4.3 ビッカース硬さ

4.3 ビッカース硬さ(Vickers hardness HV)

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1. ビッカース硬さとは

ビッカース硬さは、1925年にイギリスの技術者、スミス氏とスタンドランド氏により考案され、最初は研究用に使用されましたが、その後一般に広く用いられるようになりました。
対面角が136°のダイヤモンド正四角錘の圧子を用います。試料の試験面に永久くぼみをつけたときの試験力F(N)を、永久くぼみの対角線長さから求めた表面積で除した値をビッカース硬さと定義します。SI単位の場合は、常数を掛けて求めます。ビッカース硬さは、ブリネル硬さと同様、応力と同じ次元を持っていますが、単位は付けないで表されます。

試験方法はJIS Z2244-1「ビッカース硬さ試験-第一部 試験方法」に、試験機はJIS B7725「ビッカース硬さ試験-試験機の検証及び校正」に規定されています。

 

2. ビッカース硬さの定義

ビッカース硬さは、対面角136°のダイヤモンド正四角錘の圧子を、所定の試験荷重F(N)で、試料の試験面に押し付けてできた永久くぼみの表面積S(mm)から、以下の計算式で求められます。ただし、単位は付きません。

Vickers hardness01

図4.3.1 ビッカース硬さの定義

 

\( HV = \displaystyle\frac{ F }{ S }\frac{ [kgf] }{ [mm^2] } = 0.102 \displaystyle\frac{ F }{ S }\frac{ [N] }{ [mm^2] } \)

\( S = \displaystyle\frac{ d^2 }{ 2 \sin ( \alpha /2 ) } \approx 0.5393 d^2 \)

\( HV \approx  1.8544 \displaystyle\frac{ F }{ d^2 }\frac{ [kgf] }{ [mm^2] }  \approx 0.1891 \displaystyle\frac{ F }{ d^2 }\frac{ [N] }{ [mm^2] } \)

ここで
\( F \):試験力(N)
\( S \):圧子により付けられた永久くぼみの表面積(mm)
\( d \):永久くぼみの対角線長さの平均値(mm)
\( d_{ 1 } , d_{ 2 } \):永久くぼみの対角線長さ(mm)
\( \alpha \):正四角錘圧子の対面角;136°

加圧保持時間は規定の試験力に到達してから\( 10~15s \)に規定されています。

また、ビッカース硬さの表示は、次の例に示すように表示されます。

 

3. ビッカース硬さの試験力

ビッカース硬さは、試験力の範囲により3つに分類されます。

表4.3.2 ビッカース硬さの試験力

 

4. ビッカース硬さの特徴

ブリネル硬さは、圧子が球形なので試験力が大きくなるにつれて、硬さは放物線上に増加するのに対して、ビッカース硬さでは均質な材料に対しては試験力の大小とは無関係に一定の硬さで求めることができます。すなわち、押し込み深さが異なってもくぼみは常次相似形になります。

従って、硬い材料から軟らかい材料まで一つの尺度で硬さ試験ができ、軟らかい材料には軽試験力で、硬い材料に対しては高試験力で試験しても、かたさは同じ尺度で求められます。

 

5. ブリネル硬さとの比較

ビッカース硬さは、ブリネル硬さとできるだけ一致させたいとの考えから、ブリネル硬さ試験のd/D(d;くぼみの直径/D;球圧子の直径)の平均値0.375に相当する円の接線間の角度とほぼ同じ136°の対面角を持つ四角錘圧子を採用しています。HBが比較的低い範囲では、おおむねビッカース硬さはブリネル硬さの5~6%増の値になります(表4.3.3)。

(注記:ブリネル硬さのd/D=0.375 の位置の接線角度は137°になります。)

表4.3.3 ブッカース硬さとブリネル硬さとの比較

 

 


 

まとめ

・ビッカース硬さは、押し込み硬さに分類されます。
・同じ圧子(対面角136°のダイヤモンド正四角錘)を用いて、試験力を変えることにより、いろいろな表面状態のいろいろな材料の硬さを測定できます。
・ブリネル硬さと、原理は同じですがより幅広く硬さを測定することができます。

 

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硬さ入門INDEX

4.硬さの測定方法
 4.1ブリネル硬さ
 4.2ロックウェル硬さ
 4.3ビッカース硬さ
 4.4ショア硬さ
 4.5その他の測定方法
  (1)ヌープ硬さ
  (2)スクラッチ硬さ
  (3)モース硬さ
  (4)やすり硬さ
  (5)鉛筆硬度

 

 

参考文献
材料試験硬さの系統化調査   国立科学博物館技術の径乙化調査報告 第14集

 

引用図表
図4.3.1 ビッカース硬さの定義   ORG
表4.3.2 ビッカース硬さの試験力   参考;JISZ2244
表4.3.3 ブッカース硬さとブリネル硬さとの比較   ORG

 

REV:2021/06/27; 全面書き換え