1.4 鋳造における諸現象/鋳造欠陥

1.4 鋳造における諸現象/鋳造欠陥

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鋳造加工を、他の加工法と比較した場合、最も大きく異なる点は製品形状の自由度であると考えられます。最近では3次元(3D)プリンターが登場して、製品形状の自由度についてはそん色ない加工法が生まれてきていますが、材料の制約、量産性を考えると、鋳造にははるかに及びません。
製品形状の自由度は、中子を使用することにあります。中子を用いることにより、例えば自動車のエンジンブロックのような、複雑形状品を一体で成形できることが最大の特徴です。
しかし、溶融金属を使用するため、寸法の安定性は他の加工法に比べて劣ります。また、一般に溶融金属は凝固時に体積収縮を伴います。この結果、鋳造品にひけ巣欠陥や、ピンホール、ガスホールといわれるガス欠陥の発生に注意を払う必要があります。
本項では、鋳造において発生する現象や、欠陥について概要を記述します。

1. 鋳造で発生する現象

(1)寸法変化

凝固が終了してから室温まで冷却することにより、それぞれの金属の熱膨張計数に見合った寸法変化(収縮)が発生します。このため、鋳物の模型は、この寸法変化をあらかじめ見込んで大きめに製作する必要があります。このときに、使用する定規を、鋳物尺(shrinkage rule)または伸尺(contraction rule)といいます。
湯の材質や製品寸法によって、0.8~2.5%大きめに製作されます。模型は、一般的にはFC材の場合は小さめ、オーステナイト系ステンレス鋳物の場合は大きめに製作されます。
また、冷却が均一に行われないと熱応力による変形が生じます。場合によっては内部応力として鋳造品に残存して不具合を生じることがあります。
何れにしても、これらの作用により、鋳造品の寸法精度は、他の加工法と比較して劣ることになります。

(2)ひけ巣(shrinkage,shrinkage cavity,shrinkage porosity)

凝固時の収縮は、鋳物にひけ巣と称する湯が充填されない個所が発生し、鋳造品の内部欠陥になります。ひけ巣の防止には十分な湯の供給が有効です。そのためには押湯が適切な位置に用いられます。原理的には、押湯は製品より後で凝固が終了することで、押湯から製品に溶融金属(湯)の不足分が補給されることになります。鋳造メーカでは、押湯の量は歩留りに影響するので、その設計に多大の努力をはらっています。

(3)ガス欠陥(gas defects)

溶解時に溶融金属に過剰に含まれるガスや、とりべ内や鋳型内の流れの途中で吸収されたガスは、凝固時にガス欠陥を発生させます。その対策として、いろいろな脱ガス法が開発されています。代表的な例をあげると、鋼の場合には脱酸であり、アルミニウム(Al)合金の場合には脱水素になります。
また、溶融金属の時点ではガス含有量が少なくても、とりべなどでの運搬中や、鋳型内でのガス吸収、ガスの巻込みにより欠陥が発生します。
これらは、ピンホールや、吹かれなどのガス欠陥を生じます。ダイカストではさらに、巻き込まれたガスが、加圧操作で押しつぶされており、熱処理を行うとこのガスが膨張してブリスタ(brister,または、はがれ)といわれる欠陥を生じます。

2. 鋳造欠陥(casting defect)

鋳造品の不良は、製作に要した労力を無駄にして、工程を混乱させ納期遅延の原因となり、多大な工数増を招きます。不良については色々な種類が有り、全てを取り上げることは不可能ですが、主なものを列挙します。

(1) 寸法の不正確

原因としては次のものがあげられます。
1) 模型寸法が不正確。
2) 模型の縮みしろが、実際の地金の縮みと一致しない。
3) 模型の合せ印が不正確なため、合わせ型に食い違いが出来る(mismatch)。
4) 鋳型の上型に載せたおもりが軽すぎると、注湯の際に上型が浮き上がって鋳物の厚さが厚くなる(swell)。
5) 注湯温度が不適切。
6) 上型と下型のかぶせ方が乱雑。

(2) 鋳肌不良

鋳肌の不良はさらに3種類に分類することができます。

(a) 一般的な鋳肌不良
1) 模型の表面が荒れている、反っている。
2) 砂の選定が不適切(耐熱度の低い砂を使用すると焼付き(burning)を起こす)。
3) 砂型の型込めがかたすぎる。もしくは弱すぎる(弱すぎる場合: wash)。
4) 塗型材料が不適切、および塗型方法の不良。

(b) 注湯の際の砂型のくずれ
・砂型の一部が注湯の際にくずされて、でこぼこができる、すくわれ(scab)
・砂型や中子の一部に分子の粗いところができて、肉眼でも観察可能で、液圧が加わる部品では合格しない、しぼられ(buckling,rattail)
・砂型や中子の一部が湯に流されて、砂が予期しない場所に噛みこむ、砂くい(または、砂かみ)
これらの原因は、
1) 砂の粘結度不足および、耐熱度不足、熱間強度不足など砂の不良。
2) 型の込め方が弱い。要所のくずれ防止のための釘の使用不足。
3) 湯口場所が不適切および、湯口、湯道の形状・寸法不良。
4) 鋳物砂の水分過多。特に合成砂の場合。
5) ガス抜きの方向が不適切で、湯流れの邪魔をする。
6) 注湯温度が高すぎる場合。
7) 注湯温度が低すぎて、鋳物全体に流れず途中で固化する湯回り不良(misrun)。
8) 鋳型の造型から、注湯まで長期間放置。

(c) きらい
1) ガス抜きが不十分
2) 砂の中に、石炭粉やコークス粉が多すぎる、また水分が多すぎる。
石炭粉やコークス粉が多すぎると、焼型をしない場合は、ガスが発生しやすくなります。石炭粉やコークス粉は、焼型にしてこれらが燃焼除去されてガス抜きの通気の役割をします。
3) 型の込め方がかたすぎる。
4) 湯口や湯道の場所や、大きさ、形状などが不適切
5) 上がりの無いとき、あるいは上がりの場所が不適切
6) 鋳型の乾燥が不十分
7) ケレンの状態が悪い。例えば、めっきがはげかけている、表面に水分が付着している。
8) 冷し金が効きすぎる、あるいは逆に急冷させる熱容量を持たない場合

(3) 鋳巣

鋳巣は、切削面にあらわれると、見栄えが悪く、製品の価値を著しく低下させます。また、場所によっては製品の強度を不足をまねき、耐圧部品では使用できない場合があります。
鋳巣には、1.項で述べたようにひけ巣とガス欠陥とがあります。
ひけ巣は鋳造品の比較的肉厚部分、例えば押湯の下にできます(図1.4.1)。最終的に凝固収縮した部分で形状としては逆円すい形をしています。内部には、針状の結晶のようなものがあります。

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ガス欠陥は、球またはラグビーボール状の空洞で、内部はなめらかで金属光沢をしています。大きいものはガス穴もしくは気ほう(gas hole)といい、粟粒上の空洞をピンホール(pin hole)、それより大きいものをブローホール(blow hole)といいます。湯が鋳型の中で沸き立つようになる場合は、湯が大きく振動してガス欠陥が多く発生します。
鋳巣が発生する原因は、
1) 湯口や湯道の設計不良。
2) 砂の水分が多すぎる、および通気度が悪い場合。その他、焼型や中子の乾燥不十分など、原因が砂中のガスにある場合。
3) 作業者の熟練度不良、不注意。
4) 鋳造方案が悪い場合。例えば、砂の込め方にかたすぎる部分ができている。注湯の際、湯が静かに入らない状態、いわゆるきらいができとき。湯口や、湯道、上り、押湯などの大きさ、位置が不適切なとき。型込めの時に上型と下型との考慮が不足したとき。
5) 地金の成分、配合不良。
6) 注湯温度の不良。

(4) 外ひけ(depression)

湯が凝固する際に、外面にくぼみができる場合を外ひけ、またが単にひけといいます。内部には湯が引けない場合が多いですが、引けておる場合もあります。

(5) 割れ

凝固収縮する際に、形状によっては、割れやひびが発生します。設計上、肉厚の部分や肥大した部分を設けないように、角も設けないようにします。
図1.4.2に、割れを防止する設計例を示します。

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(6) 凝固収縮時の寸法の狂い

薄肉の部分は、厚肉の部分に比較して、早く凝固します。そのため、形状、寸法が狂うことがあります。
例えば、図1.4.3に示すように、本来は一点鎖線の形状を望んでいたのに、凝固した後は実線のようになります。
これを防ぐには、形状によっては捨てざん等を余分に設けて解決します。
また、設計上、鋳造の際に内部応力(残留応力)(internal stress)ができるだけ残らないようにすることが、必要です。

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(7) 湯境(cold shut)

湯の温度が低下して、湯の流動性が悪くなったときは一応湯は回りますが、二方向から接した湯が境目をつくる状態を湯境といいます。

 

 

3. 発生原因から分類した鋳造欠陥

本項では、鋳造時に発生する欠陥について、鋳造工程の要素ごとに見ていきましょう。

(1)鋳物砂に起因する欠陥

(a)砂噛み(sand inclusion)
砂噛みとは、鋳造品の一部に砂が詰まって生じた穴で、型砂または中子砂が崩れて詰まったものをいいます。片の砂が取れた部分にはこぶができます。砂噛みは、砂の結合力が弱いと発生しやすくなります。


図1.4.7 砂噛み

砂噛みの原因には次のようなものが考えられます。
・洗われ: 洗われは、油が流れる方向に、砂が洗われて粗い肥大部をいいます。粘結剤の添加量を増す、混練時間を増すなどを対策とします。
・砂落ち: 砂落ちは、型かぶせの際に、砂型または中子の一部が壊れて落ちたものをいいます。製品には、砂型または中子の壊れた部分に対応する形状の不規則な出っ張りが認められます。また、これに対応した砂噛みまたはくぼみが観察されます。
・中子の飛ばされ: 中子が弱くて注湯の際に飛ばされ、一方にはこぶが、他方にはくぼみを生じます。
・生型の水分過多: 生型の場合、水分が多いと溶湯が沸騰して暴れて、砂噛みを生じます。

(b)ブローホール(blow hole)、吹かれ
ブローホールとは、ガス穴のことで、球状もしくは球に近い扁平状の穴で、直径が3㎜以上のものをいいます 。単独または不規則に散在しており、内面は滑らかで色は青色や銀白色をしています。吹かれは、鋳型の上部に限って現れる開放しているか塞がっていても上部の表皮が薄い穴です。

ガス穴、吹かれを防止する対策としては、砂の通気度をよくするために、粗粒の砂を用いる、微粉を除去するなどの対策をします。また、ガスの発生速度を適正にするために、水分や、粘結剤、可塑添加物の種類や量を調整する必要があります。
一般に、鋳物砂の通気度を良好にするには、粗粒を33%添加する必要があります。また、細粒を10%添加すると。通気度が50%に低下するといわれます。

(c)ピンホール(pin hole)
ピンホールの発生原因は、ブローホールと同じですが、その大きさは直径2,3mm以下です。鋳造品全体に一様に分布したり、局部的に分布したりしますが、軍になることが多いです。内面は酸化していたり、銀白色を呈する者もあります。
発生対策は、ブローホールの場合と同じです。

(d)すくわれ
すくわれは、主に生型の強度不足や乾燥強度が高すぎる場合に、長時間高温の溶湯にさらされる個所に発生します。また、鋳砂の熱間強度も影響します。
発生対策は、鋳物砂へのクッション剤の添加や、微粉除去、通気度をよくするなどがあります。この他、過剰な水分を減少したり、老化した砂や耐火度の低い砂(天然砂)を使用しないようにします。

(e)しぼられ
しぼられは、溶湯の熱により砂の粒子が膨張して、砂粒子間に十分な隙間がないと膨張分を吸収できない場合に起こります。しぼられは、砂が膨張により鋳型面から剥がされて口の開いた砂の下に溶湯が入り込んだ状態です。
発生対策は、砂の粒度分布を調整して、クッション剤として可燃物を添加し、鋳砂中の微粉を除去します。また、生型の場合には、過剰な水分を減少させることが必要です。

(f)割れ
割れは、溶湯が凝固する際に発生します。
発生対策は、製品が自由の凝固収縮できるように砂の残留強度を下げるのが有効です。そのためには鋳砂に可燃物を添加します。

(g)焼付き
焼付きには、砂の耐火度が低くて砂が溶けて溶湯と混合した状態になる焼付きと、化学的反応による焼付きとがあります。
発生対策としては、なるべく耐火度の高い砂を用いるとともに、溶湯が直接砂粒子と溶湯が接触しないようにガス層を形成するために添加剤を添加します。水分が過剰な場合、焼付きがひどくなります。

(h)さしこみ
鋳砂の粒子間に隙間が多いと、溶湯が浸透して、砂と溶湯とが混合して凝固してち密な殻を形成します。この状態をさしこみといいます。
発生対策としては、粒度分布を調整して細かい砂を使用します。また、発生ガスの圧力を高くするために炭素物質の添加量を増します。砂の耐火度を上げるために純度を高いものを使用ことも対策となります。

(i)しみつき
しみつきとは、鋳型の砂の一部分が模型に付着して除去され、その部分に溶湯が入り、製品の表面にこぶができたようになる状態をいいます。
砂の水分が適正でない場合、鋳型の強度が出ず発生し易くなりますので、発生対策としては水分の添加割合に十分注意することが必要です。また、粘結剤と水分とのバランスを考慮する必要があります。

 

(2)造形方法に起因する欠陥

(a)砂噛み
鋳型の突き固めの程度は、砂の種類や、粘度分、水分などによる通気性の良否、成形性、強度などによって異なっています。

造形方法に起因する砂噛みの原因と対策は以下のように考えられます。
・注湯する際に湯口に鋭角部分や突出部がある場合:  飛ばされ、洗われ、砂落ちなどの鋳型が弱い場合、特に起こりやすいです。対策としては、湯口の穴とせき鉢の穴を一致させるようにします。 上枠を用いてせき鉢、押湯を湯口に立てる場合は、せき鉢からの湯漏れを防ぐようにします。
・押込みによる砂噛み:鋳型の定盤が平らでない場合に、型合わせの当たりが均一にならないので、鋳型面の一部が変形して生じます。また、中子と主型との芯があっていないと、かぶせの際に押込みを起こして、剥がれた砂が砂噛みの原因になります。
・その他:鋳型の乾燥が不十分で、一部が軟らかいまま残った場合や、くぎなどでの補強が不十分な場合、型締めが不均一もしくは不十分な場合、これらはいずれも鋳型が溶湯で洗われたり、飛ばされが起こって砂噛みの原因となります。

(b)ブローホール
注湯前の鋳型の空間には空気が充満しています。注湯すると、高温の溶湯により鋳型から発生するガスと空気が混入します。この他、溶湯が凝固する際金属に溶け込んでいたガスも放出されます。これらの多量のガスは、すべてガス穴や砂粒子の隙間から外部に放出されるので、できる限りガスの逃げ道を良くしておく必要があります。

ブローホールが生じる原因は以下のものが考えられます。
・生型乾燥型で、ガス抜きが不十分
・中子のガス抜きが不十分
・鋳型の乾燥が不十分
・鋳砂を突き固めすぎて、通気度が低い
・鋳砂の突き固めが不均一で、特に模型付近を突きすぎ
・塗型剤が厚すぎたり、乾燥が不十分
・せき鉢の乾燥が不十分
・冷剤と熱剤との組合せ

ブローホールの発生対策は、ガス針や中子のガス抜き穴は必ず設ける必要があります。さらに、土間込めの場合、鋳型の周囲にコークスを配置してガスを抜けやすくします(図1.4.4)。一般にガスは下型には逃げにくいので、できる限り上型の方に抜けるようにします。

図1.4.4 土間込めの場合のガス抜き

(c)ピンホール
造形方法に起因する発生原因も発生対策もブローホールの場合と同一です。
造形作業中の型水分が多く、溶湯と接触してガスが発生してピンホールを形成する場合、外的要因によるピンホールといいます。

(d)すくわれ
すくわれは、溶湯が沸騰したり、渦が発生すると、鋳砂を洗い流したことにより発生します。そうすると、鋳砂が洗い流された個所に地金のこぶが残ります。浸食されたり、洗い流されることにより、削り取られた鋳砂は鋳物の上型面に砂噛みとして現れます。

造形方法により発生する、すくわれの原因は、次のものが考えられます。
・局部的に固く固めすぎた場合
・鋳型の乾燥が不十分

(e)しぼられ
しぼられは、砂の薄い層が鋳物本体に入り込み、薄い金属層が発生している欠陥です。しぼられは容易にはつり落とすことができますが、痕にはくぼみが残ります。脈状しぼられといわれるのは、不規則な線状の小さなしぼられです。

造形方法により発生する、しぼられの原因は、次のものが考えられます。
・鋳型の突き固めが不均一
・不完全な鋳型補修
・塗型剤を厚く塗りすぎ
・塗型剤中の粘結剤添加過多

(f)割れ
割れには、熱間き裂と冷間き裂との2種類があります。
発生原因は、鋳砂の突き固めが固すぎたり、芯金が鋳型面に近すぎると、溶湯の凝固収縮が自由にならないことです。その他、型ばらしが早すぎることも原因になります。

(g)焼付き
造形方法により発生する、しぼられの原因は、次のものが考えられます。
・鋳砂の突き固め不足
・塗型剤の性質が不良
・塗型剤の塗布が不十分
・ふり粉の過少、品質不良(生型の場合)

(h)湯回り不良
湯回り不良は、鋳物の上型面か、湯口から最も遠い部分に溶湯が回らずに、角などが丸くなっている状態です。

造形方法により発生する、湯回り不良の原因は、次のものが考えられます。
・ガスの背圧が高すぎる
・冷し金の温度が不十分
・鋳物肉が薄すぎる
・付き固めが柔らか過ぎて、上型がたわみ、肉厚が薄くなる。

(i)湯ざかい
湯ざかいは、鋳物表面に直角な筋として、あるいは上下に層ができて、ほとんどの個所で継ぎ目が見える状態をいいます。その他、ケレンへの溶湯の融着がうまくいかない場合にも生じます。
湯ざかいの対策は、ケレンに対してせきの位置を変えて、溶湯でよく洗われるようにする必要があります。その他の対策は湯回り不良と同じです。

(j)鋳肌不良
鋳肌不良は、さしこみによる場合や、鋳砂の突き固めが不十分な場合、塗型剤の選定が不適当、ふり粉の量/質が不適当な場合に起こります。

(k)はぐみ
はぐみは、鋳型の見切り面で鋳物が反対向きに食い違っている状態をいいます。はぐみが無ければ鋳物は良品になります。

造形方法により発生する、はぐみの原因は、次のものが考えられます。
・型合わせ後に外力を受けて型合わせが狂う
・鋳枠が付き固めに対して弱い
・模型や中子取りの芯合わせ不良
・マッチプレートのピンの不良

(l)鋳ばり(flash)
鋳ばりは、型込め中に型が崩れたり、型のあわせ面をなですぎたり、突き棒による突き固めが不十分な場合に、中子幅木と中子の隙間に発生します。多くの場合鋳物表面に直角方向に薄い地金が突き出ています。鋳ばり自身は、鋳造不良になるほどの欠陥ではないですが、はつりとる必要があったり、チルしたり割れが入る危険性があります。

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図1.4.8 鋳ばり

鋳ばりの原因としては次のものが考えられます。
・型込め中のずれ
・鋳型の締付が不均一
・突き棒による突き固めが不十分、または柔らかい
・型合わせ面の削りすぎ

 

(3)鋳造方案に起因する欠陥

(a)砂噛み
砂噛みは、鋳造方案に問題があり飛ばされや洗われが発生した場合に起こります。飛ばされや洗われは、鋳造方案が悪くて、溶湯が鋳型、中子の表面に衝突して、砂を浸食した結果、起こります。その個所は、はだ荒れやこぶを生じて、浸食された砂が砂噛みの欠陥を発生させます。

飛ばされや洗われによって砂噛みが発生する要因としては、次のようなものがあげられます。
・鋳型や中子の表面に、溶湯が激しく突き当たるようなせきの切り方
・せきの数が不足して、1か所から大量の溶湯が、鋳型に入り込む
・溶湯の衝撃を緩和しないせきの切り方;湯口と、湯道、せきの面積比を適切にする。湯口が垂直に近いときは要注意
・せきの切り方が悪く自噴作用を起こす

(b)ブローホール
鋳造方案に起因する、ブローホール発生の原因としては、次のものが考えられます。
・幅木の大きさが不適当で、ガス抜きが十分取れない
・上型が浅すぎたり、湯口の高さが十分高くないため、溶湯に付加できる圧力が低い
・せきが長すぎたり、薄かったりするため、途中で溶湯が凝固して溶湯に圧力が付加できない

(c)ピンホール
ブローホールと同じ原因で発生します、

(d)引け巣
引け巣は、溶湯の補給量不足、押湯を一応は立てているが効果がない場合、せきの切り方が悪く正常な凝固ができない場合などに発生します。
引け巣に関連してですが、引け割れは凝固が進行した部分が収縮して、凝固が不完全な部分を引っ張った場合に発生します。

鋳造方案に起因する引け巣に対する対策は以下のように考えられます。
・溶湯ができるだけ均一な速度で、凝固冷却できるようにせきを切る
・押し湯や上りの数と大きさを必要十分な数を設ける
・押し湯を立てるのが難しい場合は、冷し金を用いて冷却速度を調整する(図1.4.5)
・面取り(アール)の大きさを十分大きくする
・鋳物肉厚の急激な変化を避ける

図1.4.5 冷し金

(e)すくわれ
砂噛みの項で示したように、溶湯が鋳型や中子に衝突すると鋳型表面が浸食されて、すくわれを発生します。この部分は、製品では不規則な塊状の出っ張りとなります。一方浸食された鋳砂は砂噛みの原因となります。
すくわれに対する鋳造方案からの対策は、砂噛みの項を参照してください。

(f)しぼられ
しぼられは、型の膨張により発生する欠陥です。
鋳造方案に起因するしぼられに対する対策は、せきの配置を工夫して鋳型が不均一な膨張を起こさないように、できるだけ均一に全周から、溶湯が静かに注入されるように工夫することです。

(g)のろかみせきばちの設計が悪い場合、溶滓の巻込みを防ぐことが出来ずのろかみになります。湯口や、湯道、せきの断面積比が悪かったり、それらの位置が悪い場合は、溶滓を途中で捕捉することが出来ません。
しぼり、のろこし(ストッパ、ストレーナ)を装着しないと、のろを捕捉することは出来ません。

のろかみの対策については、図1.4.6 のような方法があります。

図1.4.6 のろかみの対策

(h)割れ
割れは、凝固後に、鋳物が収縮する際に、せきや湯道、湯口、押し湯などが収縮を妨げたり、鋳枠のはりが収縮を妨げると、鋳物に引張り応力が作用すると発生します。その他、砂から早く出し過ぎると起こる割れ、取扱いが乱暴な場合に発生する冷間き裂とがあります。

(i)湯回り不良
湯回り不良を避けるためには、溶湯に圧力と速度とを加えて鋳型全体に溶湯がいきわたるようにしなければなりません。そのための対策としては、
・湯口、湯道、せきを十分な大きさにする
・薄肉部へも溶湯が入り込むように、せきの位置や釣り合いを考える
・湯口を高くして湯圧を高くする

などがあります。

(j)湯ざかい
湯ざかい不良の原因は、湯回り不良と同じですので、対策も湯回り不良と同じ対策をとります。

(k)チル
せきを細くすると、鋳込み時間が長くなり、薄肉部の冷却速度が速くなりチル化しやすくなります。
対策は、せきの寸法を適正にすることがあげられます。

 

(4)鋳込み法に起因する欠陥

(a)砂噛み
溶湯の注入が激しすぎたり、鋳型材料と比較して鋳込み温度が高すぎる場合、鋳砂が飛ばされたり洗われたりして砂噛みを生じます。その他考えられる原因として、鋳型の取扱いが粗雑、例えば上型をまげてかぶせる、強い締付け、重錘を鋳型上に落とすなどの不具合を起こした場合、砂噛みを生じます。

(b)ブローホール
乾燥予熱をしていないとりべを使用したり、適正温度以下の溶湯を使用して鋳込むなどするとブローホールが発生します。
発生対策は、これらを行わない、つまり乾燥したとりべの使用、適正温度の溶湯による鋳込み実施です。

(c)ピンホール
発生原因は、ブローホールと同様です。発生対策も同様です。

(d)引け巣
押し湯に補給する溶湯の温度が低い場合、鋳込み温度が低すぎる場合には、押し湯が先に凝固してしまい引け巣を発生します。

発生対策は、以下のような方策をとり、溶湯の温度を上昇させることにより、押し湯の効果を最大限にします。
・押し湯表面に発熱剤を撒く
・押し湯の型砂に発熱剤を混入
・アーク放電で押し湯表面を加熱

(e)のろかみ
発生対策としては、とりべのライニングを清潔にする、可能なら土びん口式にする、溶滓はこまめに処理する、溶湯温度は十分高くするなどがあります。

(f)焼付き
焼付きは、鋳込み温度が高すぎたり、溶湯圧力が高すぎると発生します。発生場所は、主として鋳型の高温部分や突き固めの弱い個所に発生します。

(g)湯回り不良
鋳込みの時に発生する湯回り不良は、のろや粘度などがせきを塞いだ場合や、鋳込みが断続的に行われる場合、溶湯温度が低い場合、型の水分が多いなどその他の原因で溶湯が沸騰したり、鋳込み初期に鋳込み速度が遅くなった場合は湯回り不良を生じます。
また、上型が浮かないように載せるおもりが重すぎると、型がたわんで溶湯が回りにくくなる場合があります。

(h)湯ざかい
湯ざかい不良の原因は、湯回り不良と同じですので、対策も湯回り不良と同じ対策をとります。

(i)鋳肌不良
鋳込みが激しすぎたり、鋳型材料の耐火度に対する鋳込み温度が高すぎる、注湯時にとりべの位置が高く溶湯圧が高い場合に鋳肌不良が発生します。

(j)はぐみ
鋳型にとりべをぶつけたり、コンベア上でがたついたり、上型/下型がお互いにすべると発生します。

(k)鋳ばり
注湯時にとりべの位置が高く溶湯圧が高い場合や、油切りが遅れて溶湯圧が高くなった場合に発生します。

(l)チル
汚れたとりべを使用したり、とりべの注ぎ口が生の時に低温鋳込みを行うとチルが発生しやすくなります。とりべは十分乾燥させて予熱する必要があります。

 

(5)溶解に起因する欠陥

(a)ブローホール
ブローホールが発生する原因としては、次のようなものが考えられます。
・溶湯温度が低く、流動性が悪い
・溶湯が酸化している
・溶湯にガスを含んでいる
・初込めコークス(ベッドコークス)が低い
・床砂が湿りすぎ、もしくは突き固めが固すぎ
・過剰送風、もしくは挿入コークスが少ない
・といが湿っている
・溶湯中に水素ガスが溶け込んでいる
・溶湯の硫黄の含有量が多い
・配合が固すぎる

(b)ピンホール
鋳鉄の溶解中、水分の分解により発生したガスが、溶湯中に吸収されると、注湯の際、ガスの一部を鋳型内で放出され、内面が銀白色のピンホールを生成します。空気泡が溶湯中に巻き込まれた場合は、内面が酸化されたピンホール、溶湯と鋳型材料が局部的に反応すると内面が青色のピンホールを生成します。

(c)引け巣
溶湯が固すぎる場合や、溶解温度が低く含有炭素量が少ない場合、りんの含有量が高い場合、接種のやりすぎ、挿入や秤量のミスで溶湯成分が不良の場合に発生します。

(d)割れ
溶湯が固すぎる配合で、炭化物安定剤が過剰の場合、収縮量が大きく割れが発生します。

(e)材質過硬
溶湯が固すぎる原因としては次のようなものが考えられます。これらの場合に材質効果を起こしやすくなります。
・溶湯中の炭素、けい素の含有量が少なすぎる
・溶湯中のマンガン、クロムの含有量が多すぎる
・硫黄:マンガンとの比が高すぎる
・鋼材スクラップ屑が細かすぎる
・故鉄で成分が不適当
・溶解温度が低すぎる
・接種が不十分
・クロム、マンガンの混入または添加のし過ぎによる白銑化

(g)粗晶
鋳鉄の炭素量が高すぎると、片状黒鉛が粗大化して組織内に一様に分布して、機械加工後に面が粗く、ざく状態になります。溶解温度が高すぎると炭素量が増加します。
その他、けい素やリンの含有量が多すぎる場合や、接種が多すぎる場合、粗晶になります。

 

 

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章
機械工作法上巻   養賢堂1973年

引用図表
図1.4.1  ひけ巣            機械工作法上巻   養賢堂1973年
図1.4.2  割れの防止方法          機械工作法上巻   養賢堂1973年
図1.4.3  凝固収縮による寸法の狂い    機械工作法上巻   養賢堂1973年
図1.4.4  土間込めの場合のガス抜き   2級技能士鋳造科指導書

図1.4.5  冷し金            2級技能士鋳造科指導書
図1.4.6  のろかみの対策           2級技能士鋳造科指導書
図 1.4.7  砂噛み         出所不明(US HP)
図 1.4.8  鋳バリ          出所不明(US HP)

 

2016/11/2
本稿(初稿)は、筆者の興味から、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。
Add: 2020/04/02