三菱重工業、ユニキャリア買収。フォークリフト生産に欧州工場を活用
三菱重工業、ユニキャリア買収。フォークリフト生産に欧州工場を活用
概要
三菱重工業グループは、国内4位のフォークリフトメーカ、ユニキャリアホールディングス(HD)を買収することで、同社の株主である産業革新機構などと基本合意しました。買収額は、1,400億円前後とみられています。三菱重工業が約6割、グループのニチユ三菱フォークリフトが約4割の株式を取得する模様です。ニチユ三菱は、ユニキャリアの欧州の工場に生産委託を検討しています。ニチユ三菱とユニキャリアHDの相乗効果を引出し、グローバル需要の取り込みを急いでいます。
三菱重工業グループは、国内4位のフォークリフトメーカ、ユニキャリアホールディングス(HD)を買収することを、2015年7月31日に発表しました。フォークリフトは国内市場の伸びは期待できませんが、世界市場は順調に拡大しており、2014年には販売台数が100万台を突破しました。
世界首位は、豊田自動織機で、今回の買収で三菱重工業が49%出資するニチユ三菱とユニキャリア連合は、第3位になります。ちなみに、第2位は独キオングループです。
ニチユ三菱は、買収後まず生産面での相乗効果を狙います。ユニキャリアHDが所有するスペイン工場は、生産能力が年1万台ですが、2015年度は年4,000台程度の余力があります。ニチユ三菱は、同工場を欧州の生産拠点として活用する方向です。国内では、部品・製造の相互供給などを検討しています。一方、販売面では双方のブランドを維持します。
ユニキャリアHDは、2012年日立建機と日産自動車のフォークリフト事業を傘下に収める形で統合させたものです。官民ファンドの産業革新機構が53%、残りを日立建機と日産自動車が出資しています。買収合戦については、独キオングループも名乗りを上げ、4月の2次入札でニチユ三菱がキオングループの価格をわずかに上回って接戦を制しました。
三菱重工業は、規模追求による利益拡大と、事業縮小や撤退による収益体質の強化を同時進行で進めています(表を参照)。
2015年度に入って、産業用クレーンを住友重機械工業に譲渡しました。その他、トンネル掘削機では、IHI・JFEエンジニアリング連合と事業を統合することで合意しました。このように、収益力の乏しい事業を矢継ぎ早に切り離しを測っています。
その一方で、製鉄機械は、独シーメンス社と合弁会社を設立しました。同合弁会社に51%を出資する三菱重工業子会社の主導でグローバル展開にアクセルを踏んでいます。国内首位の大型冷凍機でも同業の東洋製作所を買収して、世界シェアの拡大に乗り出しています。
今、三菱重工業の戦略は、弱い事業を強くするよりも、M&A (合併・買収)により、世界大手と対等に渡り合える圧倒的な競争力を確保する戦略をとっています。規模拡大により、2017年度の売上高は5兆円超と、2014年度比25%伸ばす計画です。
事業選別により、自己資本利益率(ROE)を、2014年度の6.5%から、2017年度に10.2%に引き上げる計画です。フォークリフトも1,400億円前後の買収額に見合った収益を引き出せるかが問われています。
日本経済新聞 2015/7/31 朝刊