4.6 精密鋳造法(precision casting process)
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4.6 精密鋳造法(precision casting process)
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精密鋳造法は、他の鋳造法に比べて寸法精度が高く、鋳肌が平滑で、複雑な形状かつアンダカットのものが一体で製作でき、最終形状に最も近いニアネットシェイプの鋳物の製造が可能です。
精密鋳造法には、インベストメント鋳造法(ロストワックス法)および、セラミックシェルモールド法、石こう鋳造法があります。
1. インベストメント鋳造法(investment casting process)
ロストワックス法、ろう型法とも呼ばれます。全精密鋳造品生産量の80%以上を占めています。製品質量は数g から120kg ぐらいまで、最小肉厚0.5~1.5mm、長さ最大約1000mm と幅広く、複雑形状製品に適用できます。製品の寸法公差は100mm で±0.30mm、鋳肌粗さはRmax=4~12S と、鋳物としては非常に精度の高い製品が得られます。
ニッケルやコバルト系の特殊耐熱合金をはじめとして、すべての材質に適用できます。
インベストメント鋳造法には、ソリッドモールド法(solid mold process)とセラミックシェルモールド法(ceramic shell mold process)とがあります。前者は、ろう模型を耐火物スラリーに埋めて造型します。後者は、ろう模型の周囲に耐火物スラリーのコーティングを繰返して造型します。工業的には後者の方法でほとんど製作されています。
■セラミックシェルモールド法
図4.6.1に、セラミックシェルモールド法の基本工程を示します。
1) アルミニウム合金などの金型に、パラフィン、レジン、フィラーを混合したワックスを温度327~353K、、圧力0.98~4.9MPaでインゼクションマシンにより射出し模型を成形します。
2) 模型内の中子にはセラミックスを用いますが、中子の除去が難しい場合は、ポリエチレングリコールを主成分とした水溶性中子が用い、成形後水中につけて溶出させます。
3) 成形した1個から数十個のろう模型を、湯道用ろう模型に加熱したへらでろう付けして取付けて、ツリーを組立てます。
4) コロイダルシリカまたはエチルシリケートをバインダとして、ジルコン、アルミナ、シリカなどの耐火物微粉(フィラー)を混合したスラリーに、組立てたツリーを浸漬して、ついで耐火物粒子を振りかけるスタッコを行います。
5) スラリーへの浸漬とスタッコと乾燥との組合せを5~10回繰返して、ろう模型に厚さ4~15mm のセラミックシェルを形成します。
6) スラリー浸漬-スタッコの工程は恒温恒湿の室内(おおよそ雰囲気温度295±2K,湿度55±5%)で行います。全体のコーティング作業時間は10~20時間です。
7) ついで、セラミックシェルモールドからろう模型を溶出させるため、オートクレーブ(温度423K,圧力588kPa)で10分程度加熱します。
8) 脱ろう終了後、セラミックシェルを温度973~1273Kで、20分から1時間焼成します。鋳造は、大気溶解-大気鋳造、真空溶解-真空鋳造、反転加圧鋳造、遠心鋳造、真空吸引鋳造など、鋳造材質や品質要求に応じた溶解-鋳造方法がとられます。
9) 凝固後の型ばらしは、ノックアウトマシンで鋳型を壊した後、ショットブラスト、サンドブラスト、ウォータブラストなどにより付着残留耐火物を取り除きます。
10) セラミックス製中子の除去には、鉄系鋳物では約500℃のカ性ソーダ中に浸漬する方法や、オートクレーブ中で約150℃の希釈カ性ソーダまたはカ性カリ中で加圧・減圧を繰返してコアを溶融させる方法がとられます。
2. 石こう鋳造法(plaster mold casting process)
α型半水石こう(40~70%)、ケイ砂(30~60%)、ケイ石粉、タルクなどの耐火物フィラー、添加物を配合した石こうを用いて造型します。
鋳型用石こうには3種類あります。
(1)加圧または減圧鋳造用非発泡石こう
(2)重力鋳造用発泡石こう
(3)インベストメント鋳造用の埋没用石こう
石こう鋳造法は、石こうと反応しない低融点の亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、一部の銅合金の鋳造に用いられます。鋳肌と寸法精度がよく、冷却が遅いので薄肉製品の鋳造が可能です。
■非発泡石こう鋳造法
非発泡石こうは、通気性がほとんどなく、溶湯の鋳込みでキャビティ内圧力が急激に上昇して、湯回り不良が生じやすいです。そのため加圧あるいは減圧鋳造が行われます。
加圧鋳造は溶湯鋳造後、凝固終了まで湯口から約20~80kPaの圧縮空気で加圧します。減圧鋳造は溶湯を真空ポンプで減圧吸引します。薄肉の鋳造が可能ですが、凝固時間が長くて、結晶粒粗大化、鋳造欠陥などの原因となるので、できるだけ鋳型温度、鋳込温度を低くします。型ばらしはニューマチックハンマや低圧ウォータジェットで容易に行えます。
■発泡石こう鋳造法
発泡石こう鋳造法は、微細気泡が分布したスラリーを用います。通気性があるので特殊な鋳造法の必要はありません。鋳型の保温性が高いので凝固時間が長くなり、鋳造方案、鋳造条件に考慮を要します。
■埋没用石こう鋳造法
埋没用石こう鋳造法は、発泡石こうを手でかくはんするか、あるいは機械かくはん後、真空(1.33~2.66kPa)脱泡して、そのスラリーをろう模型を設置した枠内に流し込み、再び真空脱泡して内部気泡を除去します。固形後、脱ろうを行って鋳造します。
参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章
引用図表
図4.6.1 セラミックシェルモールド法の造型・鋳造工程 機械工学便覧 第6版 β03-02章
2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。