6.1 鉄鋳物

6.1 鉄鋳物(iron casting)

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鉄鋳物は、鋳鉄鋳物と鋳鋼鋳物に大別されます。鋳鉄はオーステナイト中の炭素の固溶限2.14wt%以上の炭素と黒鉛化のための1~3wt%のケイ素を含むものをいいます。鋳鋼は固溶限以下の炭素と他の合金元素を含むものとされています。表6.1.1に鉄系鋳物のJIS 規格とその機械的性質を示します。

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■鋳鉄

鋳鉄は、晶出黒鉛の大きさや、形状、基地組織の調整により、さまざまな性質を得ることができます。ねずみ鋳鉄(gray cast iron,FC 100~FC 350)は、片状黒鉛とパーライト基地からなり、減衰能や、耐摩耗性、被削性、耐熱衝撃性、耐食性に優れています。ねずみ鋳鉄のうち引張強さが300N/mm2以上のものは強靱鋳鉄と分類されます。また、金型などで急冷して、表面部にセメンタイトの晶出した白鋳鉄とし、内部は黒鉛を晶出させた鋳鉄はチル鋳物と呼ばれます。

■球状黒鉛鋳鉄

球状黒鉛鋳鉄(spheroidal graphite cast iron,FCD 350-22~FCD 800-2)は、マグネシウム(Mg) の添加により、黒鉛を球状化するとともに、焼なまし処理あるいは、焼ならし、低温焼戻し処理により、基地組織をフェライトとパーライトの共存組織あるいは、微細パーライトまたは焼戻しマルテンサイト組織とすることによって、強度を高めたものです。
さらに、基地を恒温変態によりベイナイト化し、高強度化したものは、オーステンパ球状黒鉛鋳鉄(austempered spheroidal graphite cast iron,FCDA 900-4~FCDA 1400-1)で呼ばれます。

■合金鋳鉄

鋳鉄に5%以下の合金元素を加えたものを低合金鋳鉄、さらに合金元素を添加して、耐食性、耐熱性、低熱膨張性などを高めたものを高合金鋳鉄と呼びます。
低合金鋳鉄には、パーライト系基地で耐摩耗性や耐熱性の高いクロム系鋳鉄、マルテンサイト(ベイナイト)系基地で強度、耐摩耗性の高いニッケル系鋳鉄(ニハード鋳鉄,アシキュラ鋳鉄)などがあります。
高合金鋳鉄には、レーデブライト系基地で耐熱性、耐摩耗性に優れた高クロム鋳鉄、Niを12wt%以上含みオーステナイト基地で耐熱性や耐食性に優れたオーステナイト鋳鉄(austenitic cast iron,FCA-NiMn 137~FCA-Ni35,FCDANiMn137~FCDA-NiSiCr3552)、Siの多量添加によりフェライト基地をもち、耐食性、耐酸化性を著しく高めたフェライト系鋳鉄などがあります。

■可鍛鋳鉄

可鍛鋳鉄(malleable cast iron)は、白鋳鉄を熱処理によって脱炭あるいは黒鉛化させ、延性を向上さ
せた鋳鉄です。脱炭により破面が白い白心可鍛鋳鉄(FCMW 35-04~FCMW 45-07)と、黒鉛化により破面が黒い黒心可鍛鋳鉄(FCMB 27-05~FCMB 35-10)、耐摩耗性と強度に優れたパーライト可鍛鋳鉄(FCMP 45-
06~FCMP 70-02)がJIS 規格に規定されています。可鍛鋳鉄は熱処理に多大な時間を要しますので、現在では、球状黒鉛鋳鉄にその用途のほとんどが移行しています。

■鋳鋼

鋳鋼(steel castings)鋳物は、用途が多様であり、耐摩耗性、耐食性、耐熱性、低温靱性などの要求特性に応じたさまざまな鋼種の鋳造品が製造されています。
鋳鋼は,大きくは、炭素鋼鋳鋼、低合金鋳鋼、ステンレス鋳鋼、耐熱鋳鋼、高マンガン鋳鋼などの高合金鋳鋼に分類されていますが、その合金設計や組織、特性は圧延材などと共通します。

主として鉄鋳物に要求される特性と材質例を、表6.1.2に示します。

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参考文献
機械工学便覧 第6版 β03-02章

引用図表
表6.1.1  鉄鋳物の規格と機械的性質   機械工学便覧 第6版 β03-02章
表6.1.2  鋳造品の特性と材質例     機械工学便覧 第6版 β03-02章

 

REV:2018/1/11(部分修正)
2016/11/5
本稿(初稿)は、筆者の興味と復習を兼ねているため、参考文献からの引用が主たるものになっています。第2稿ではより内容を絞り、かつより広範囲なデータに基づく記述を企図しております。