がん進行・転移に関与する「エクソソーム」

がん進行・転移に関与する「エクソソーム」

[概要]
がん治療の最大の障壁である進行や転移に、細胞が放出するマイクロカプセル「エクソソーム」が密接にかかわっていることが明らかになってきました。その役割は、がん細胞が作る情報物質を他の細胞に運び、増殖や転移につながる反応を引き起こしています。最近、エクソソームについての研究が国内の機関で続々発表されています。

エクソソームは脂質の膜でできた、直径50~100nm(ナノメートル)の微小なカプセルで、多くのがん細胞が放出します。

[がんの血管新生への関与の解明]
東京医科大学の大屋敷純子教授らは、がん細胞が栄養を確保するために周囲に新たな血管を作る「血管新生」という現象に、エクソソームが関与していることを、動物実験で突き止めました。

多発性骨髄腫は、進行すると骨髄の中で酸素不足に陥るが、がんは増殖します。このがん細胞を実際と同じ低酸素状態で培養したところ、普通に培養した場合に比較して2倍のエクソソームを放出しました。

このエクソソームをマウスに、皮下注射したところ、注射をした部分で血管新生が進行することが確認できました。エクソソームの中に入っている、遺伝情報物質のRNAの小さな破片「マイクロRNA」が血管内側の細胞に作用して、血管新生を促進していることがわかりました。

がん細胞は、低酸素状態になると必要な酸素を得るためにエクソソームを放出して、血管新生を促進していると考えられています。

他のがんにも、同様な仕組みがあると考えられています。

[乳がんの脳転移促進を発見]
国立がん研究センター研究所の、落合孝弘・分子細胞治療研究分野長は、エクソソームが入がんの転移にかかわっていることを明らかにしました。

脳の血管は、通常互いにしっかりとつながって壁を作り、ウィルスや異物が脳内に侵入するのを防いでいます。落合研究分野長は、このバリアーを模した細胞の壁を作り、転移した乳がん細胞を加えて変化を調べた結果、乳がん細胞が放出するエクソソームに入ってるマイクロRNAが、細胞の間に隙間を作り、バリアーの機能を失わせることがわかりました。
エクソソームがバリアーを破壊し、そこからがん細胞が脳内に入り込んで転移するものと考えられます。
乳がん患者の血中のエクソソームを調べることで、脳転移の早期発見が期待できます。また、エクソソームの働きを抑えることで、転移を抑制できる可能性が有ります。

[その他のエクソソームに関する研究]
1.国立精神・神経医療建久センターの永井義隆室長らは、エクソソームが神経疾患のポリグルタミン病の発症を抑制していることを突き止めました。
ポリグルタミン病は、異常なたんぱく質が凝集して新駅細胞を死滅させる難病です。研究チームは、神経細胞が凝集を防ぐ因子をエクソソームに入れて、神経細胞同士で互いにやり取りして、集団としてタンパク質の凝集を防いでいることを見出しました。ポリグルタミン病では、この仕組みが何らかの理由で破たんした結果、発症につながっている可能性があります。

2.大阪府立大学は抗がん剤をエクソソームにいれて腫瘍に運ぶシステムの開発を進めています。

3.神戸大学は、関節リウマチの治療に役立つマイクロRNAを、エクソソームを使って患部に送り込む研究に取り組んでいます。

[エクソソームとは]
エクソソームは、1980年代から存在は知られていました。しかし、当時は単に細胞内で不要になった物質を細胞外に運び出す役割を持つ物質と考えられていました。2000年代後半に、遺伝情報物質やたんぱく質を、他の細胞に渡す、いわば「情報の運び役」となっていることが、米国のグループなどによって突き止められ、一気に研究が加速しました。
がん細胞だけでなく、正常な細胞も出しており、色々な病気に関与していることがわかっています。

引用元:日本経済新聞 2105/6/8

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