4.1 砂型鋳造法(sand mold casting process)

4.1 砂型鋳造法(sand mold casting process)

 

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砂型は、最も基本的な鋳型になります。砂型は、すべての金属の鋳造に適用され、鋳鉄、鋳鋼、銅合金鋳物の場合、ほとんど砂型鋳造法になります。
鋳型原料の鋳物砂は、ケイ砂を主とした砂粒に粘土鉱物、粘結剤、添加剤に水を混合したもので、成形性を持ちます。鋳型は、次の条件を満たす必要があります。
(1)適度な強さ、硬さ、通気度をもつこと
(2)適当な熱伝導性をもつこと
(3)溶融金属に対して十分な耐熱性を持ち、焼き付かないこと
(4)鋳造・凝固後の型ばらしの段階では、良好な崩壊性をもつこと
(5)反復使用が可能で、安価であること
(6)作業環境を悪くせず、公害源とならないこと(大分改善されてはいますが、今でも大きな問題です)

砂型は、粘結剤の種類、造型方法によって分類されます。砂型の種類には、普通鋳型として生砂型があります。特殊鋳型としては、無機自硬性鋳型(水ガラス系、セメント系)、有機自硬性鋳型(フラン系、ウレタン系、フェノール系)、熱硬化型(シェルモールドなど)、およびガス硬化鋳型(コールドボックスなど)があります。その他、減圧造型鋳型、消失模型鋳型などがあります。
図4.1.1に、鋳型・鋳造方案の各部の名称を示します。

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1.生砂型(green sand mold)

生砂型は、ケイ砂などの骨材(80~95%)とベントナイトなどの粘結剤(10~20%)、および少量のコークス粉などの添加剤に、水を加えて混練して可塑性を与え、模型がセットされた鋳型枠内に投入して、手動、あるいはスリンガ、ジョルト、スクイーズなどの機械的手段で圧力を加えて成形し、上型、下型を製作します。次に、模型を抜いて中子をセットし、上下の型を合わせて鋳型を完成させます。
生砂型は造型後、すぐに鋳造できます。製作範囲は広く、小さい鋳物から数百kg の鋳物まで鋳造可能です。
鋳物砂は、繰返し使用でき、鋳型材料費が最も安価で経済的な鋳造法です。砂は、ケイ砂のほか、ジルコン砂、オリビン砂、クロマイト砂、シャモット砂、マグネシア砂などが用いられます。

粘結剤の粘土は、微細な粒子の集合体で水分を含むと粘着性と塑性を示します。添加剤は、造型性、型ばらし性を向上させるためのもので、石炭粉、ピッチ粉、コークス粉などの炭素質、コーンスターチなどのでん粉質、木炭などの繊維質のものなどを使用します。これらの鋳型材料が、混練機で混合され、圧縮強さ、流動性、通気度の高い鋳型砂が得られます。

図4.1.2に、手造型の手順の一例を示します。

図4.1.2 手造型の手順   出典: http://elgalyAAST.4shared.com

図4.1.3に、生砂型の機械造型の手順の一例を示します。

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図4.1.3 生砂型の機械造型工程  出典:機械工学便覧6th ed.

 

2.無機自硬性鋳型(inorganic self-curing mold)

自硬性鋳型は、造型後常温に放置するだけで粘結剤の化学反応により硬化する鋳型です。
水ガラス系自硬性鋳型(炭酸ガス型,CO2型)は、ケイ砂にケイ酸ナトリウムを粘結剤として3~6%添加し、型込めした後、CO2ガスを砂型内へ吹き込んで、ケイ酸ナトリウムをゲル化させて鋳型を硬化させます。CO2型は崩壊性が悪い欠点があるため、硬化剤としてカルシウム金属酸化物、ケイフッ化ナトリウム、リン酸塩、無水硫酸ばん土なども利用されています。
セメント系自硬性鋳型は、粘結剤としてポルトランドセメント、超速硬セメントが用いられます。これらをケイ砂に混合して、無水鉱物の水和反応で硬化させる鋳型です。

 

3.有機自硬性鋳型(organic self-curing mold)

有機粘結剤を含むケイ砂を用いて造型し、常温で有機粘結剤と酸性あるいは塩基性触媒の硬化剤または常温硬化樹脂と化学反応を起こさせて自然硬化させます。鋳型砂には流動性があり、突固めが不要です。有機粘結剤として、常温硬化性のフラン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、常温ガス硬化性のポリイソシアネート樹脂、フルフリルアルコール樹脂が用いられます。

 

4.熱硬化性シェル砂鋳型(シェルモールド,shell mold)

熱硬化性樹脂粘結剤(10~15%)をケイ砂の表面に薄く被覆したレジンコーテッドサンドを、250~300℃に加熱した金型模型上に落下、あるいは吹き込むと、鋳型砂のレジンが軟化して型表面に密着した後に硬化して、強固で寸法精度が高い鋳型を形成します。鋳型が薄い貝殻状であるのでシェル型と呼ばれます。鋳物型に使われますが、中子に適しています。小型・薄肉用中子として生産性、保存性が高いです。ただし、造型、鋳造時の加熱でにおいのあるガスが発生するので、作業環境に注意する必要があります。
図4.1.4に、シェルモールド法の手順を示します。

図4.1.4シェルモールド法の手順  出典: Casting Engineering MTE 435 Internet教材

 

5.有機系コールドボックス法(cold box process)

鋳型シェル鋳型の熱硬化法とは異なり、ガスを吹き込んで硬化させる方法です。
吹込みガスが、トリエチルアミンの場合はイソキュア法、SO2ガスの場合はハードックス法といいます。硬化速度が速く、造型サイクルが短くて済みます。常温での触媒反応による硬化のため、寸法精度はシェル砂型よりも良好です。一方,ガスは、有害性のため、排ガス処理が必要です。

 

6.Vプロセス法(vacuum sealed molding process,減圧造型鋳型)

鋳枠中の粘結剤を含まない、乾燥した鋳型砂をプラスチックフィルムで覆い、砂中を減圧し空気を吸引、排出して形状を保持する鋳型で、日本で開発された造型法です。
図4.1.3に、V プロセス減圧造型工程を示します。

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図4.1.5 Vプロセスによる造型手順   出典:機械工学便覧6th ed.

(1)フィルム吸着用小穴をあけた模型を定盤上に設置し、その上に加熱した熱可塑性プラスチックフィルムを密着被覆します。

(2)鋳枠中に鋳型砂を充てんした後、鋳型砂上面を別のフィルムで覆い、鋳枠内を吸引して造型します。

(3)模型側の吸引を解除すると、模型を覆っていたフィルムは鋳型砂側に吸着されます。この状態で鋳型を上昇させて模型を離型します。上型と下型を同様に製作します。

(4)上、下型を合わせて鋳型が完成されます。鋳型の減圧は鋳造中も維持されます。凝固後の型ばらしは、鋳枠の減圧を解除することで外力無しで容易にできます。鋳型砂は回収され、冷却後再利用されます。フィルム吸着時の大気との圧力差は約0.05MPaです。フィルムは厚さ0.03~0.3mm で、熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合体のフィルムが用いられます。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図4.1.1 鋳型各部の名称    出典:機械工学便覧 第6版 β03-02章
図4.1.2  手造型の手順   出典: http://elgalyAAST.4shared.com

図4.1.3 生砂型の機械造型工程  出典:機械工学便覧 第6版 β03-02章
図4.1.4 シェルモールド法の手順  出典: Casting Engineering MTE 435 Internet教材

図4.1.5 V プロセスの造型工程  出典:機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

ADD:2023/09/09
ORG:2016/11/4
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。