6.5 鋳造による複合材料(complex material by casting)

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6.5 鋳造による複合材料(complex material by casting)

複合材料とは、機械的特性、熱膨張係数、熱伝導率、耐摩耗性などの特性向上を目的として、金属マトリックスに繊維状あるいは粒子状の強化材を分散させた材料をいいます。これまでに多くの実用材料が開発されてきていますが、その用途は限定されているため一般的な複合材料の規格はありません。
/金属基複合材料用語(JIS H 7006:1991)
/金属基複合材料の繊維体積含有率試験方法(JIS H 7402:1993)
/繊維強化金属中の短繊維のアスペクト比試験方法(JIS H 7402:1993)
/繊維強化金属の繊維配向度試験方法(JIS H 7403:1993)
/線膨張係数の試験方法(JIS H 7404:1993)
/引張試験方法(JIS H 7405:1993)
/曲げ試験方法(JIS H 7406:1993)
/圧縮試験方法(JIS H 7407:1995)
/疲れ試験方法(JIS H 7408:1994)
などが、規定されています。

(1)金属基複合材料(metal matrix composite)

金属基複合材料は、マトリックスに添加する強化材の形態で分類されます。
繊維強化金属、一方向繊維強化金属、ウィスカ強化金属、粒子強化金属などがあります。
粒子強化金属の材料特性は、ほぼ等方的ですが、繊維強化金属では繊維配向が強くなるほど異方性が強くなります(当然)。このため、繊維強化金属を強度部品に使用する場合には、製品設計において負荷応力の方向と繊維配向方向に留意する必要があります。
複合材料に添加される強化材としては、炭素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの長繊維や、アルミナやアルミナシリカなどの短繊維、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムなどのウィスカ、セラミックス、金属間化合物、金属などの粒子が用いられます。

(2)鋳造による複合材料の製造プロセス

鋳造による複合材料の製造プロセスは、仮成形された強化材のプリフォームにマトリックスの溶融金属を浸透させる溶融金属浸透法と、溶融あるいは半溶融金属に強化材を添加するコンポキャスティング法に大別されます。さらに、溶融金属浸透法は、プリフォームに溶融金属を加圧浸透させる加圧浸透法と、毛管現象や反応による濡れなどを利用して溶融金属をプリフォームに浸透させる無加圧浸透法とがあります。
加圧浸透法は、高圧鋳造法、気体加圧法、溶湯鍛造法などにより、溶湯を低速で注入・射出・加圧し健全な複合材料を比較的容易に製造することができます。
コンポキャスティング法は、強化材を添加した溶湯をそのまま鋳込むことにより複合材料部品が製造できるため、低コストな複合材料製造プロセスとして検討されています。

なお、鋳造プロセスによって複合材を製造する場合には、マトリックス-強化材界面反応により生成した反応層あるいは、反応に伴って強化材表層に形成した凹凸が原因となり強度低下を引き起こすことがあります。

(3)複合材料の適用事例

複合材料の適用事例としては、耐摩耗効果を目的としたアルミニウム基複合材料のシリンダブロックやピストンへの適用、SiC 粒子分散複合材のディスクブレーキへの適用、表面処理アルミナボリアウィスカ強化複合材料の直噴ディーゼルエンジン用ピストン上面の燃焼室リップ部への適用などがあげられます。
なお、アルミニウム合金ダイカスト自動車用シリンダブロックへの鋳鉄ライナの鋳ぐるみ、工作機械しゅう動部鋼部材への鋳鉄鋳ぐるみなどは、鋳造プロセス特有の複合化プロセスとして従来から行われてきました。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/6
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。