三菱ケミカルホールディングス、化学系3子会社を統合へ
三菱ケミカルホールディングス、化学系3子会社を統合へ
概要
三菱ケミカルホールディングス(HD)は、2015年7月16日に、3017年4月をめどに科学系3子会社を統合する検討に入ったと発表しました。統合対象の3社は、三菱化学と三菱樹脂、三菱レイヨンで、組織や機能の重複をなくします。各社の事業や技術の相乗効果をより発揮しやすくして、高機能素材分野に一段と注力するためです。これは、汎用石油化学の再編と規模拡大を進めてきた小林善光会長(前社長)が進める改革の仕上げになります。
統合の形態は、2015年度中に決める予定ですが、現状では、3社を合併して純粋持ち株会社の三菱ケミカルHDにぶら下げる方法のほか、3社を三菱ケミカルHDが吸収して、事業持ち株会社になる方法が検討されています。3社の2014年度の業績を単純合計すると、売上高約3兆円、営業利益約760億円になります。
三菱ケミカルHDは、2005年10月に設立されました。当初は三菱化学と三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)を傘下に置きました。2007年に三菱樹脂、2010年に三菱レイヨンを完全子会社にしていました。
3社が統合されれば、残る主要子会社は田辺三菱製薬と2014年にTOB(株式公開買い付け)で連結子会社にした大陽日酸、他、生命科学インスティテュート(2014年4月発足)の3社になります。
三菱ケミカルHDは2015年度の連結売上高で前期比9.4%増の4兆円と過去最高の売上高を見込んでいます。
世界の化学会社の2014年の売上高を比較すると、最大手の独BASF社の約10兆円、米ダウ・ケミカル社の約7兆円には及びませんが、米デュポン社とはほぼ肩を並べる水準に拡大しました。ただ、収益力で見ると海外の大手と比較すると見劣りがします。
海外大手の自己資本利益率(ROE)が20%程度に対して、三菱ケミカルHDは2014年度で6%台でした。国内の化学メーカと比較しても、最終利益で売上高が半分程度の住友化学を下回っています。
2015年4月に就任した越智仁社長は、次期中期計画でROE10%台を目標に、収益力強化に取り組みます。
3社の従業員は、合計約4,2000人、間接部門だけで2,000人以上いるとされます。収益力強化へ統合により戦略部門などに配置する人員を増やします。
例えば、リチウムイオン電池の主要部材では三菱化学が電解液と負極材、三菱樹脂がセパレータ(絶縁材)を手掛けています。電池については、両社が共同で営業していますが、会社間の壁は依然残っており、連携が進まない場合もあるとされています。3社の統合で、呼応した問題をなくして機能素材などの戦略分野の拡大を早急に進めようとしています。
三菱ケミカルHDの小林喜光会長は、2014年12月の社長交代会見で、改革の進捗について、「8~9合目まで達したが、一向に収益に寄与しない」と振り返りました。仕上げに必要なものは、収益の源泉となる付加価値の高い製品の拡充です。
小林会長は、2007年の社長就任以来、M&A (合併・買収)を進めつつ、塩化ビニル樹脂など収益が悪化していた汎用品事業からの撤退を進めてきました。2014年には石油基礎原料のエチレンプラント1基を休止しました。旭化成と共同運営する水島コンビナート(岡山県倉敷市)も含めてエチレン生産能力を3~4割減らしてきました。
今後は、自動車や電池などに用いる炭素繊維や高機能樹脂の拡大へ、3社が持つ経営資源をより効率的に活用する考えです。
競合他社には、3社統合で複数の事業会社が手掛けるフィルムなどの競争力向上に警戒感を強めています。一方で、組織がスリムになることで、「三菱ケミカルHDとの事業の提携・再編などがスムーズのに進めやすくなる」(大手化学幹部)との見方もあります。
事業再編は、これまでも持株会社が進めてきましたが、具体的な作業は多種多様な製品を持つ各事業会社と調整をする必要がありました。2社が統合すれば、名実ともに一本化されるので調整の手間が減ると期待されます。
国内化学の再編は一息ついていますが、アジアでの競争激化や原料価格の動向次第では、またいつ動くかは不透明です。最大手である三菱ケミカルHDの子会社統合は、再編の動きを加速する可能性があります。
三菱ケミカルHD_HP
引用元: 日本経済新聞 2017/7/17 朝刊