3.3 模型用材料material of pattern

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3.3 模型用材料

模型用材料には、木材、金属、樹脂などがあります。その選定は、鋳物の設計、製造する個数と造型方法によって決まります。

1. 木型(wood pattern)

木材は加工が容易で軽く、取扱いに便利です。また、金属製模型に比べて安価に製作できるので、模型製作に広く用いられます。
木型を作る場合は、鋳物の製作個数、大きさ、形状、木材の価格を考えて適当な材質を選定しなければなりません。一般的に使用される木材は、ヒメコマツ、ヒノキ、スギ、ホオ、マホガニー、チークなどです。
ヒメコマツは、材質の硬軟の程度もよく、細工もしやすいので広く用いられています。ヒノキは、肌目が緻密で硬さも適度であり、加工性もよく、伸縮が少ないので重要な模型に使用されますが、材料が高価です。スギは、精密な細工には不適当ですが、安価で加工が容易なため、大物木型に用いられます。ホオは均等な組織をもち、木肌が緻密で、刃物の切れがよく細部を刻みだすような場合に使用されます。マホガニーとチークは、材質が緻密で強度もあります。肌目はやや粗いですが、加工も比較的容易で狂いも少ないので、精密なものや鋳物の製作個数が多いものに使用されます。しかし、マホガニー、チークとも高価です。
木材は、水分を多量に含むので使用する前に十分乾燥して、木取りの方法、組合せ方にも注意して、木目を交互にして寸法の狂いを少なくします。また、木型は大気の湿度によって伸び縮みを生じ、鋳物の精度に影響を及ぼすので、生砂型に使用する木型は、ラッカなどの防湿樹脂塗料を塗ります。これは外部からの防湿性を高め、木型の変形を避けるとともに、耐摩耗性の向上と、鋳型から模型を抜きやすくする目的で行います。しかし、自硬性鋳型では、造型中に熱が発生するので、木型に塗料は塗らずに使用することが多いです。

2. 金型(metallic pattern)

金型は、模型製作費が高価になるので、主として多量生産の場合に使用されます。
金型の長所は、
1) 寸法精度の高い鋳物が得られる。
2) 変形あるいは破損が少ない
3) 耐摩耗性に優れている
4) 長期保管しても変形しない
5) 鋳物の鋳肌がきれいである

一方、短所は、
1) 製作費が高い
2) 製作期間が長い
3) 重いので、取扱い上注意が必要
などがあげられます。

金型の材料には、鋳鉄、アルミニウム合金、銅合金などが使用されています。

(1) 鋳鉄

鋳鉄は、鋳造性、加工性に優れており、また強さ、耐摩耗性があり、比較的安価なので、金型製作に最も多く用いられています。鋳鉄の材質としては、一般にねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄が使用されます。
鋳鉄製の金型の使用例としては、パターンプレート、およびシェルモールド用金型などがあります。
近年、造型機は高圧造型方式となり、造型能力が向上し、さらに生産性を高めるため大型化しています。鋳鉄は、これに耐える強さと耐摩耗性を有していますので、パターンプレートとして最適な材料といえます。
シェルモールド用金型は,573~673K に加熱して造型するので、耐熱性が必要であり、加熱による膨張とひずみが少なく、熱容量が大きく、耐摩耗性も要求されます。また、生産性を高めるため、これまで分割して組合わせてシェル中子を一体化するなど、大型化の傾向にあり、強固な構造であることが望まれます。
耐摩耗性、加工性、および価格の条件を満足する材質としてFC 200~FC 300のねずみ鋳鉄が使用されるが、金型を長期間繰返して使用する場合は、耐熱性に優れ、成長が少ない球状黒鉛鋳鉄が用いられます。

(2) 銅合金

銅合金は、大気中での腐食が少なく、仕上面をきれいに保つことができ、造型しやすく、金型の長期保存にも耐えることができます。銅は熱伝導率が高いので、シェル金型の突出した薄肉形状部への熱の伝達を容易にするために銅合金が用いられることがあります。銅合金の材質としては黄銅、青銅が使用されますが、適用例は、鋳鉄と比較して少ないです。

(3) アルミニウム合金

アルミニウム合金は、鋳鉄、銅合金に比べて、密度が小さく、溶解温度が低く、鋳造性がよく、また加工性が良好です。したがって、造型作業者が手で扱うマッチプレートの材質としては最適です。アルミニウム合金としては、一般にアルミニウム合金鋳物2種が使用されます。

(4) 石こう(gypsum)

石こうは、水と混練して凝固硬化す
るまでに時間があり、その間は可塑性を有しているので、美術鋳物などの現型の製作や、引き型、かき型などを用いて石こう模型を作ることができます。

3. 樹脂型・光造形法

(1)合成樹脂

合成樹脂は、エポキシ樹脂が最も使用されています。その特性としては、
1) 降下時の収縮が少ない。したがって寸法精度の高い模型が得られます。
2) 機械的性質が優れています。
3) 耐摩耗性がよい。
4) 金属との接着性に優れる。
などが、あげられます。

また、鉄粉、アルミニウム粉などを混入することにより硬さが増加します。ガラス繊維を積層することで衝撃に強くなります。
最近は、エポキシ樹脂で作られた化学樹脂木材が使用されています。これは切削性が良好で、粘りがあるため、切削時の欠け折れがなく、寸法安定性が良好なので、NC(numerical control)工作機械で加工して模型が製作されます。

(2)光造形法(stereolithography)

光造形法は、図3.3.1に示すように露光方式により、光ビーム走査による露光とフォトマスクによる露光の二つがあります。

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図3.3.1(a)の光ビームによる露光方式は、点露光ですので、模型の容積が大きくなれば製作時間が長くなります。いわゆる、3Dプリンターです。これは三次元CAD(computer aided design)データをもとに、模型の高さ方向に等間隔の水平面で切断した二次元スライスデータを作り,このスライスデータに沿ってレーザ光を走査して、光硬化性樹脂を固化させ、この固化した薄い樹脂片を積層して模型を作る方法です。この方法は、複雑な形状の模型を迅速、かつ容易に製作することが可能になります。特に量産しないものは模型をデータとして保存でき、模型そのものを保存しておく必要がないので、利用が拡大しています。
図3.3.1(b)のフォトマスクによる露光方式は、面露光します。これはあらかじめ製作しておいたフォトマスクを介して紫外線を露光するので、大きな面積を短時間で固化できます。銘板やマンホールのふたのように凸部厚さが一定の模型を製作する場合に適した方法です。しかし、模型の断面形状が変化する場合は、これに対応した数のフォトマスクを用意しなければならないので、保管場所等の問題が発生します。
製作した模型を従来の模型の代わりとして使用する場合、樹脂模型を鋳型から抜き取る方法と樹脂模型をセラミックシェル鋳型、または石こう鋳型に埋没させて、これを加熱して樹脂模型を消失させる方法とがあります。
光硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂などがあります。これに光重合開始剤、増感剤、安定剤などが添加されています。

(3)シート積層法(sheet lamination method)

シート積層法は、光造形法と同様に模型の二次元スライスデータをもとに、接着剤付きロール紙を1層ごとに圧着して、レーザ光などで輪郭を切断して紙で積層模型を作ります。シートには吸湿性があり、そのまま放置すると膨潤して、変形や寸法拡大が生じるので、造型後はすみやかにラッカ塗布などの防湿処理を行う必要があります。
この模型の材質は、木質と似ており、加工や修正が容易で滑らかな表面仕上げができるので、鋳造用模型として使用され始めています。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図3.3.1  走査法とフォトマスク法           機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/4
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。