5.1 鋳造品の仕上げ(cleaning)

5.1 鋳造品の仕上げ(cleaning)

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鋳物を鋳造後、製品とする工程では、まず鋳型から鋳物を取出す型ばらし(shake-out)を行います。ついで、型砂および中子砂を取り除き、湯口系、押湯、揚がりなどを切り取って鋳肌を整えるとともに、鋳ばりを除去します。次に、湯道またはせき跡を除去するための研磨を行います。そして、これらの作業後に最終的な検査を行い製品となります。

出来上がった製品に対しては、必要に応じて塗装や表面処理が施されます。これらの作業を能率的に行うには、さまざまな設備、機械器具を利用しなければなりません。
以下に,これらの工程の具体的な内容について、概略を記述します。この部分は、鋳物工場によって、いろいろなレベルがあります。ここで述べるのは、あくまでも一例です。

1. 型ばらし(shake-out)

鋳物を連続的に生産している工場では、図5.1.1に示すように、機械による型ばらしが行われます。

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図5.1.1(a),(b)は、パンチアウトマシンと呼ばれるもので、鋳物を上方または下方へ押出して鋳枠(flask)から分離します。
図5.1.1(c)は、枠なし鋳型をシェイクアウトマシンに押出す方法、図5.1.1 (d)は、鋳物を鋳型から直接取出す方法を示しています。
図5.1.2は、回転ドラム内に鋳型を落下させて、鋳物と鋳物砂を分離し、さらに水スプレーにより冷却する装置です。

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複雑な中子あるいは、数多くの中子を使用している場合は、別な方法が検討されなければなりません。

2. 砂落とし(sand strip)

鋳物に付着している鋳型砂を除去する工程です。中子砂または鋳肌に接した砂、鋳物の隅部の砂は大部分が除去できず、鋳物に付着したままです。そのため、これらの砂を完全に除去する必要があります。
このために、一般的には3mm 以下の鋼粒(shot)または鋼線を短くしたワイヤ(グリット:grit)などを、高速回転する羽根により、製品に投射して砂を除去します。この方法をショットブラスト法といいます。ショットやグリットを投射するときの製品の挿入方法によって、図5.1.3~図5.1.5に示した方法に分けられます。

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また、図5.1.6は、連続式のショットブラストの例で,前工程から砂落とし工程まで連続化、無人化できる設備です。このほかにも、いろいろな形式のショットブラスト装置が開発されています。

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なお、大型製品を対象とするブラスト法としては、高圧水を鋳物表面にブラストパイプから噴射するハイドロブラスト法がります。この方法は、粉じんの発生が抑えられますので、作業環境が改善されます。この方法は、水力による清掃を行うため、高圧水の水圧が高いほど、除去効率は上がります。

3. 湯口切り(sprue shearing)

せき折り、型ばらしをした鋳物には、まだ製品には不必要な湯口系、押湯、揚がりのようなものが残存しています。これらは、砂落とし前に除去する場合と砂落とし後に除去する場合とがあります。

比較的大きな湯口やせきがついた製品では、次の三つの方法で除去されます。

(1) 破断による方法

1)ハンマの衝撃によって破断する一般的な方法
2)プレスによる方法
3)製品との間に工具を差し込み、これを油圧で押し広げて破断する方法

などがあります。
図5.1.7は、3)の破断用工具の一例です。

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また、図5.1.8のように、大工場では、ロボットを使用して破断する方法も行われています。

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(2)切断による方法

板状の砥石を付けたグラインダを人手、もしくはロボット、マニピュレータに持たせて切断する方法や、図5.1.8に示すようなロボットに製品を持たせて、製品をグラインダに押し付けて切断する方法などがあります。

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(3)溶断による方法

断面積が大きいなど、簡単に破断できない場合は、ガスで溶断します。ガス切断で最も一般的な酸素-アセチレンガスによる方法、アークと酸素を組合わせてアークを飛ばしながら酸素を流す方法、あるいは火炎に鉄粉を添加し、鉄粉の酸化熱を利用する方法(テルミット法)などがあります。

(4)バリ取り(fettling,deburring)

この工程は、製品に付随する不要な部分の除去と、外観上問題になるような部分の手直し工程で、これらを総称してバリ取りといいます。
この工程に使用される器具は、砥石を電気あるいは圧縮空気の力で回転させるグラインダが、一般的です。その使用方法は大別して、グラインダを固定しておき製品を動かす方法と、逆に製品を固定してグラインダを移動させる方法とがあります。
このほか、プレスの圧力を利用してバリを取るプレス式は、バリ取り機も小さくて数の多い製品に適用されます。

一方、量産品を対象として、テーブルに送り込まれた製品が装置内で自動的に工具や反転機などを経て、搬出コンベヤから完成されて出てくる完全自動化した専用機が使用されています。
また、押湯切断および、切断面仕上げ、バリ取りをするロボットも開発されています。

(5)塗装・表面処理(coating,surface treatment)

砂落としや不要物が除去された後、必要に応じて塗装が行われます。この塗装には、次の機械加工の工程前に、一時的に錆の発生を避けるための塗装と、本格的な塗装があります。
本格的な塗装の表面処理としては、エポキシ樹脂等による樹脂塗装、亜鉛やクロムなどによる金属めっき、化学的な表面処理、ほうろう掛けなどがあります。
樹脂塗装は、下水道管や化粧マンホールに適用されています。また、伝統工芸品の中には、黒色あるいは茶色などを主体にした漆によって塗装されているものもあります。
鋳鋼品や、鋳鉄、アルミニウム、ダイカストなどの生産工程が全自動化される中で、仕上工程は量産工場で、一部の工程にロボットが導入されて自動化されている以外は、自動化が遅れています。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
図5.1.1  鋳型からの鋳物の取出し方法          機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.2  クーリングドラム                   機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.3  テーブル式ショットブラスト             機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.4  エプロン式ショットブラスト             機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.5  ハンガ式ショットブラスト              機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.6  連続式ショットブラスト               機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.7  破断道具の例                    機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.8  ロボットによる破断作業の例           機械工学便覧 第6版 β03-02章
図5.1.9  ロボットによる切断作業の例           機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。