2.7 熱式質量流量計

2.7 熱式質量流量計(Thermal flowmeter)

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熱式質量流量計は、管路を流れる流体を上流側で加熱して、その熱を流体が吸収して運ぶ熱量から、質量流量を測定します。
流体が運ぶ熱量は、流体の定圧比熱、温度上昇、管路を流れる質量流量に比例します。

1.原理

熱式質量流量計には、いくつかの種類が考案されていますが、一番多くみられるキャピラリ式について見てみましょう。
この形式の流量計は、図2.7.1に示すように、質量流量の測定を行うセンサ管路と、センサ回路を通過する流量に比例する形で、抵抗体を挿入されたバイパス部からなっています。バイパス部に挿入される抵抗体はラミナーフローエレメントと呼ばれます。センサ回路とバイパス部との全体として必要な流量が得られるようになっています。

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1.1 センサ管路

センサ管路には、内径 0.2~0.3mmの細管のまわりに、中央に流体の加熱のためにヒータを置き、その前後に温度計測のための一対のコイルが置かれています。この一対のコイルはブリッジ回路の一部を形成しています。

流れが無いときには、両側の温度が等しくなります。流れが発生すると、ヒータからの熱量が下流側に移動するので、下流側の温度は上流側の温度より高くなります。流体の低圧比熱などの特性を与えると、温度差から質量流量が求められます。この方法を温度差測定法といいます。

一方、機器の構成は同じで、流れの上流、下流の温度差が一定になるように、ヒータへの消費電力を調整して、その消費電力から質量流量を求める方法もあります。これを消費電力測定法といいます。流体が流れることによって生じる温度分布の対称性の崩れからセンサ部を流れる流量を求めます。

また、ヒータをセンサーが兼ねる形式もあります(図2.7.2 (c),(d))。

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1.2 バイパス部

バイパス部に設置されている、ラミナーフローエレメントは、バイパス部の流れをセンサ管路の流量に比例させ、かつ層流状態で通過させるために設置されています(図2.7.3)。ラミナーフローエレメントは、微細な流路を形成するために、薄板を積層させたものが多く使用されます。薄板の積総枚数によってセンサ回路とバイパス部との分流比を、流量計への通過流量範囲に基づいて設定します。

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2.質量流量の算出

質量流量qmは、センサ間の温度差⊿Tから求められます。

qm=CDT/Cp     (式2.7.1)

ここで、

C: センサ部分とバイパス部との分流比率などの流量計に依存した補正係数で、校正により決められます。

気体の定圧比熱Cpを含むために、気体の種類によって質量流量qmは異なります。測定精度は、校正方式によりますが、おおよそ2%程度、再現性は±0.5%程度です。

3. 測定対象

従来の気体用の質量流量の測定では、ボイル・シャルルの法則に基づいた温度・圧力補正が必要であるのに対して、熱式質量流量計では直接質量流量を測定できるので、気体の流量測定に多く用いられています。
一部のは液体の微少流量の測定にも利用されています。

 

4. この他の形式の熱式質量流量計

上記に示す、キャピラリ式の他の形式の熱式質量流量計を見てみましょう。

4.1 熱線式流量計(図2.7.4)

管内に設置された、熱線(ヒータ)と温度センサによって、流量測定を行う方式です。キャピラリ式と比較してリーズナブルなコストのため、適用例が増加しています。
従来は、上流側に整流機構が必要なため、長い直管部が必要であったが、金網やハニカムを使用した整流機構を内蔵して、直管部が不要なものも発表されています。

比較的、高速領域の計測が可能で、圧縮空気や窒素ガスなどの配管口径に対して流速が大きいガスの測定に数多く使用されています。

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4.2 熱電対式

熱電対の温度変化を測定する方式です。サーモパイル式とも呼ばれています。

キャピラリ式の構造で、センサ管路に熱電対を直接挿入して計測する仕組みが多くみられます。比較的高速流、大流領域での測定への適用が主体に多いです。

4.3 フローセンサ式(図2.7.5)

熱式質量流量計では、最も新しい形式です。
センサ部分を、シリコンウエハから形成された半導体式フローセンサとして、微細なエレメントによって構成されています。熱容量が小さいため、、熱式質量流量計の中では、測定範囲は最も広く、従来は不得意とされてきた極低圧ガスの計測が可能です。

原理的に、双方向の流量測定が可能です。また、消費電力が極めて小さく電池駆動も可能な機種もあります。

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関連項目

2.1 差圧式流量計
2.2 電磁流量計
2.3 超音波流量計
2.4 容積流量計
2.5 面積流量計
2.6 タービン流量計
2.7 熱式質量流量計
2.8 コリオリ流量計
2.9 渦流量計
2.10 せきによる開水路流量計

 

 

 

参考文献
流量計ガイド    黒森健一    e-book
株式会社オーバルHP   https://www.oval.co.jp/techinfo/keisoku/netsu.html
アズビル株式会社HP   https://www.compoclub.com/products/knowledge/mf/netu_kiso1.html
Flow Measurement Handbook Roger C. Baker Cambridge University Press 2000年

引用図表
図2.7.1 センサ部の動作    株式会社オーバルHP
図2.7.2 センサ部の形式    Flow Measurement Handbook
図2.7.3 バイパス部の構造   株式会社オーバルHP
図2.7.4 熱線式流量計      アズビル株式会社HP
図2.7.5 フローセンサ式流量計  アズビル株式会社HP

 

 

ORG: 2016/12/3