4.10 鋳造に関連した複合加工法(complex casting)

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4.10 鋳造に関連した複合加工法

1. 複合材料鋳造(composite material casting)

(1)自動車の軽量化のために、アルミニウム合金鋳造品が多く用いられていますが、アルミニウムの剛性、耐熱性、耐摩耗性の弱点をカバーするために、セラミックスあるいは高融点金属を強化材として必要な部位を複合化させて鋳造することが行われています。
ディーゼルエンジン用のピストンに複合材料を適用して鋳造する例を図4.10.1に示します。アルミニウム合金ピストン金型内のピストンリング溝やクラウン部にアルミナや炭化ケイ素セラミックウィスカプリフォーム(体積率20~30%)をセットして、鋳造後約40~100MPaの高圧力で、スクイーズキャスティング鋳造法を用いて溶湯を加圧浸透させて複合化させます。

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(2)通常、エンジンブロックには鋳鉄製のシリンダライナが鋳ぐるみされています。これを、セラミックスのファイバと粒子のライナプリフォームを、またシリンダボア部にセラミックファイバプリフォームをセットして、ダイカスト鋳造法を用いて溶湯を浸透させて一体複合化鋳造するエンジンブロックが製造されています。

(3)溶融アルミニウム合金とぬれ性がよい金属多孔・繊維成形体のチタニア粒子集合体でプリフォームを作製し、1MPa以下の低い空気圧を用いた気体加圧鋳造方式による複合化鋳造が最近開発されました(図4.10.2)。
基本的には重力鋳造の鋳造方案をベースに、ガスベントを配置したもので、鋳造後加圧室に圧縮空気を導入して、リング溝部に配置した強化材に溶湯を加圧含浸させます。加圧力が小さいので型締力が低くて済み、崩壊性中子や分割金型中子が適用できます。

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(4)SiC あるいはAl2O3粒子(径が数µm から20 µm)を10~20%含有した、鋳造用アルミニウム合金地金が開発され、砂型および金型を用いた重力鋳造が行われています。これにより、ブレーキロータなどの耐摩耗性と耐熱性が優れた複雑形状の鋳物全体の複合化が可能になりました。

2. その他

(1)鋳ぐるみ(insert)も複合化鋳造の一種です。重力金型鋳造、低圧鋳造、ダイカスト鋳造法を用いて、鋳鉄ライナをアルミニウム合金で鋳くるんだシリンダブロックが一般に製造されています。耐食性、耐摩耗性が要求される部位にそれらの特性に優れた材料を鋳くるんで複合化し、高機能化が図られています。

(2)遠心鋳造により、圧延用複合中実ロールが複合化鋳造されています。耐摩耗性、耐クラック性をもつ材質の金属材料を遠心鋳造して管状外殻層を製作し、引き続いて靱性がある金属材料を管の中空部に鋳造して充てんした中実ロールが製造されています。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図4.10.1  スクイーズキャスティングを利用した複合材料ピストンの製造
   機械工学便覧 第6版 β03-02章
図4.10.2  気体加圧複合化鋳造法              機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。