4.11 半凝固鋳造・半溶融鋳造(semi-solid metal casting)

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4.11 半凝固鋳造・半溶融鋳造(semi-solid metal casting)

合金溶湯とその固相粒が混合状態にある固相-液相スラリーをスクイーズキャスティング法やダイカスト法などの鋳造機を用いて金型内へ圧入する鋳造法で、アルミニウムおよびマグネシウム合金に適用されています。鋳鉄や銅合金では一部で行われています。

(1) 半凝固鋳造は、溶湯を機械力あるいは電磁気力で、かくはんしながら冷却して晶出する初晶デンドライト結晶を粒状化した、固相率30~50%のスラリーを高圧鋳造機のスリーブ内へ移送して圧入鋳造する方法で、レオキャスティング(rheocasting)、セミソリッドキャスティング(semi-solid casting)などと呼ばれています。

(2) 半溶融鋳造は、半凝固鋳造法で初晶を粒状化したスラリーを、金型鋳造あるいは半連続鋳造してビレットを製造し、その後必要量に切断して、固相率60%程度にまで加熱して、そのスラリーを高圧鋳造機にセットして圧入鋳造する方法です(図4.11.1)。半溶融鋳造は、半溶融成形、セミソリッドフォーミング(semi-solid forming)、チクソキャスティング(thixocasting)、チクソフォーミング(thixoforming)などといわれています。

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日本では、自動車の耐圧部品、足回り部品、ホイール、自転車部品が、実用化されています。

半凝固・半溶融鋳造法の特徴として、
/固相がある程度晶出しているため、凝固収縮量が減少する
/ニアネットシェイプ鋳造ができる
/ごく小さな抜けこう配で鋳抜きが可能である
/凝固潜熱のおよそ2分の1がすでに放出されているので金型の負荷が軽減される
/固相-液相共存状態での流れのため空気の巻込みが少ない
/組織が微細粒状で靱性が優れる

などがあげられます。

プロセス的には半溶融鋳造法のほうが制御しやすいので、世界的にはこの方法が多く使用されています。ただ、半溶融鋳造用ビレットの流通が世界的に限られていることが、難点となっています。

チクソモールディング法は、樹脂の射出成形法と同じように、マグネシウム合金チップをホッパから装てんして金型の湯口へ達するシリンダ内で半溶融状態に加熱し、加圧鋳造します。電機機器部品の鋳造に用いられています。

半凝固鋳造法は、液相からの冷却過程で固相-液相混合状態のスラリーを鋳造成形する方法のため、半溶融鋳造技術と比較すると。コスト的に有利な方法です。最近日本において、二つの半凝固鋳造法が開発され、実用に供されだしています。

1) 高圧鋳造機のスリーブ内に溶湯を注湯し、溶湯の温度を低下させながらスリーブ内の溶湯を電磁かくはんして、球状結晶の固相を生成させ、所定の液相率で半溶融鋳造し高圧下で凝固させる方法で、自動車部品の製造に実用化されています。

2) 過熱度30K 以下の融点より少し上の温度の溶湯を金属容器に静かに注湯し、液相率がおよそ50%の温度までエアブローにより冷却して、セラミック保温と高周波加熱コイルで容器内のスラリーを均一温度にし、その後高圧鋳造機のスリーブ直上で容器を反転して、スラリーをスリーブ内へ装入し、金型内へ圧入充てんする方法です。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図4.11.1  半溶融鋳造法プロセスの概要          機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。