3.4 消失模型

3.4 消失模型(evaporative pattern)

模型を鋳型内で消滅させて、鋳型から抜き取らずに鋳造する方法があります。鋳型を模型から抜き取らないので鋳型を分割する必要がありません。したがって、バリ分割面に発生する、バリがない鋳物が得られます。これに使用する模型が消失模型で、再使用をすることはできません。

1. 発泡ポリスチレン樹脂

発泡ポリスチレン樹脂はいわゆる発泡スチロールのことです。これを消失模型鋳造法(evaporative pattern casting)の模型に使用します。消失模型鋳造法は、ロストフォーム法(lost foam process)、フルモールド法(full mold process)ともいいます。
消失模型鋳造法は中子を有する鋳物に適用範囲が広がっており、エンジンのシリンダヘッドやマニホルドなどの模型が本法で製作されています。
単品大物鋳物を製作するときは、発泡ポリスチレン樹脂ブロックを切削して、必要に応じてこれを接着して組立て、模型が作られます。近年、模型を三次元数値データに変換し、これをNC 工作機械に送り、発泡ポリスチレン樹脂ブロックを迅速に加工して消失模型鋳造法用の模型が作られています。
一方、量産小物品の場合は、金型内でポリスチレン樹脂を発泡させて製作します。発泡倍率によっても多少異なるが、成形後に経時変化を示し、日数がたつにつれて収縮します。成形直後は約2/1000、7日後は約6/1000収縮があり、その後は緩やかに収縮するので、在庫管理や履歴管理が必要となります。

発泡ポリスチレンは、ベンゼンとエチレンとの合成反応によってポリスチレンを生成し、これに発泡剤、添加剤を配合して、ポリスチレンビーズを製造し、これを成形発泡させて作られます。この成形工程は大きく分けて2段階を経ます。まず、予備発泡工程で原料ビーズを目的の倍率、密度まで蒸気で膨張させます。次に、この予備発泡した粒子を、金型に充てんし、同じく蒸気を利用して、ビーズどうしを融着させ目的の形状に成形する工程となります。発泡倍率は鋳鉄用が50~60倍、アルミニウム合金用が40~50倍にしています。
発泡ポリスチレン樹脂は、低い応力であっても変形してしまうので、模型表面に塗型をして使用します。この鋳造法では、塗型が鋳型であり、砂はバックアップにすぎません。したがって、塗型には強度、通気性などが要求されます。
最近は、ポリスチレン樹脂以外の材料として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を使った発泡体が研究されています。

2. ろう模型(wax pattern)

ろう模型は、インベストメント鋳造法(investment casting)、ロストワックス法(lost wax process)に用いられています。ろう模型には、パラフィンワックスや、カルナウバワックス、ビーズワックス(みつろう)にロジン(松脂)などの添加物を加えて、軟化点を高めた成形性のよいを使用します。
溶融したろうを、金型に射出してせきの付いた模型を作り、これを加熱したへらなどで湯口棒に複数取付けてつけて、ツリー状に組立て一つの鋳型にします。これにより、一つの模型で多数の製品が得られるようにしています。
ろう模型の条件としては、
(1) 軟化点が高いこと
(2)収縮や変形が少ないこと
(3)型離れがよいこと
(4)灰分が少ないこと
などが必要です。

3. 水溶性模型

水溶性ユリア樹脂は、ろう模型の代わりに、ロストワックス鋳造法に用いることができます。水溶性ユリア樹脂模型は、粉末のユリア樹脂を溶融点以下(393K)で金型に射出するため、収縮量はほとんど零に近く、したがって金型からの離型が容易で、模型の寸法精度がよく、変形を生じることがありません。射出サイクルは、ろう模型の半分以下と速いので、生産性を高めることができます。ろう模型と比較すると、強度が高いので運搬、取扱い、貯蔵も容易です。
ろう模型で、ロストワックス鋳造法を適用する場合は、セラミックシェル鋳型を形成した後、加熱してろう模型を溶出させる必要がありますが、ろうが膨張するため、シェル鋳型を破壊する場合があります。しかし、水溶性ユリア樹脂模型は単に室温の水につけておくだけで樹脂が水に溶出して、シェル鋳型を傷めることなく模型を消失できる利点があります。

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参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/4
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。