2.2 分割面,天地

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2.2 分割面,天地

鋳物を作製するときは、必ず模型(pattern)が必要となります。正確で品質の高い鋳物を製作するには、模型が単なる形状のみを模すのではなく、鋳型造型に対して、いろいろな要素を考慮して設計を行わなければなりません。そのためには、設計者により与えられた機械設計図面を解読して、適正な鋳造方案を設定してから鋳物図を作成して模型設計を行うことが重要です。

複雑な形状の製品の模型は、いくつかの部品に分割して製作して、組立てて一つの模型にして造型します。鋳型の造型作業では、模型を取出すために鋳型を上型と下型の二つに分割する、みきり面(線)(parting plane,parting line)を定める必要があります。模型の分割面も、みきり面(線)に、一致させます。
みきり面は、なるべく平面とします。模型の分割面もできる限り少ないほうが造型作業は容易になります。

図2.2.1は、スライドバルブのバルブ本体ですが、形状を変更して、横込めにすることにより分割面を2か所から1か所に減らした事例です。    ・・・(他の分割面削減事例を探す)

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図2.2.2は、製品形状の一部を設計変更して、分割面を平面にした事例です。分割面を平面にすることで、型合わせの際の食違いが少なくなるので、分割面に発生するバリは薄くなり、バリ取りが容易になります。

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ただし、分割面を減らす目的で、模型を縦型から横型に変更する場合、仕上面や強度を必要とする重要な面は、下面側が望ましいので、どちらを下型にするか天地を考慮する必要があります。また、機械加工部の欠陥防止を優先すると、ガス抜きが不十分となる形状では、鋳物品全体にピンホールが生じる場合がありますので、天地の決め方は、製品の特性を考慮して決定する必要があります。

また,中子を用いる場合は、中子が安定するように天地を選ぶことや、中子からガスが容易に上へ抜けるように
することも考慮する必要があります。
図2.2.3は、造型作業性よりも、孔内面でのガス欠陥の発生を防止することを優先して天地を決定した例を示します。

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参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図2.2.1  分割面の数を減らした例               機械工学便覧 第6版 β03-02章
図2.2.2  分割面を平面にした例                機械工学便覧 第6版 β03-02章
図2.2.3  作業性よりガス抜きを優先して天地を決めた例   機械工学便覧 第6版 β03-02章

2016/11/3
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。