3.1 鋳造用模型概論

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3.1 鋳造用模型概論

鋳造品の鋳型を造型するときに使用する型を模型(pattern)といいます。古くは(といっても、30~40年前くらいまでは)模型を木材で製作することがほとんどだったので、模型は木型(wood pattern)と呼ばれてきました。現在は、特に量産型としては、金属や樹脂が多く用いられるようになり、木型では無く模型と呼ぶべきと考えます。
鋳物は模型をもとにして製作されるので、鋳造加工にとって模型の役割は非常に大きいです。

模型を製作する際は、一つの模型から作られる鋳物の製作個数や、形状などとその鋳物工場における造型法によって、模型の材料や種類を決めなければなりません。模型は、材質が木材か金属、樹枝など、その種類により価格が大きく変化します。また、鋳造方案を十分考慮した、加工精度の高い模型ほどその価格は高くなりますが、加工精度の高い鋳型を用いると、鋳型の造型が容易な場合が多いので、造型費が低減されます。
したがって、模型の製作費用は、鋳物1個当たりの価格について考えるべきです。鋳物の製作個数が多数であれば、製品1個当たりの模型費はごくわずかとなり、模型の製作に費用をかけても、1個当たりの鋳物の価格への影響は小さくなります。

模型を製作する際は、抜けこう配(pattern draft)や、加工時の仕上げしろ、縮みしろ、分割位置、天地などを考慮しなければなりません(2.鋳造品の設計で既述)。

模型の製作時、特に木型の製作時に、設計図を見て収縮量を加算して寸法を出すのは面倒ですので、あらかじめ寸法を何%か大きく作った物差しを用います。この物差しを鋳物尺、または伸尺といいます。鋳物の材質、寸法、場所などによって違った伸尺を用います。伸尺は通常は、鋳鉄用が8/1000~10/1000、アルミニウム合金用が10/1000~12/1000といわれていますが、各鋳造メーカによりノウハウになっているものが多いです。

分割位置とは、模型が鋳型から抜きやすいように模型を分割する位置をいいます。分割位置も、みきり部といいますが、みきり部となる鋳物外周の線をみきり線といいます。また、鋳型の分割面の外周もみきり線といいます。
分割面については、みきり面ということもあります。

天地とは、模型を上下に分割したときに、上型を天,下型を地と呼びます。加工面など重要な面を下型に配置したり、中子の安定と中子のガスが上側に抜けるように、模型の上型、下型を決めることをいいます。

鋳物の角や隅部が鋭角になっていると、材質的に欠陥が生じやすいので、この部分に丸みをつけます。これを面取り(fillet)といいます。

鋳物はその冷却過程において、場所、場所により冷却速度に差異が生じ、また鋳物形状により、後から冷却する側に引張応力が生じ、反りが発生します。その反り量を予想して、あらかじめ模型を逆に反らして製作する場合があります。これを逆反りしろといいます。
図3.1.1に示すように、肉厚の異なる形状の鋳物では、A部の肉厚が厚いので、A部の方がB部より後から冷却します。そのため、破線に示すような反りが発生します。反りの量は、鋳物の形状や、肉厚、鋳造方法などによって異なりますので、各鋳造メーカの経験に基づいて決定されますが、一般には1mあたり2~3mmが適当とされています。

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図3.1.2に示す形状のものは、A 部の外周側より内周側のほうが遅れて冷却するので、破線のように変形します。この変形を防ぐために、模型にB 部のように捨て骨を取付けることがあります。この捨て骨は、製品に関係ないもので、鋳造後は切り取られます。鋳物の変形を防ぐため、あるいは湯回りをよくするために余分に骨を付けることを捨て骨といいます。

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参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図3.1.1  肉厚の不同によって生じる反り         機械工学便覧 第6版 β03-02章
図3.1.2  変形防止用の捨て骨            機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/3
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。