2.3 超音波流量計

2.3 超音波流量計

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■原理
超音波流量計の原理は、伝播時間差式とドップラー式の2つに大別されます。現在製品化されてる超音波流量計は、伝播時間差式が中心ですので、この項では伝播時間差式の原理について説明します。

◆伝播時間差式の計測原理
伝播時間差式は、流れている管路中の流体に、管路と斜めに横切って超音波を伝播させます。流体中を進む超音波は、流れに沿った方向では早く伝わり、流れに逆らう方向では遅く伝わります。この2つの超音波の伝播時間の差を流量に換算するのが、伝播時間差式の測定原理です。

図2.3.1に超音波流量計の構成を示します。管路と斜めに交差する線(測線)上に送信と受信を行う検波器(送受波器といいます)を設置して、流れに対して順次方向と逆方向に交C互に超音波パルスを入射して、そのパルスを受波するまでの時間を測定します。この図のように管路の外側に送受波器を取り付ける構造をクランプオン形と呼びます。

図2.3.1_超音波流量計の構成

本図に基づいて、測定原理を説明します。

流体中の音速をC、測線と管路軸とのなす角度をθ、管内を超音波が伝播する距離をL、管路軸方向の流速をひとまず一様流と考えVとすると、
順方向の超音波の速度は、C1

逆方向の超音波の速度は、C2
となるので、
順方向の伝播時間は、 td

逆方向の伝播時間は、 tu

となります。ここで、τは管路の壁面やライニング材、変換器と接続するケーブルなどを通過する時間です。この2つの伝播時間の差を取ります。

2つの伝播時間の差を⊿tとおくと、流速Vが音速Cに対して十分小さいこと(C≫V)を考慮すると、

V_2.3.1     (2.3.1)
式(2.3.1)より、CLθがわかっていると、伝播時間⊿tから流速Vが求められます。式(2.3.1)では、音速Cのみが温度によって変化する量で、温度が変化すると測定に影響を与えます。温度を同時に測定して、音速を求めるには流体固有のデータが必要なので、汎用的に販売される計測器では制度を保証するのが難しい場合が多くなります。

Cの影響をキャンセルするために、順方向、逆方向の2つの伝播時間の平均を考えます。これは、流体が静止している場合の伝播時間toになります。

to_2.3.2      (2.3.2)

これを、式(2.3.1)に代入して、音速Cを消去すると

V_2.3.3     (2.3.3)

とあらわされます。この式では全て固定された量なので、流体の温度変化から生じる音速の変化の影響を取り除くことができます。

以上は、管内の流れが一様な場合ですが、実際の流れの流速分布は、層流にしても乱流にしても、中心付近は早く、壁面近傍は遅くなります。

測線を横切る微視的な流束を考えます。それぞれの流束の管軸方向の速さをv1,v2,・・・,vnとして、それぞれの流速で生じる時間差を⊿t1,⊿t2,・・・,⊿tnとすると、微小測線の長さはL/nとなりますので、それぞれの時間差は

delta_t1

delta_t22

・・・・・・

delta_tnn

測線全体の伝播時間⊿tmは、これらの式を加えたものになります。

delta_tm_2.3.4     (2.3.4)

測線の平均流速は、1/n*Σiviに相当します。

この伝播時間⊿tmを式(2.3.3)に摘要すると、

Vm_2.3.5     (2.3.5)
このVmを測線流束といいます。このVmは測線上の平均流速ですので、管路全体の平均流速Vbarを表すものではありません。

実用上は、測線流束Vmと平均流速Vbarとの比をk(流量補正係数)を使用して流量を求めます。

すなわち、流量Qは管内径Dとすると、

k=Vm/Vbar

無題2        (2.3.6)

流量補正係数kは管内の流速分布によって値が変わるのでRe数を用いて値を求めます。何れも上流側の直管長さをが十分にある発達した流れに対して実験的に求めた補正式で、いくつ以下の種類があります。ここでは、よく使用されるヒルゲルの式を示します。

k_coeficient      (3×103≦Re≦5×106

但し、上流側配管の直管長が十分にとれず、エルボなどの曲がりの影響が残る場合は、この補正式でも補正しきれないことは明らかです。また測線上の平均流速しか測定できないのも超音波流量計鵜の欠点です。

また、送受波器の取付け方法により、既設配管に取り付けることができるクランプオンタイプと、メーカが製作した測定管に送受波器を取り付けて一体型にした接液タイプ(スリーブタイプ)とがあります。接液タイプの方が精度は高いが、メーカによる正規の取付け条件での保証精度で、上流の直管長が十分にとれない場合は、表示通りの制度を得るのは困難です。

対象となる流体は、液体がほとんどです。気体の場合は、管材と気体との音響インピーダンスが4~5桁の違いがあるため、ほとんど接液タイプ(スリーブタイプ)に限られます。

■特徴
ここでは、一番多く実用化されている伝播時間差方式でクランプオンタイプについて考えます。
◆長所
(1)管の外側に送受波器を設置できるので、既設配管に設置可能です。
(2)圧力損失がありません。
(3)流体に接触しないで流量が測定できます。このため腐食性ガスを多く使用する半導体プロセスに数多く適用されています。但し半導体プロセスの場合はクランプオン構造ではなく、送受波器を、コの字状の樹脂管の端面に対抗して配置されることが多いです。
(4)光景が大きくなるほど、比較的安価に設置可能となります。
(5)レンジアビリティが大きくとれます。
(6)正逆の流量の測定が可能です。

◆短所
(1)流速分布(旋回流、偏流、二次流れなど)の影響を受けやすい。従って十分に長い直管長が要求されます。直管長が短いなど設置条件が不完全な場合は、校正時の精度が得られません。
(2)流体中に気泡が混入すると、超音波が散乱するので測定ができません。
(3)流体中に固形物が多く含まれると、超音波が透過しないので測定ができません。」
(4)管路壁に汚れが付着すると超音波の経路や伝播時間に影響して、正確な測定ができません。
(5)気体の場合、既設配管への設置が難しい。

 


関連項目

2.1 差圧式流量計
2.2 電磁流量計
2.3 超音波流量計
2.4 容積流量計
2.5 面積流量計
2.6 タービン流量計
2.7 熱式質量流量計
2.8 コリオリ流量計
2.9 渦流量計
2.10 せきによる開水路流量計