2.9 渦流量計(vortex flowmeter,)

2.9 渦流量計(vortex flowmeter)

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1.原理

1.1 渦流量計の測定原理

管路内流れの中に、流れを妨げるような形状の障害物を置くと、その下流側に交互に渦が発生します(図2.9.1)。この障害物はbluff body(鈍頭物体)と呼びます。
この現象について、ハンガリー人のカルマンが、下流側(wake:後流)に発生する渦の周波数fと、流速vとの間に次のような関係が成り立つことを示しました。

daum_equation_1480839577089         (式2.9.1)

ここで、

f: 周波数(Hz)

St: ストローハル数 (おおよそRe=2×10^4以上のレイノルズ数の範囲で、ほぼ一定値を取ります)
bluff body の形状により異なります。

v: 流速 (m/sec)

d: 柱状物体の幅 (m)

です。

渦流量計では、この柱状物体のことを渦発生体と呼びます。渦流量計は、発生する渦の周波数を測定し、流速及び管径から流量を求められます。この渦周波数は、液体、気体に関係なく、同じ関係式が成り立ちます。従って、液体や、気体、蒸気の広い範囲の流体に適用できます。

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[図2.9.1]

1.2 渦発生体

渦発生体の断面は、安定な渦が発生するために、渦のはく離点が決まった場所で起こることが必要です。現在では、流れに対してエッジを持つ形状として、四角形や、逆三角形、逆台形の断面が採用されています。
渦発生体の例を、図2.9.2に示します。

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[図2.9.2]

また、渦発生体の幅dは、管路内径Dの0.28倍前後に設定した場合に、ストローハル数が一定になる流量範囲が広く取れます。円管路のため、渦発生体の中央部はほぼ二次元流れに近いですが、渦発生体の上下、管壁付近では、流路が妨げられるので、馬蹄形の渦が生じて、主流の渦列の安定性に影響を与えます。この影響を避けるために、渦発生体の上下の部分に台座を設けるタイプもあります。

1.3 渦検出方式

初期に開発された渦流量計は、渦発生体の下流側に渦列の交番差圧を受ける受圧板を置き、板の中に渦検出センサを組み込む方式が開発されました。渦体とは別に渦検出センサを設けるので2体型といいます。ただ、この構造は受圧板の固有振動数が渦周波数検出の際のノイズ源になる欠点があります(図2.9.3)。

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[図2.9.3]

現在では、渦発生体の中に渦検出センサを埋め込む形式が主流になっています。例として、渦発生体の中に、圧電素子を2重に埋め込んだ構造を、図2.9.4に示します。この構造では、渦発生体の固有の振動モードによるモーメントと、流路中の渦発生体が渦の交番差圧を受けるときに受けるモーメントとを分離するために、圧電素子を2つ配置しています。この方法では、管路の振動の影響を受けないように工夫されています。

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[図2.9.4]

この他、適用は液体の場合に限られますが、渦発生体の下流側に超音波送受波器を装着し、管の外から渦周波数を検出する方式も開発されています。

2. 特徴

2.1 長所

 (1)液体や、気体、蒸気など、広範囲の流体に適用できます。
 (2)流路中には渦発生体のみ設置されるだけで、機械的可動部がありません。
 (3)差圧式流量計と比較すれば、圧力損失が小さいです(約1/4~1/2)。

2.2 短所

 (1)レイノルズ数がある程度以上ないと、カルマン渦列が発生しなかったり、不安定になるため測定ができなくなります。従って、流速が低い、粘性が高い場合の測定は、精度状困難です。
 (2)固形物や気泡が多い流体、スケールが析出する流体は、詰まりの原因となり、測定対象に適しません。
 (3)配管の振動に敏感です。特に、渦周波数を振動センサにより検出するタイプは影響を受けやすいです。
 (4)整流化のために、直管部が必要です。

 


関連項目

2.1 差圧式流量計
2.2 電磁流量計
2.3 超音波流量計
2.4 容積流量計
2.5 面積流量計
2.6 タービン流量計
2.7 熱式質量流量計
2.8 コリオリ流量計
2.9 渦流量計
2.10 せきによる開水路流量計

 

 

参考文献
流量計ガイド    黒森健一    e-book
Flow Measurement Handbook Roger C. Baker Cambridge University Press 2000年
機械工学便覧 第6版    日本機械学会

 

引用図表
図2.9.1  カルマンの渦列      https://umagazinology.jhu.edu/wp-content/uploads/2013/06/es1.jpg
図2.9.2  渦発生体の断面例 Flow Measurement Handbook
図2.9.3 渦流量計の構造   https://www.electromagneticflowmeter.in/vortex+flowmeters.html
図2.9.4 渦発生体に渦検出センサを組み込んだ渦流量計   Flow Measurement Handbook