7.2 溶解設備(cupola and furnace)

7.2 溶解設備(cupola and furnace)

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金属の溶解設備には連続式とバッチ式があります。
連続式は、コークス(乾留石炭)を用いるキュポラがあります(50年くらい前に、筆者の住宅の近所に小規模な鋳造工場がありました。細長いキュポラの先端が工場の屋根から突き出ていたのを覚えています。まだ、公害問題がそれほど身近でなかった時代です。)。
バッチ式は、電気炉やガス炉があります。これらの場合も、溶湯の一部使用により、半連続溶解が行われています。

(1)キュポラ(cupola)

鋳鉄溶解用の円筒形の炉で、小型の溶鉱炉ともいえます。上方からコークス、地金、石灰石を投入して、下方の羽口から空気を吹き込んでコークスを燃焼させ地金を溶解し、溶湯は出湯口から取出します。
鋳鉄は1200℃程度で溶解するが、注湯時の温度低下を考え、また高温溶解の方が品質のよい溶湯を得ることから1450~1500℃の溶湯を得られるように、コークス量や風量を選択します。
キュポラの上方から排出されるガスの温度は400~800℃くらいで、COガスを10%以上含有しているので、このガスを燃焼させ熱交換器によってキュポラに送る空気を予熱する方法をとることで(熱風キュポラ)、コークス使用量の低下、出湯温度の上昇を図ることができます。しかし、熱風を用いると炉内温度が高くなり炉壁の寿命が
低下するので、外壁に水を流して冷却する方式(熱風・水冷キュポラ)がとられます。

一方,排ガス中には粉じん・ばい煙が大量に含まれていて、これを除去するために集じん装置を設けます。排ガスの温度は高いのでバグフィルタに直接導入することを避けて、途中に冷却塔を設け、排ガス温度を低下させてから処理します。

(2)低周波誘導電気炉(low frequency induction furnace)

炉体のまわりに誘導コイルが巻いてあり、それに電流を流すことによって、炉内の溶解金属中に誘導電流を生じさせ、発生するジュール熱によって溶解する炉です。構造は、
るつぼ型炉と溝型炉とがあります。コイルに流す電流は、商用周波数、3倍周波数が用いられます。
1)るつぼ型の炉体のまわりには水冷銅管があり、その外側に磁束の漏えい防止と耐火物の膨張を抑えるための継鉄があり、これらが型鋼のフレームに収納されています。溶解の始めには地金を塊にしたスターティングブロックを炉内に入れてコイルに通電します。誘導電流により地金の温度が上昇し溶解してから、通常の地金を挿入して溶解量を増加させます。溶湯を所定の温度に上げてとりべにとり鋳型に注湯します。連続して溶解する場合には、溶湯の3分の1から2分の1を残して、次の地金を挿入して溶かすようにします。このほうが、電気量が少なくて済み、省エネルギーになります。炉の容量は1回に保持しうる量で示します。大型では30~40t のものがあります。
2)溝型炉は、溝状の湯だまり部のまわりにコイルおよび鉄心があります。コイルに電流を流すと溝内の溶湯がジュール熱によって加熱され炉内を循環します。るつぼ型炉より構造が複雑で溝が狭いため、地金を挿入するには適していません。したがって、溶湯を最初から入れ、保温・昇温するのに適しています。熱効率はこのほうが優れています。非鉄金属や鋳鉄の溶解・保温に用いられます。

(3)高周波誘導電気炉(high frequency induction furnace)

原理的には、誘導コイルを使用しており低周波誘導電気炉と同様ですが、電流は500Hz 以上の高周波数を使用します。
高温にすることが可能で、鋼の溶解も容易にできます。溶解温度には短時間(30~150min)で達し、溶湯のかくはんも自然に行われるため他の元素を加える場合に、特にかくはんする必要がありません。
しかし、スラグを浮かしたい場合に溶湯を静止することができないので、不都合な場合もあります。
通常、炉の容量は2~3t 程度です。

(4)アーク炉(arc furnace)

電気アークの発生熱によって金属を溶解する炉で、鋼や銅合金の溶解に用いられます。
エルー式電気アーク炉は銅の溶解に多く用いられます。
耐火物がマグネシアの塩基性アーク炉、ケイ砂の酸性アーク炉があります。塩基性炉では鋼中のリンや硫
黄などの酸性物質の除去が可能ですが、酸性炉では不可能であるため、酸性炉は高級スクラップを使用する場合に用いらます。日本は、塩基性炉の使用が多いです。

(5)るつぼ炉(crucible furnace)

るつぼ炉は、るつぼの中に地金を入れ、重油・ガスバーナなどで溶解する炉です。るつぼが炉に固定されているもののほか、るつぼを燃焼室内に入れて溶解を行い取出して用いるものもあります。
銅合金や軽合金の溶解に用い、るつぼのふたをかぶせて燃焼ガスが溶湯に触れないようにします。
るつぼは、鉄に耐火ライニングを施したものや黒鉛製のものを用います。
鋳鉄用には、横型の回転式のものも用いられます。

(6)注湯設備

通常は、溶解炉から、とりべに小分けして、鋳型に注湯するが、高熱作業であるため、ある程度の規模の工場では自動化されています。大容量のものでは、加熱保温装置を備えたものもあります。

 

 

参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

2016/11/6
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。