PTS法

PTS法( predetermined time standards system )

 

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A: はじめに

1, PTS法とは

IEは、「仕事の科学」と言われています。仕事を科学的に解析し活用することは、極めて重要です。私たちが科学を重要視する理由は、

 ・論理的な考え方を重視する。
 ・分析方法が定量的である。
 ・再現性・確実性が高い。

などにあります。

 

時間研究の一つの手法になります。他の手法が、毎回同じような測定を繰り返すのに対して、PTS法は、人間が行う作業を基本動作(義動作レベル)まで分解して、その基本動作についてあらかじめ信頼できる標準時間を定めておき、それを組合わせることにより作業時間を見積もる方法になります。

 

これにより、立上げスピードの向上や、必要工数や人件費を中心とした費用見積もりの精度向上がはかれます。

PTSは、Predetermined Time Standardsの略で、事前に決められた時間の標準値を意味します。PTS法には、WF法、MTM法、MODAPTS法などがありますが、基本的には同じ考え⽅で分析を⾏います。

PTS法では、「あらゆる作業は、ある基本的な動作の組み合わせにより成り⽴っている」と考え方が根底にあります。どんな複雑な作業でも、細分化すると、基本動作が連続して行われているだけであり、それぞれの基本動作に時間設定を行うことにより、作業全体の時間も算出できるという考え⽅がベースとなっています。これは、テイラーの時間研究と、ギルブレスの動作分析の概念を組み合わせたものになります。

 

これは親コンテンツでも既述しましたが、現役時代、技術部に所属していた時期に、生産技術(製造部)から、新製品の量産組立セルの構築を依頼されました。それまでのキャリアの中で、一度も製造ラインの設計は一度の経験したことが無く、何のスキルもありませんでした。製品の形状が過去の生産品とは大きく異なり生産技術のプロパーが出来ないとのことで、お鉢が回ってきたのですが、その時、セル設計(クレーンの設計とかも含まれていました)だけでなく、1日の生産台数が決められており、要求タクトタイムの必達が要求されました。多くは言えませんが、サービス残業等、工数的に大きく無理をしました。タクトタイムという言葉も知らず、そこからいろいろ調べて、結局PTS法にたどり着きました。生産技術の人間も、PTS法をライン設計に適用したことはないとのことで、本当に頭の中で考えながら、自分でボルト締め作業やOリング組付け作業などの単位作業の時間を求めながら、行った記憶があります。このときは、2000ステップ以上(これは一つのタイプで、形状が異なるもう一つのタイプがあり、全部で5機種について、PTS法でタクトタイムを予測しました。)の新規の組立工程の時間見積もりをしたことがありますが、ほぼ5~10%程度の精度が得られ、PTS法に威力に感心した記憶があります。

ただし、今思えばPTS法というレベルではないです。管理人が所属していた会社(事業部)は、真の意味でのPTS法について、おそらく誰も理解していなかったと思います。管理人が作れと言われたセルは、今までのその事業部が経験した事の無い形状・形式なので、既存の組立ラインの実績を利用できませんでした。本当の手探りで、MODAPTS法よりもはるかに低レベルの時間分析手法で行いました。

(もっとも、そのラインを、顧客の幹部が監査に来た時に、「おもちゃを作るラインやな。」と言われたと、生産技術課長が、うれしそうに管理人に言ってきました。それに対して『自分たちで作れや。』と独り言を言ったのは内緒です。でもそのライン、2つのタイプの内、一つのタイプについては、管理人が辞めるまで、少なくとも25年は使い続けていましたよ。 なんや自慢かい。)

 

 

2. PTS法の長所と短所
2.1 PTS法の長所

(1)実際の生産活動が開始される以前に、生産方法・条件さえ決定すれば、必要とされる時間を算出できる、「設計型」のIE手法と言えます。
(2)細かく分析された動作内容や時間値が示されるので、良好な作業の設計や改善に役立ちます。

 

2.2 PTS法の短所

(1)PTS法が必要とする基本動作時間の精度を高めるためには、多大な時間と労力を必要とします。
(2)複雑な作業には適用が難しい。

 

B: PTS法の基礎

3. PTS法の考え方

PTS法については、以下の2つが考え方の基礎になります。

(1)人間の作業は、基本的な幾つかの最小動作の集積により構成されています。
(2)これらの基本動作のそれぞれについて、標準となる1単位当たりの時間をあらかじめ実績より規定しておけば、その後これらの最小動作のつながりがどのようになるかを調査して、決定することにより作業者の作業動作時間を決定できます。

 

人間の作業は、基本的な幾つかの最小動作のつながりにより構成されます。これらの動作は、大きく以下の3つのグループに分類されます。

(1)基本動作:人間の最も基本的な動作であり、繰り返し行われる動作。大きく分類すると手作業の基本動作、機械操作の基本動作になります。具体的には、
 ・手作業の基本動作:移動、把持、運搬、視認、ネジ締め、切断、穴あけなどの操作など
 ・機械操作の基本動作:スイッチ操作、ボタン操作、ダイヤル操作、レバー操作、フットペダルの操作など

(2)中間動作:基本動作を組み合わせて構成される動作。例えば、工具の操作、部品の組み立て、書類の作成などが、該当します。

(3)複合動作:複数の中間動作を組み合わせて構成される動作。例えば、製品の製造、サービスの提供、事務作業など、いろいろな作業が該当します。

PTS法では、これらの基本動作をさらに細かく分解して、最小限の動作単位まで分解します。この最小限の動作単位を「要素動作」と呼びます。PTS法では、要素動作ごとに標準となる1単位の時間値をあらかじめ決めておくと、人の作業は要素動作の組合せですので、人の作業動作時間は決定できます。

 

要素動作の時間値は、実験や調査に基づいて決定されます。また、要素動作の種類や条件(例えば、重量、距離、方向性など)によって、時間値が異なります。

 

4. PTS法の適用範囲

PTS法は、製造業、サービス業や、オフィス作業など、あらゆる業種の作業に適用可能な手法です。

具体的な応用例としては、以下のようなものが挙げられます。

・標準作業の設計

・作業改善

・生産計画

 

5. PTS法の種類

PTS法には、WF法、MTM法、MODAPTS法などの手法があります。これらについて少し詳しく記述します。

 

5.1 WF法(Work Factor法)

WF法は、1930年代に米国で開発された手法です。その特徴は、人間の動作の分類が細かいことにあります。

WF法では、動作時間に影響する要因を次の4つに分類されます。

(1)身体部位:

7つの身体部位に分類します。つまり、F(指)、H(手)、FS(前腕旋回)、A(腕)、T(胴)、L(脚)、FT(足)の7つの部位に着目します。どの身体部位を動かしたかにより、時間値が異なります。

 

(2)動作距離:

動作の始点と終点とを結ぶ直線距離を、動作距離と定義します。それぞれの身体部位のどの部分が測定箇所になるかと、動作距離範囲を表1 に示します。

図1 WF法動作分析の身体部位と動作距離  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

身体部位と動作距離とを合わせて基礎動作といいます。これは、対象物を扱わない状態で、単純に身体の各部位がどのぐらいの距離を移動したかを考えます。すなわち、この基礎動作の所要時間はもっとも短い値になります。

 

(3)取扱う重量・抵抗:

実際の対象物の重量および抵抗です。これにより、所要時間は異なります。

 

(4)動作の困難性:

動作の困難性は、a.:方向の調節(S)、b.:注意(P)、c.:方向の変更(U)、d.:一定の停止(D)の4つがあります。

a.:方向の調節(S): 作業者の意思により、意識的に対象物の方向を調節することです. たとえば,穴にプラグを入れるときなどに方向の調節が発生します。
b.:注意(P): 作業者が意識的に注意して、対象物などの破損を防ぐときなどに発生します。
c.:方向の変更(U): 障害物を避けて作業をするときに発生します。
d.:一定の停止(D): 作業者の意思により、意識的に動作を終わらせることです。例えば、何かものをつかむ動作の場合、ものをつかむ直前に、一定の動作の停止が発生します。

 

取扱う重量・抵抗と動作の困難性とは、ワークファクター(work factor)といいます。これは、基礎動作を遅らせる要因となります。

取扱う重量・抵抗については、取扱う重量によりワークファクターの数は、1個(W)、2個(WW)、・・・と異なります。動作の困難性に関しては、それぞれ(S,P,U,D)がそれぞれ1個のワークファクターとしてみなされます。同じワークファクターを2個使用してはいけないルールがあります。例えば、”SD”はOKですが、”SS”や”DD”は使用できません。

ワークファクターの数が多いほど、動作時間は多く掛かります。

 

WF法では、上述の基礎的な概念から、WF動作時間標準表を定めています。表2に、腕の基本動作に対するWF動作時間標準表を示します。

具体的なWFの表記に仕方は、身体部位、動作距離、ワークファクターの順番であらわします。

例えば、男性が重量500gの丸棒を取るために腕を350mm(35cm)伸ばす場合を考えます。この場合のWFの表記は”A35D”となります。これが意味するのは、動かした身体部位が腕(A)、動作距離は35cm(350mm)、さらに動作の最後に一定の停止を必要としますので、最後に”D”を付加します。これに対応する動作時間は、表2で、動作距離350mm(35cm)、ワークファクターは停止の”D”が1個ありますので、WF動作時間(WFU)は69WFUになります。1WFUは、0.0001分を意味します。

表2 腕の基本動作に対するWF動作時間標準表  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

丸棒の重さが1.0kgの場合は、重量のワークファクターが1個追加されますので、ワークファクターが2個で、WFの表記は”A35WD”となり、WF動作時間は90WFUとなります。

このような移動動作の場合、一つの身体部位ではなく、複数の身体部位が含まれることもあります。例えば、この例では指を動かして丸棒をつかむ動作もあります。この場合はそれぞれの部位での時間値を求めて、その中で最も時間値の大きい身体部位を、算定の対象とします。

このようにWF法による分析は、動作を詳細に解析するので、基本動作に対する標準時間を求める表だけではなく、より細かく、つかむ対象物による「つかみ表」や、対象物の置かれ方による「前置き表」などがあります。これは、対象物の状態によって、身体部位の動き方が複雑になるので、分析に時間を要するからです。

WF法は、動作を細かく分類することで、高い精度で標準時間を設定できることが特徴です。ただし、動作を細かく分類するため、分析に手間がかかるというデメリットもあります。

 

WF法では時間値の設定を、WF動作時間標準表を用いる点を除けば、時間研究・動作研究で行った手順と同様になります。具体的には、作業を要素作業に分類して、さらに、要素作業を動作要素に変換します。この動作要素の単位は、「サーブリッグ」と同様です。そして,この動作要素に対して、WF動作時間標準表から時間値をあてはめていきます。このように、WF法は、サーブリッグに時間値が設定されているものと考えることができます。

なお、WF法による標準時間の設定値は、正常ベースよりスピードが25%早い「やる気ベース」になります。一方、後述するMTM法は「正常ベース」の時間値になります。

 

5.2 MTM法(Methods-Time Measurement法)

MTM法は、1948年に米国で開発されたPTS法です。WF法が、何らかの作業に対して、身体部位のどこがどれぐらい移動したかを測定し、身体部位ごとに作成された動作時間標準表から、作業の時間値を設定する手法であるのに対して、MTM法は、人間の動作を基本動作(表3)に分割し、その動作ごとに動作時間標準表が作成されます。

MTM法の時間単位は、TMU(Time Measurement Unit) で表わし、1TMUは、0.00001時という単位になります。

また、WF法のところでも記述しましたが、MTM法の時間値設定は「正常ベース」で時間値を設定されます。

図3 MTM法における基本動作  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

以下に、MTM法で定義された基本動作について詳述します。

 

(1)手を伸ばす(Reach:R):

対象物に、手や指を移動することです。ほとんどの場合、最初は何も手に持っていない「空手」の状態です。「手を伸ばす」は、以下の3つの変動要因を考慮しています(表4 )。

①動作距離: 手や指の移動距離のことです。移動距離は、手や指の移動した軌跡を測定します。
②ケース: 目的物の状態などによって、5つのケースに分類されます。
③タイプ: 始点および終点における状態により、3つのタイプに分類されます。

表4 手を伸ばす  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

(2)運ぶ(Move:M):

対象物を、ある特定の場所に移動することを意味します。ほとんどの場合、ものを保持している状態です。「運ぶ」は、以下の 4 つの変動要因を考慮しています( 表5)。

①動作距離: 手や指の移動距離のことです。移動距離は、手や指の移動した軌跡を測定します。
②ケース: 運ばれる状態などによって、3つのケースに分類されます。
③タイプ: 始点および終点における状態により、3つのタイプに分類されます。
④重量または抵抗:目的物の重さにより、運ぶ時間値が異なります。重量が重くなればなるほど、時間値は増加します。具体的には、動作距離、ケースなどから決定した時間値に、重量による補正値を求め、該当する係数を乗じ定数を加えます。

表5運ぶ  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

(3)回す(Turn:T):

手や手首をねじるように回すことを意味します。空手の場合と、ものを持った場合の両方が考えられます。「回す」は、以下の 2つの変動要因を考慮しています(表6)。

①回転角度:手や手首の回す回転角度により、回す時間値は異なります。角度が大きいほど、時間値は増加します。
②重量または抵抗:対象物の重量により、回す時間値は異なります。重量または抵抗は3つに分類されます。

表6 回す  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

(4)圧す(Apply Pressure:AP):

抵抗に逆らって、加えられる力のことを意味します。「圧す」は、つかみ直しが発生するか否かの2択に分類されます。つかみ直しのない場合(AP1)は、10.6TMU、っかみ直しがある場合(AP2)は、16.2TMUになります。

 

(5)つかむ(Grasp: G):

対象物を手や指でコントロールすることを意味します。ピンセットや工具による場合は、「運ぶ」に分類されます。「つかむ」は、表7 のように分類されます。

表7 つかむ  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

(6)放す(Release: RL):

手や指による対象物のコントロールをやめることを意味します。「つかむ」と同様、ピンセットや工具などの器具による場合は、放すに該当しません。「放す」は2択に分類されます。指や手を開いて対称物を放す場合(RL1)は、2.0TMU、触れている手や指を放す場合(RL2)は0TMUになります。

 

(7)定置する(Position: P):

2つ以上の対象物を、軸合わせ、形合わせや、結合するまでの動作のことを意味します。「定置する」は、以下の 3 つの変動要因を考慮しています(表8)。

①対称性: 対称性は、3つに分類されます。
②はめ合いの度合い: はめ合いの度合いは 3つに分類されます。
③取扱性: 対象物をそのまま定置できる場合の “取扱い容易(E)”と、対象物を持ち直してから定置する場合の “取扱い困難(D)” の2つに分類されます。

表8 定置する  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

(8)引き離す(Disengage: D):

結合しているものを引き離すことを意味します。引き離したとき、抵抗が伴わない場合は、「運ぶ」に分類されます。「引き離す」は、以下の 2 つの変動要因を考慮しています(表9)。

①はめ合いの度合い: はめ合いの度合いは、3つに分類されます。
②取扱性: 取扱性は、最初のつかみだけで引き離すことができる場合の “取扱い容易(E)”と、つかみ直しなどが発生する場合の “取扱い困難(D)” の2つに分類されます。

表9 引き離す  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

 

(9)目の時間(Eye time):

目の時間は,目の視軸を移動させるための時間(ET)と、目的物を見極めるための時間(EF)の2つに分類されます。

・ET = 15.2×T/D TMU (最大:20MTU)
ただし、T: 目の移動距離
    D: 目の移動線に対する、目からの垂直距離

・EF = 7.3 MTU

(10)身体動作(Body motion):

足・脚および身体の動きによる動作については、表9のようになります。これは、ほとんどの場合、単独に発生することが多いため、見極めは容易になります。

表10身体動作  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門

以上が、基本動作の詳細およびMTM法における動作時間標準表です。なお、作業の時間値を設定する場合において、同時に2つ以上の動作が起こったときは、時間値の大きいほうを採用します。

MTM法では、WF法と同様に人間の動作を21種類の基本動作に分類し、それぞれの動作に標準時間を割り当てています。
MTM法は、WF法よりも動作の分類数を少なくすることで、WF法よりも分析にかかる時間を短縮しています。ただし、WF法よりも精度は劣ります。

 

実際の作業に時間設定のやり方は、MTM法でもWF法でも同様です。ただし、一般に言われているのは、WF法の方が電気製品の組立てなど、比較的タクトタイムの短い作業への適用例が多いのに対して、MTM法は鉄鋼産業など作業ペースがあまり早く出来ない超サイクル作業に適用する例が多いといわれています。

 

5.3 MODAPTS法 (Modular Arrangement of Predetermined Time Standards)

MODAPTS(モダプツ)法は、1966年オーストラリアのG. C. Heyde により、上肢動作を主体とした動作解析として開発されたPTS法の一種です。WF法やMTM法と比較して非常に簡略化されています。

MODAPTS法では、人間の上肢の動作を中心とした基本動作を、21個の記号で表しました。それぞれの記号は、動作の内容と時間値を含んでいます。21種類の基本動作に分類し、それぞれの動作に標準時間を割り当てています。これら21個の基本動作をもとに作業評価や所要時間の設定が行えます。

MODAPTS法は、簡便な割に精度が高いため、MTM法の代替として使用されることが多いです。また、リハビリなど医療分野での作業分析に多く使用されています。

(1)MODAPTS法の長所:

・所要時間の予測ができる。

実際の作業や器具の操作に必要な時間を、作業動作、器具の操作動作といった要素から、実際に計測しないで予測が可能になります。

・作業のムダや無理の部分を、時間尺度に評価できる

作業に効率化を検討する上で、ムダな部分や無理をしてしまう部分は、定性的で改善が困難な領域ですが、この部分についても時間尺度の定量的評価が出来ます。

 
(2)MODAPTS法の基本理論

⼈間の上肢(腕、⼿、指)によって⾏われる動作を、以下の3つの動作に分類されます。

 ・移動動作(Movement Classes)
 ・終局動作(Terminal Classes)及び移動
 ・いずれにも含まれない動作

通常は、単独では起こらないので、「移動動作 → 終局動作」のように、一対になって行われます。

また、各動作はそれぞれに数字が記載されています。その数値は、それぞれの動作に必要な時間を”MOD”(module:単位)の単位での値になります。

このMODは⼈間の最⼩単位として扱われ、

 1 MOD=0.129秒

になります。

 

それぞれの動作分類について詳細にみていきましょう。

 

(a)移動動作について

MODAPTS法では、上肢がその動作を⾏う際に使⽤する⾝体部位によって、時間値が異なります。

 ・指: M1
 ・⼿: M2
 ・前腕: M3
 ・上腕: M4
 ・肩: M5

ここで、“M”は “Movement”、数字は時間値(MOD)を意味します。

図11 移動動作の身体部位による時間値

 

(b)終局動作について

終局動作には、

 ・操作対象物に⼿を伸ばした後、それをつかむ動作: G(Get)
 ・操作対象物を移動させた後、⽬的の場所に置く動作: P(Put)

の2種類があります。

さらにこの2種類の動作は「注意⼒」の程度によってそれぞれ分類されます。

 

1)つかむ(G)の分類:

掴む(G)の動作は、必要な注意⼒の程度によって、3つに分類されます。

 ・接触: G0
 ・簡単なつかみ: G1
 ・複雑な掴み: G3

ここで、“G”は“Get”、数字は時間値(MOD)を表しています。

 

2)置く(P)の分類:

置く(P)の動作は、必要な注意⼒の程度によって、3つに分類されます。

 ・簡単に置く: P0
 ・要注視: P2
 ・組み合わせ: P5

ここで、“P”は“Put”、数字は時間値(MOD)を表しています。

 

(c)移動・終局動作以外の動作について

上肢によって⾏われる動作は、“移動動作”、“終局動作”ですが、実際に作業を遂⾏するにはその他の動作も必要になります。

MODAPTS法では、次の10個の動作とそれぞれの時間値が設定されています。

・重量補正: 物を運ぶ場合の重さの要素; L1(4kg増える度1MOD加算)
・視線移動: 視線の移動と焦点を合わせる; E2
・掴み直し: 対象物の掴み直し; R2
・瞬間的判断: 制限時間内の判断と決定; D3
・⾜⾸の動作: ⾜によるペダル操作(1回あたり); F3
・圧迫動作: 指や⼿で⼒を加える; A4
・⼿や腕のクランク運動(1回転あたり): ⽬的物を円運動させる動作のための⼿、腕による回転動作1回転; C4
・歩⾏動作; W5
・体幹の屈曲動作: ⽴っている状態からかがみ、再び⽴つ⼀連の動作; B17
・⽴位と着座動作: 椅⼦に座っている状態から⽴ち上がり、再び腰を下ろすorその逆の⼀連の動作; S30

 

 

C:PTS法のまとめ

PTS 法の特徴は、製造現場に対して「設計型」のアプローチをとることができることです。

本コンテンツでは、代表的な手法として、WF法、MTM法、MODAPTS法について概述しました。

今回は、時間の都合で記述できませんでしたが、改定時には、例題に基づいて実際の手順を示していきたいと考えています。

 

 

参考文献
IE手法:その実践的活用法   中村茂弘  QCD革新研究所
サービス業にも役立つ仕事の隠れ技IE手法入門  永井一志 他  日科技連出版社 2007年
第1回障碍者職業リハビリテーション研究会 作業能力評価法としてモダプツ法の位置づけ  松井亮輔  https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r013/r013_011.html

 

引用図表
図1 WF法動作分析の身体部位と動作距離  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表2 腕の基本動作に対するWF動作時間標準表  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
図3 MTM法における基本動作  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表4 手を伸ばす  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表5 運ぶ  出典:参考;サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表6 回す  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表7 つかむ  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表8定置する  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表9引き離す  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
表10身体動作  出典:サービス業に役立つ仕事の隠れ技_IE手法入門
図11 移動動作の身体部位による時間値

 

ORG:2023/11/13