形状の分類 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
(4) ベローズ形圧力計の長所と短所
1. 長所
・ 微圧から低圧の測定に適する。
・ 高感度
・ 比較的高精度
・ 差圧測定が容易
2. 短所
• 高圧の測定には適していない。
• 適用圧力範囲が狭い
• 衝撃や振動に弱い。
• 温度変化の影響を受けやすい。温度補正が必要です。
2.1.3ダイヤフラム型圧力計
(1) 概要
ダイヤフラム型圧力計は、ダイアフラムを弾性素子として使用したアネロイド型圧力計です(図 6)。ダイヤフラムは、薄くて柔軟な円板で、圧力を受けると変形します。ダイヤフラム型圧力計は、低圧の測定に適しており、特に 腐食性流体や粘性流体の測定に用いられます。
図6ダイヤフラム型圧力計の構造 出典:Technical document from Onyx Valve Company USA_HP
(2) 構造と原理
ダイヤフラムは、一般的に周辺部を固定 し、中央部に圧力を加えます。圧力によってダイヤフラムが変形し、その変位を リンク機構や電気的なセンサを用いて検出します。 ダイヤフラムの材質や形状によって、測定可能な圧力範囲や精度が異なります。
(3) 種類
ダイヤフラム型圧力計は、ダイヤフラムの材質、形状、測定圧力範囲などによっていろいろな種類があります(図 7)。
1. 材質による分類
・ 非金属ダイアフラム: ゴム、合成樹脂などが使用されます。耐食性に優れており、低圧の測定に適しています。
・ 金属ダイアフラム: ステンレス鋼、リン青銅などが使用されます。耐圧性が高く、高圧の測定にも使用されます。
図7ダイヤフラムの種類 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
2. 形状による分類
・ フラットダイヤフラム: 平板形状のダイヤフラムです。
・ 波形ダイヤフラム: 波状に成形されたダイヤフラムです。強度が高く、高圧の測定に適しています。
(4) ダイヤフラム圧力計の長所と短所
1. 長所
・ 低圧の測定に適している。
・ 腐食性流体や粘性流体の測定に適している。
・ 絶対圧、ゲージ圧、および差圧の何れも測定可能である。
・ 小型軽量である
2. 短所
・ 測定範囲が狭い。
・ 精度が低い。
・ 温度変化の影響を受けやすい。
・ 高圧測定に使用すると、ダイヤフラムが損傷する。
2.2 重錘型(じゅうすいがた)圧力計(Deadweight tester)
重錘型圧力計は、測定圧力をピストン・シリンダ機構によって力に変換し、この力を重錘に働く重力と釣り合わせて測定する圧力計です。主に、ブルドン管圧力計、圧力センサなどの校正に用いられます。
基本構成要素としては、ピストン・シリンダ部と重錘(群)を持ち、通常は配管系や加圧ポンプなどの圧力発生部が付属しています(図 8)。
重錘型圧力計は、使用される圧力媒体によって液体式と気体式に大別されます。 液体式は、作動油などを用い、高圧から超高圧までの測定に対応できます。 一方、気体式は、窒素ガスなどを用い、低圧の高精度測定に適しています。
図 8重錘型圧力計の構造 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
(1) 測定原理
圧力は「単位面積当たりの力」と定義されます。重錘型圧力計では、ピストン・シリンダの有効面積を単位面積とし、重錘の質量に作用する重力加速度によって生じる力を力として、圧力を規定します。
\( P = \displaystyle\frac{ m g }{ A } \)
ここで
\( P \): 測定圧力(MPa)
\( m \): 重錘質量(kg)
\( g \): 重力加速度(m/s2)
\( A \): ピストン・シリンダの有効面積(m2)
測定圧力 (P) = 重錘の質量 (m) * 重力加速度 (g) / ピストン・シリンダの有効面積 (A)
(2) 特徴
重錘型圧力計は、高い精度と安定性に優れています。圧力標準器として他の圧力計の校正に広く用いられています。構造が比較的単純であるため、信頼性が高いという点も特徴です。
(3) 種類
1. 圧力媒体による分類: 液体式と気体式に大別されます。
・ 液体式は作動油などを圧力媒体として使用し、2〜700MPa までの広い測定範囲に対応します。
・ 気体式は窒素ガスなどを圧力媒体として使用し、低圧の高精度測定に適しています。気体式重錘型圧力計は国家標準圧力計として採用され、気象庁では気圧計の基準圧力計として使用されます。
2. ピストン・シリンダ部の構造形式による分類: 単純形シリンダ、内包形シリンダ、すきま制御形シリンダがあります(図 9)。
・ 単純形シリンダ: 一般的な低圧・中圧用の重錘型圧力計は、この形式のシリンダを用います。
・ 内包形シリンダ: 測定圧力自体を利用してシリンダを締め付ける構造により液漏れを防ぐ構造で、実用的な高圧用重錘形圧力計に広く利用されています。
・ すきま制御形シリンダ: 独立した圧力源を用いてピストン・シリンダ間のすきまを制御する構造で、国家標準などの高精度・高圧用重錘型圧力計に採用されています。
図9ピストン・シリンダ部の構造 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
3. 重錘の負荷方式による分類: 積載式、調心積載式、懸垂式があります(図 10)。
・ 積載式: 最も簡便な方法で、重錘をピストン上に直接積み重ねます。重錘を積み重ねるに従い重心位置が高くなります。
・ 調心積載式: 帽子形重錘を用いることで、ピストンに近い位置に重心をもってくる方法で、動的な安定性に優れます。
・ 懸垂式: 多数の重錘を負荷する高圧用に用いられ、重心の位置が低く、静的な安定性に優れます。
図10重錘型圧力計の重錘積載構造 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
(4) 重錘型圧力計の歴史
重錘型圧力計は、1840年にドイツのシュッツェル(Schätzel)がロシア向けに製作したのが最初とされています。その後、19 世紀後半にはイギリスで特許取得が相次ぎました。
(5) 用途
重錘型圧力計は、その高い精度と安定性から、以下のような用途に用いられています。
・ 圧力標準器: 他の圧力計の校正に用いる基準となる圧力計として、国家標準機関や校正機関などで使用されています。
・ 精密測定: 研究開発や品質管理など、高い精度が求められる圧力測定に使用されます。
・ 校正: 一般の圧力計や圧力センサの校正に使用されます。
(6) 使用上の注意点
重錘形圧力計を使用する際には、以下の点に注意する必要があります。
・ 機種と重錘の適合性: 重錘は機種ごとに定められたピストン面積に対応した重量を持つため、使用する重錘が圧力計に適合しているかを確認する必要があります。
・ 取付方向: 重力加速度を利用するため、ピストンが鉛直方向に位置するように設置する必要があります。
・ 重力加速度の影響: 重力加速度は場所によってわずかに異なるため、高精度な測定を行う場合は、その影響を考慮する必要があります。
・ ピストンの回転: ピストンとシリンダ間の摩擦を軽減するために、重錘を回転させる必要があります。
2.3 液柱型圧力計
液柱型圧力計は、最も古い歴史を持つ圧力計の一つであり、イタリアの物理学者エヴァンジェリスタ・トリチェリ(Evangelista Torricelli)によって発明された水銀気圧計がその起源です。液柱型圧力計は、液体の重さによって生じる圧力を利用して圧力を測定するという単純な原理に基づいています。この圧力計は構造が単純であるため、信頼性が高いという利点があります。液柱形圧力計は、低圧の測定に適しており、特に基準圧力計として校正などに用いられます。
1. 原理
液柱型圧力計は、一端が閉じたガラス管に水銀などの液体を充満させて、もう一端を測定したい圧力源に接続することで動作します。圧力源からの圧力によって液柱が押し上げられ、その高さを読み取ることで圧力値を決定します。
液柱の高さは、測定圧力と液体の密度、重力加速度に比例します。
\( P = \rho g h \)
ここで
\( P \)P: 測定圧力(MPa)
\( \rho \)ρ: 液体の密度(kg/m3)
\( g \): 重力加速度(m/s2)
\( h \): 液柱の高さ(m)
測定圧力 (P) = 液体の密度 (ρ) * 重力加速度 (g) * 液柱の高さ (h)
2. 液柱型圧力計の種類
液柱型圧力計には、様々な種類がありますが、代表的なものとしては以下の3つが挙げられます(図 11)。
・ 単管式液柱型圧力計: 一つの管の液柱の高さだけを測定する単純な構造の圧力計です。hを測るだけで測定が容易である一方、「管下がり」と呼ばれる現象が生じるため、圧力測定の基点が変化してしまいます。
「管下がり」とは、液槽内の液面が圧力を受けた際に下降することで、圧力測定の基点が変化してしまうので、縮目盛りと呼ばれる初めの起点より短い目盛にする必要があります。
・ U字管式液柱型圧力計: U字型のガラス管を用いた圧力計です。「管下がり」の影響を受けないので、単管式と比較して高精度な測定が可能です。
・ 傾斜管式液柱型圧力計: 測定管を傾斜させることで、微小な圧力変化をより大きな液柱の高さの変化として読み取ることができる圧力計です。
図11 液柱型圧力計の種類 出典:Marks‘ Standard Handbook For Mechanical Engineers-10Th ed.
(3) 液柱型圧力計の長所と短所
1. 長所
・ 構造が単純で、動作原理が理解しやすい。
・ 高信頼性
・ 校正が容易
・ 比較的安価
2. 短所
・ 測定できる圧力範囲が限られる(一般的に、低圧用途)。
・ 液体の種類によって測定可能な圧力範囲が異なる。
・ 衝撃や振動に弱い。
・ 取り扱いが難しい(水銀など有害な液体を使用する場合がある)。
(4) 液柱型圧力計の用途
液柱型圧力計は、以下のような用途に用いられています。
・ 基準圧力計: 他の圧力計の校正に用いる基準となる圧力計として、高精度なものが用いられます。
・ 実験・研究: 物理実験や化学実験など、正確な圧力測定が必要な場合に用いられます。
・ 産業分野: 圧力計の歴史においては、産業用機械に液柱型圧力計も用いられていましたが、現在ではほとんどブルドン管圧力計やひずみゲージ式圧力センサなどに置き換わっています。
(5) 液柱形圧力計を使用する際の注意点
液柱形圧力計を使用する際には、以下の点に注意する必要があります。
・ 視差: 液柱の高さを読み取る際には、視差が生じないように、液面を正面から水平に視定する必要があります。また、メニスカスにも注意が必要です。
・ 液体の温度: 液体の密度は温度によって変化するため、正確な測定を行うためには、液体の温度を考慮する必要があります。
・ 液体の蒸気圧: 液体の種類によっては、蒸気圧が高いものがあり、測定圧力に影響を与える可能性があります。
・ 液体の安全性: 水銀など有害な液体を使用する場合は、適切な安全・環境対策を講じる必要があります。
3. 電気式圧力センサ
電気式圧力センサは、圧力によって発生する物理量を電気信号に変換するセンサです。機械式圧力計と比較して、出力信号を容易にデジタル処理できるため、コンピュータ制御システムやデータロギングに適しており、コンピュータシステムとの連携が容易です。
近年、電子化、自動化 が進むにつれ、電気式圧力センサーの需要は増加しています。
3.1ひずみゲージ式圧力センサ
ひずみゲージ式圧力センサは、金属の抵抗値がひずみによって変化する現象を利用した圧力センサです。金属ダイヤフラムなどの弾性体の感圧素子にひずみゲージを貼り付けて、圧力による弾性体の変形量をひずみゲージの抵抗値の変化として検出します。
(1) 構造と原理
一般的に、金属ダイアフラムなどの弾性体にひずみゲージを貼り付け、圧力を印加すると、ダイアフラムが変形し、ひずみゲージの抵抗値が変化します。この抵抗値変化を ホイートストンブリッジ回路 などで検出し、電圧信号に変換します。
(2) 種類
・ 金属箔ひずみゲージ: 従来から使用されている一般的なひずみゲージです。金属箔を樹脂フィルムに接着剤で固定した構造をしています。
・ 半導体ひずみゲージ: シリコンなどの半導体材料を用いたひずみゲージです。金属箔ひずみゲージに比べて感度が高く、小型化が可能という利点があります。
(3) ひずみゲージ式圧力センサの長所と短所
1. 長所
・ 精度が高い。
・ 安定性に優れる。
・ 測定範囲が広い。
2. 短所
・ 温度の影響を受けやすい。
・ 比較的高価である。
3.2ピエゾ抵抗式圧力センサ
ピエゾ抵抗式圧力センサは、半導体(シリコンなど)の圧力によって電気抵抗率が変化するピエゾ抵抗効果を利用して圧力を測定します。 シリコンダイヤフラム上に形成されたピエゾ抵抗素子が、圧力によるダイヤフラムの変形に伴い抵抗値を変化させることで、圧力に対応した電気信号を出力します。 高感度、高精度、小型軽量であるため、近年広く普及しています。
(1) 構造と原理
シリコンなどの半導体基板上に、拡散抵抗やイオン注入によって抵抗体を作製し、これをダイアフラム上に形成します。圧力を加えると、ダイアフラムが変形し、抵抗体の抵抗値が変化します。この抵抗値変化をホイートストンブリッジ回路などで検出し、電圧信号に変換します。
(2) ピエゾ抵抗式圧力センサの長所と短所
1. 長所
・ 小型化が可能。
・ 感度が高い。
・ 低コスト
2. 短所
・ 温度の影響を受けやすい。
・ 直線性が悪い。
3.3静電容量式圧力センサ
静電容量式圧力センサは、圧力による電極間の距離の変化によって、コンデンサの静電容量が変化することを利用して圧力を測定します。
(1) 構造と原理
一般的に、固定電極と可動電極とから構成され、圧力によって可動電極が変位することで、静電容量が変化します。この静電容量の変化を電気回路で検出し、電圧信号に変換します。
(2) 種類
・ 金属ダイアフラム型: 金属ダイアフラムを可動電極として使用します。
・ セラミック型: セラミックを固定電極と可動電極の間に挟んだ構造です。導電性の圧力媒体の計測も可能です。
(3) ピエゾ抵抗式圧力センサの長所と短所
1. 長所
・ 高感度
・ 温度特性が良い。
・ 耐久性が高い。
2. 短所
・ 出力インピーダンスが高い。
・ 比較的高価
3.4振動式圧力センサ
振動式圧力センサは、圧力の変化を機械的な振動の変化として検出するセンサであり、主に工業分野や医療機器、自動車など様々な用途で利用されています。
(1) 構造と原理
振動式圧力センサは、基本的に振動素子、支持構造、そして信号処理回路から構成されます。振動素子としては、主にダイヤフラムやはり(梁)、または共振器が用いられます。圧力が加わると、振動素子の形状や共振周波数が変化し、この変化が圧力の変動として検出されます。
例えば、圧力が上昇すると振動素子が引き伸ばされたり圧縮されたりし、その結果として振動の周波数が変わります。この周波数変化を電気信号に変換し、圧力として出力します。
(2) 種類
振動式圧力センサには主に以下の種類があります:
・ 共振型圧力センサ: 振動素子が一定の共振周波数を持ち、圧力変化によってこの周波数が変動します。
・ 膜型圧力センサ: 薄い膜が圧力によって変形し、その変形量を振動として検出します。
・ 梁型圧力センサ: 細長い梁が圧力により曲がり、その曲がり具合が振動に影響を与えます。
(3) 振動圧力センサの長所と短所
1. 長所
・ 高精度: 微小な圧力変化も高精度で検出可能です。
・ 高速応答: 振動による検出方式のため、圧力変化に対して迅速に反応します。
・ 耐環境性: 温度や湿度の変化に強く、厳しい環境下でも安定した性能を発揮します。
・ 小型化: 微細加工技術の進展により、小型で軽量な設計が可能です。
2. 短所
・ コスト: 高精度な製造には高度な技術が必要なため、コストが高くなる傾向があります。
・ 複雑な信号処理: 振動信号の解析には高度な信号処理技術が必要であり、システム全体が複雑になります。
・ 振動の影響: 外部からの機械的振動やノイズが測定に影響を与える可能性があり、適切なシールドやフィルタリングが必要です。
・ 温度依存性: 一部の振動素子は温度変化により特性が変わるため、温度補償が必要になる場合があります。
3.5 光ファイバー式圧力センサ
光ファイバー式圧力センサは、光ファイバを用いて圧力を測定するセンサです。
(1) 構造と原理
光ファイバー式圧力センサは、主に光ファイバー、光源、検出器、そして圧力変換部から構成されます。光ファイバーは、圧力変化に応じて光の伝播特性(例えば、干渉、反射、屈折率など)が変化する部分と、これを検出する部分に分かれます。圧力が加わると、センサ内部の圧力変換部が物理的な変形を引き起こし、それが光ファイバー内の光信号に影響を与えます。この変化した光信号を検出器で受け取り、圧力として解析・表示します。例えば、干渉型センサでは、圧力変化によって光の干渉パターンが変わり、その変化量から圧力を測定します。
(2)種類
光ファイバー式圧力センサには以下の主な種類があります:
・ 干渉型センサ: 光の干渉現象を利用して圧力変化を検出します。マイケルソン干渉計やフーリエ変換干渉計が代表的です。
・ ブリッグス型センサ: 光の反射や屈折を利用し、圧力による光路長の変化を測定します。
・ ファイバーブレードセンサ: ファイバー自体が圧力によって曲がることで、光の反射や伝播に変化をもたらします。
・ 分散型センサ: 長距離にわたって複数箇所の圧力を同時に測定できるタイプで、例えばFBG(ファイバブラッググレーティング)を用いたものがあります。
(3) 振動圧力センサの長所と短所
1. 長所
・ 耐ノイズ性が高い。
・ 長距離伝送が可能。
・ 腐食に強い。
2. 短所
・ 比較的高価である。
・ 温度の影響を受けやすい。
3.6 圧力センサの選定
圧力センサを選定する際には、以下の点を考慮する必要があります。
・ 測定圧力範囲
・ 測定流体の種類
・ 精度
・ 温度範囲
・ 応答速度
・ 出力信号の種類
・ コスト
3.7 圧力センサの応用例
圧力センサは、出力を電気信号で取り出すことができるので、様々な分野で幅広く利用されています。
・ 産業機械: 油圧・空圧制御、プロセス制御、流量計測
・ 自動車: エンジン制御、タイヤ空気圧監視
・ 医療機器: 血圧計、呼吸器
・ 環境計測: 気象観測、水位計測
参考文献
圧力計測の種類と特徴(1) 長野計器(株)取締役 長坂 宏 センサイトHP https://sensait.jp/14779/
圧力計測の種類と特徴(1) 長野計器(株)取締役 長坂 宏 センサイトHP https://sensait.jp/14780/
Pressure measurement_CHL207.pdf DAV University, India Text
Measurement & Instrumentation Principles Third edition Alan S Morris Butterworth-Heinemann 2001年
DOE FUNDAMENTALS HANDBOOK INSTRUMENTATION AND CONTROL Volume 1 of 2 U,S. Department of Energy
FUNDAMENTALS OF INDUSTRIAL INSTRUMENTATIONAND PROCESS CONTROL William C. Dunn McGraw-Hill 2005年
引用図表
図 1 圧力計測の種類 出典:参考;圧力計測の種類と特徴(2) サンサイトHP
図 2 ブルドン管圧力計の構造 出典: JIS B7505-2:2020
図 3 ブルドン管の形状 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
図 4 代表的なブルドン管の断面 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
図 5 ベローズの形状の分類 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
図 6ダイヤフラム型圧力計の構造 出典:Technical document from Onyx Valve Company USA_HP
図 7 ダイヤフラムの種類 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
図 8 重錘型圧力計の構造 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
図 9 ピストン・シリンダ部の構造 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物
図 10 重錘型圧力計の重錘積載構造 出典: 圧力計技術の発展の系統化調査 国立科学博物館
図 11 液柱型圧力計の種類 出典:Marks‘ Standard Handbook For Mechanical Engineers-10Th ed.
ORG:2024/10/08