3.1 矯正加工     monozukuri

3.1 矯正加工(leveling, straightening, shape correction)

 

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1.矯正加工とは

矯正加工は、一次加工と二次加工の中間的な工程です。一次加工の最終寸法や形状を決定する重要な工程で、かつ二次加工の最終製品寸法や形状を決定する、非常に重要な工程になります。近年、形状に関する要求の厳格化や、矯正が困難な高強度材の増加、外観上現れない内部残留応力低減への要求など、矯正加工への要求が高まっています(図3.1.1)。

図1 矯正加工の目的

 

 

2.矯正加工の目的と方法

矯正作業は、通常板材の場合は平坦度向上、棒材であれば真直度向上を目的としています。それらを達成する手段として、多くの場合繰返し曲げを取り入れた矯正法が採用されています。

矯正対象となる素材は、円形断面の棒材であれば、引抜きや押出し成形中に生じた、軸対象でない応力分布やひずみ分布により曲がりを生じます。また板材であれば、圧延により生じた板幅方向・板厚方向における不均一な応力分布・ひずみ分布により形状不良を生じます。

例えば、板材の形状不良に原因としては以下のようにいろいろな要因が考えられます。

◎板幅方向形状不良要因
・左右ロール間隙の設定不良
・ロールの曲がり
・扁平変形/ロールクラウン(含むヒートクラウン)/板材のクラウン
・板材幅方向の張力分布/材料特性分布

◎板厚方向形状不良要因
・板厚方向の材料特性の非対称
・上下ロールの幾何学的非対称
・ロールと材料間の潤滑条件・摩擦条件の非対称

矯正加工はこれらの要因により生じた曲がりや形状不良を改善するために行われます。

板や棒、管、条、形材などの素材の曲がりや形状不良を、表3.1.2 に示す、(1)曲げ戻し、(2)拡管、(3)引張りの基本を繰り返して材料を変形させたり、これらを組み合わせて変形させることにより実施されます。

表3.1.2 矯正加工の分類と矯正原理

図3.1.3 は、これらの矯正方法を実施する矯正機を示します。

 

(1)矯正プレス(gag press)

成形時の曲がりを除く専用機です。主に、比較的少量の厚手鋼板や、大型管材、形材に用いられます。
曲げ戻し量の調整は容易でが能率は低いです。

図3.1.3 (a) 矯正プレス

 

(2)ローラレベラ(roller leneler)

圧延後の板材の反り修正に用いられます。繰返し漸減曲げ(曲率を徐々に小さくする)により、反りの修正と同時に残留応力の低減が図れます。形材でもロール形状は異なりますが同じ原理で矯正します。

図3.1.3 (b) ローラレベラ

 

(3)テンションレベラ(tension leveler)

比較的薄いコイル材を対象とします。張力を与えた状態で繰返し曲げを加えて、板材に塑性伸び(0.1~0.3%程度)を与えて、縁伸びや中伸びなどの三次元形状不良を矯正します。

図3.1.3 (c) テンションレベラ

 

(4)ロータリストレートナ(rotary straightener)

棒材や、線材、管材の矯正に用います。材量を回転送りする方式が主流ですが、矯正工具を回転させて材料を引抜き通過させる方式もあります。
なお、大型の管材の場合は拡管方式が採用されます。

図3.1.3 (d) ロータリストレートナ

 

(5)ストレッチャ(stretcher)

定尺の板材や形材に引張り力を付加して矯正します。生産性はあまりよくありません。

図3.1.3 (e) ストレッチャ

 

(6)ワイヤ・ストレートナ(wier straightner)

棒材や線材に広く適用されます。被矯正材にその長手方向に直交する各方向からの繰返し曲げ変形を加えて、或いはそれに付加して長手方向の伸び変形を加えて、横断面内に偏って分布している長手方向のひずみと応力の偏りを減少させて、均一度を高めて真直度の向上と残留応力の低減を図る矯正法です。

図3.1.3 (f) ワイヤ・ストレートナ

また、材料の形状別に矯正の目的と方法についての分類を図3.1.4 に示します、

図3.1.4 矯正の目的と方法による分類

 

3.矯正加工の材料特性への影響

(1)ストレッチャストレインの防止

低炭素鋼板のプレス成形では、ストレッチャストレインと言われる降伏点伸びに起因するひずみ模様の防止が重要です。スキンパス圧延と並び、ローラレベラによる矯正が実施されます。

(2)成形性への影響

矯正加工は変形量が比較的小さいので、機械試験地の変化も大きくありません。一般的に、降伏点や引張り強さは上昇傾向になる一方、伸びやr値、n値は低下傾向になります。このことから、矯正加工が成形性への有利性は認められません。

(3)ばね限界値

ばね材として使用される高強度鋼線は、矯正によりばね限界値は低下傾向にあるので注意が必要です。

 

 

4.矯正加工と寸法変化

基本的に矯正加工での変形量は小さいので、寸法変化も小さいです。しかし高い寸法精度が要求される場合は注意が必要です。
例えば、長尺材をローラレベラで矯正した場合の長さの変化(矯正条件により伸縮のどちらも考えられます)や、同じく長尺材をテンションレベラで矯正した場合の幅方向の縮み、棒材をロータリストレートナで矯正した場合の直径変化(矯正条件により、大きくなる場合も小さくなる場合もどちらも考えられます)などが、事例としてあります。

 

 

5.矯正加工の応用

矯正機使用の目的は材料のひずみ取りに使われるのですが、材料に所定の曲率を与える手段としても用いられます。
また、スケール落としの酸洗処理の代替、或いは酸洗処理の補助としてメカニカルデスケーラとして活用されます。
さらに、薄板の曲げ引張りにより発生する幅方向の反りを薄肉管の成形の前処理に用いられます。

 

 


 

まとめ

・矯正加工は、一次加工と二次加工の中間的な工程です。一次加工の最終寸法や形状を決定する重要な工程で、かつ二次加工の最終製品寸法や形状を決定する、非常に重要な工程になります。

・矯正加工は、形状精度の厳密化や内部残留応力低減への要求などの効果が期待されています。

・矯正加工は、(1)曲げ戻し、(2)拡管、(3)引張りの基本とし、繰り返して材料を変形させたり、これらを組み合わせて変形させることにより実施されます。

・矯正加工は、変形量が小さいですが、近年の最終製品の精度要求が高まっており、注意が必要です。

・矯正加工機は、曲げ加工機やスケール除去など、本来の役割を超えて使用されることがあります。

 

 

 

 

お勧め文献
矯正加工- 板・棒・線・形・管材矯正の基礎と応用 – (新塑性加工技術シリーズ 11)

 

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参考文献
機械工学便覧 6th ed   β03-04章  日本機械学会
矯正技術に関する基礎理論   荒木甚一郎  生産研究 Vol.25 No.10 1973年
棒・線材の矯正技術   木内学  生産研究 Vol.48 No.4  1996年
板形状矯正設備の最前線   阿部敬三  第129回塑性加工講座  H25年
オーセンテック株式会社様HP  https://authentec.jp/products/sheetleveler.html

 

引用図表
Icon ARKU社製フラットマスター(ローラレベラ)
図1 矯正加工の目的   参考:矯正技術に関する基礎理論
表3.1.2 矯正加工の分類と矯正原理   機械工学便覧 6th ed β03-04章
図3.1.3 (a) 矯正プレス   機械工学便覧 6th ed β03-04章
図3.1.3 (b) ローラレベラ   機械工学便覧 6th ed β03-04章
図3.1.3 (c) テンションレベラ   機械工学便覧 6th ed β03-04章
図3.1.3 (d) ロータリストレートナ   棒・線材の矯正技術
図3.1.3 (e) ストレッチャ   板形状矯正設備の最前線
図3.1.3 (f) ワイヤ・ストレートナ   棒・線材の矯正技術
図3.1.4 矯正の目的と方法による分類   矯正技術に関する基礎理論

 

ORG:2021/09/17