米ダウ・デュポン統合交渉の舞台裏 2015/12/10
米ダウ・デュポン統合交渉の舞台裏
巨大化学、攻めの再編 … 背後にアクティビスト(物言う株主)
概要
米国、総合化学首位のダウ・ケミカル社と同大手のデュポン社が、経営統合交渉を進めていることが明らかになりました。勝ち残るための「強者連合」を選択した形です。ライバル同士を歩み寄らせた背景には、米国で勢いを増している「物言う株主(アクティビスト)」の存在があります。
速報:2015/12/11、統合を発表。CEOはデュポン社エドワード・ブーリンCEOが就任。
米国ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、近く正式発表となる予定です。統合が実現すれば、化学品売上高で、現在トップの独BASF社を上回る世界最大の化学グループが誕生します。
2014年12月期の売上高純利益率は、ダウ・ケミカル社が6.5%、デュポン社が10%でともに、日本の化学最大手の三菱ケミカルホールディングスの1.6%(2015年3月期)を、大きくしのいでおり、業績不振が原因の統合交渉ではありません。
ダウ・ケミカル社アンドリュー・リバリスCEOは、今年(2015年)に入って、農薬などを展開する「農業化学」部門の分離を探っていたとされています。理由は、穀物価格の低迷や、ドル高で農業化学部門の業績が低迷していたためです。買い手候補として同じ事業部門を持つデュポンの名前が浮上しましたが、デュポン社は自力での展開にこだわったため不調に終わりました。
転機があったの、2015年10月。自前路線にこだわっていたデュポン社の前CEOのエレン・クレマン氏の退任でした。新CEOのエドワード・ブリン氏は、米複合企業タイコ・インターナショナルのトップ時代に、事業分割で会社を再建した実績があります。ブリン氏は「農業事業の再編は必要」と公言しており、ダウ・ケミカル社との接近に時間はかからなかったようです。
装置産業である化学品は、規模のメリットが作用しやすい製品です。汎用品では中国と、自動車用などの高機能素材は欧州勢力との競合が激しくなる中で、農業分野から始まった交渉は全面的な統合に発展した形になります。
この統合の背景には、アクティビスト(物言う株主)の影がちらつきます。かつてソニーに出資したサード・ポイントがダウ・ケミカル社の株主になり、採算の低い汎用品などの事業分離を求められました。一時期は、対立した時期がありましたが、ダウ・ケミカル社はサード・ポイントの推す取締役を受け入れて、事業再編に取り組む姿勢に転じました。
一方、デュポン社でも、別のアクティビストが株主となって、会社を4分割するように要求されました。当時のクレマンCEOは拒否した結果、株価の急落で退任に追い込まれます。代わりに事業再編に積極的なブリーン氏がCEOになり、今回の統合交渉につながりました。
統合の実現には、米当局が再編による寡占化にけわしい姿勢を示す恐れがあるので、ダウ・ケミカル社とデュポン社は統合後に会社の3分割を検討しています。