4.9 遠心鋳造法(Centrifugal casting method)

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4.9 遠心鋳造法(Centrifugal casting method)

鋳型を一定回転させておき、その中に溶湯を鋳造し、溶湯に遠心力を作用させて品質の高い鋳造品を安価に製造する鋳造法です。鋳造機の回転軸の方向により横型遠心鋳造法と縦型遠心鋳造法とに大別されます。

遠心力の利用方法により、3種類(A,B,Cと、DとE)に分類されます(図4.9.1)。

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1. 真の遠心鋳造法

溶湯を、金型あるいは砂型製円筒鋳型に鋳造し、垂直軸あるいは水平軸の回りに回転させると、溶湯は鋳型の内壁に押し付けられて中空となります。水道管、シリンダライナなどの管状や環状の製品を、中子を用いずに鋳造する方法です。クボタや栗本鐵工所が、本方法で水道管を製作しています。
肉厚は、溶湯の鋳造量により調節されます。遠心力により溶湯と鋳型との密着がよく、冷却速度が速く、ブローホールやひけ巣などの欠陥が極めて少ない、良好な鋳物が製作されます。

2. 半遠心鋳造

円板状の歯車、車輪、プーリなどを、その対称軸を回転軸として鋳型を回転させながら中央の湯口から鋳造します。溶湯は遠心力により中央の湯口から外周へ押出されて鋳型を充満します。製品全体が鋳型によって造られます。製品肉厚が薄くても押湯効果が働くので、品質が高く、鋳造歩留りが高い鋳物ができます。

3. 遠心加圧鋳造

不規則な形状の製品を中央の湯口から放射状の湯道をつけて配置し、湯口を回転軸として垂直軸の回りに鋳型
を回転させ、遠心力を鋳造圧力として利用する鋳造方式です。
半遠心鋳造法とは、鋳物の軸を回転軸としない点が異なります。鋳物の形状は限定されず、回転時にバランスがとれ、振動が発生しないよう注意します。

適正な回転数は、振動や、応力、溶湯の滴下、偏析を考慮して決定されます。

N=C/√r         式4.9.1

ここで、
N: 回転数(min-1)

C: 定数で、鋳鉄,鋳鋼,銅合金で、おおよそ1800~2500、アルミニウム合金で、おおよそ3000~3500になります。

r: 鋳造品の半径 (m)  

です。.

溶湯にかかる遠心量の度合いは、一般に遠心力による加速度を重力による加速度の倍数で表した、Gナンバー(GNO)で表されます。

GNO=Dn^2/179000        式4.9.2

ここで、
D:鋳造品の直径 (m) 

GNO:製品による定数で、
/中空チルドロール;175~200
/大型シリンダライナで50~70
/鋳鋼管は50~65
/鋳鉄管は砂型で65~75、金型で30~50

横型遠心鋳造では、鋳造された溶湯が十分な加速度状態に到達しないと雨降り状に落下する、レイニング現象が起きます。溶湯への遠心力の作用は密度差の影響を生じ、密度の大きい構成成分は外側に、密度が小さい成分、ガス、非金属介在物は内側に偏析する傾向があります。ガスや介在物の内側への偏析は鋳物の清浄化に効果があります。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図4.9.1  遠心鋳造法                        機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。