5.1.1無負荷回路

5.1.1無負荷回路(unload circuit)

 

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1. 無負荷回路とは

無負荷回路とは、油圧システムが待機中、動力消費を減らし、損失により発生する熱が油圧システムの温度上昇を抑制し、油圧ポンプの寿命を延ばして、回路効率の向上を図るための回路です。

油動力は次式により求められます。

\( L = \displaystyle\frac{ p Q}{ 60 } \)

ここで、
\( L \):油動力(kW)
\( p \):圧力(MPa)
\( Q \):流量(L/min)

油動力は、圧力と流量との積に比例します。従って、油動力を低減するためには、圧力もしくは流量の何れかもしくは同時に小さくすることが必要です。

 

2. 代表的な無負荷回路

2.1バイパス回路

(1)方向制御弁を用いることにより、ポンプの吐出量を全量、タンクへバイパスさせる方法です(図5.1.1.1)。吐出圧力がタンク圧力になる、簡単な無負荷回路になります。

(2)パイロット作動形リリーフ弁のベントポートの圧力を、電磁切換弁で制御して、ポンプ吐出量を油タンクへバイパスさせる方法です(図5.1.1.2)。通常、安全側のために、電磁切換弁がOFFの状態で無負荷回路を構成させます。

(1)の方向切換弁によるバイパス回路と比較すると、ポンプ吐出量が大容量の場合、電磁弁が小形で良いので、コストを低減できます。

図 5.1.1.1 バイパス回路(方向切換弁による)   出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

図5.1.1.2 バイパス回路(パイロット作動形リリーフ弁による) 出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

 

2.2オープンセンタ回路(センタバイパス回路)

PT接続形切換弁が中立位置のときに、ポンプ吐出量を油タンクへバイパスさせる方法です(図5.1.1.3)。切換弁を電磁パイロット切換弁を使用する場合は、チェック弁などを用いて、電磁パイロット切換弁の最低パイロット圧力を確保するように回路を構成します(図5.1.1.3)。

図5.1.1.3オープンセンタ回路  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

2.3圧力補償形制御ポンプ回路

圧力補償機構付可変容量形ポンプを使用して、ポンプ吐出量を減少させる回路です(図5.1.1.4)。この際、システムは待機中であるが、吐出圧力はポンプ設定圧力まで上昇しているため、切換弁のリークによりシリンダの作動を考慮する必要があります。

図5.1.1.4圧力補償形制御ポンプ回路    出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

 

2.4 HI-LO(ダブルポンプ)回路

①低圧大容量ポンプと②高圧小容量ポンプとの、2つの油圧ポンプを使用して、回路効率を上昇させる回路です(図5.1.1.5)。回路内圧力が③アンロード弁の設定以下の場合は、ポンプ①②の合計吐出量が回路に供給されます。回路内圧力が③アンロード弁の設定圧力以上になると、①の低圧力大容量ポンプの吐出量が、③アンロード弁により油タンクにバイパスされて無負荷になり、②の高圧小容量ポンプの吐出量により回路内圧力を保持させます。

図5.1.1.5 HI-LO(ダブルポンプ)回路  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

 

2.5自圧式2圧2容量制御形ポンプによる回路

負荷が増大することにより、ポンプ吐出量がPL(低圧力)以上の設定圧力になると、QH(大流量)のときより斜板角度を小さくして、吐出量を減少させることにより、2.4項のHI-LO(2ポンプ)回路と同様な特性を持つ、可変容量形ポンプ制御方式です(図5.1.1.6)。

図5.1.1.6 自圧式2圧2容量制御形ポンプによる回路  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

 

2.6 アキュムレータ回路

(1)回路圧力が、PS圧力スイッチの設定値に到達すると、圧力スイッチと連動して電磁切換弁をOFFにすると、ポンプ吐出量分は油タンクにバイパスされる一方、回路圧力はアキュムレータによって保持されます(図5.1.1.7)。

(2)回路圧力が、アンロードリリーフ弁の設定値に到達すると、ポンプ吐出量分は油タンクにバイパスされる一方、回路圧力はアキュムレータによって保持されます(図5.1.1.8)。

アンロードリリーフ弁のオンロード圧力は、設定圧力との圧力比で決まり、差圧調整が出来ません。

図5.1.1.7アキュムレータ回路_圧力スイッチ  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

図5.1.1.8アキュムレータ回路_アンロードリリーフ弁  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

 

 

 

 

 

 

参考文献
実用油圧ポケットブック_2012年版 (一社)日本フルードパワー工業会
油圧教本 増補改訂版  塩崎義弘他  日刊工業新聞社

 

引用図表
図 5.1.1.1 バイパス回路(方向切換弁による)   出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.2 バイパス回路(パイロット作動形リリーフ弁による) 出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.3オープンセンタ回路  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.4圧力補償形制御ポンプ回路    出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.5 HI-LO(ダブルポンプ)回路  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.6 自圧式2圧2容量制御形ポンプによる回路  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.7アキュムレータ回路_圧力スイッチ  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版
図5.1.1.8アキュムレータ回路_アンロードリリーフ弁  出典:実用油圧ポケットブック_2012年版

 

ORG: 2023/11/17