日立製作所、ミャンマーで変圧器の合弁生産、三菱電機は技術提携
日立製作所、ミャンマーで変圧器の合弁生産、三菱電機は技術提携
概要
日本の電機メーカーが、電力インフラビジネスを拡大します。
ミャンマーで日立製作所は、年内にも現地企業と変圧器の合弁生産を開始します。また、三菱電機は、やはり変圧器メーカーと技術提携を開始しました。
ミャンマーでは、経済成長に伴い電力需要の急増が見込まれており、今後整備が必要となる送配電インフラに欠かせない関連機器の需要増を取り込もうとしています。
ミャンマーでの日系企業の事業展開は現在は縫製や食品加工が中心ですが、今後は「本丸」のインフラ整備に伴う重電機器の現地生産が本格化が進みそうです。
■日立製作所
日立グループの変圧器製造会社、「日立産機システム(東京・千代田)」は、2015年7月に、ミャンマー第2位の変圧器メーカー、「ソー・エレクトリック・アンド・マシナリー」と生産合弁会社の設立契約を締結します。資本金は4,500万ドル(約56億円)で、日立グループが51%、ソー・エレクトリックが49%を出資します。ミャンマーでの海外企業による電力インフラ機器の本格的な合弁生産は、2011年春の民主化以後最初になります。
現在、ソー・エレクトリックの変圧器市場でのシェアは推定で30%、今後、工場の能力向上を進め、5年後をめどに生産台数を倍増させて、シェア40%を目指します。また、カンボジアやラオスへの輸出も検討しています。日立は、ミャンマーで、情報、電力、鉄道の3分野を柱に据えており、5年後にミャンマーでの事業規模を現状比5倍の年間300億円に増やす計画です。
■三菱電機
三菱電機は、2015年6月25日、ミャンマーの変圧器最大手、「アジア・トランスフォーマー(AGT)」と技術提携しました。送電用などの大型変圧器の量産化を支援する予定です。
ミャンマーで三菱電機が手掛ける、電力インフラ整備にAGT製の変圧器を活用するほか、AGTの生産技術能力を引上げ、将来の委託生産の視野に入れています。
AGTは電圧33kV以下の小型変圧器が主力で、ミャンマー市場のシェアは40%程度です。今後、電圧230kVの中型・大型変圧器の生産も検討しています。
三菱電機は、人材教育を行うなどして、2016年以降の量産化を支援します。AGTからロイヤリティーを受け取るほか、2020年以降の委託生産も検討委しています。
三菱電機は、ミャンマーでの送配電インフラビジネスで、AGTを変圧器を供給する現地協力企業として育成したい考えです。
空調機などを含む三菱電機のミャンマー事業は2015年度予想で年間30億円ですが、変圧器事業を強化して、2016年度以降、50億円に引き上げます。
■背景
アジア開発銀行(ADB)によれば、ミャンマーの2015年の国内総生産(GDP)成長率は、とプナンアジア最高の8.3%になる見通しです。高い経済成長を背景に電力需要も年率2桁ベースで伸びています。重要設備である変圧器の需要は、年17%増のペースで拡大するとの試算もあります。現在6,000万ドル(約74億円)の市場は、5年以内に倍増するとみられます。
軍政時代のミャンマーでは、中国製の変圧器が普及していましたが、品質が低く電力需要の伸びに対応できていません。一方、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や、独シーメンスなど欧米企業は、米国の経済制裁の影響で進出が遅れています。日立は有力企業の提携をテコに成長市場で先行優位を固めたい考えです。
ミャンマーには、民主化以降、日系製造業の進出が始まりつつあるが、多くは製造業や食品業などの軽工業です。ミャンマー側は付加価値の高い電機や自動車産業の誘致にも力を入れています。今回の合弁生産を契機に日系重工業のミャンマー進出が加速しそうです。
日本経済新聞 2015/6/26