ステンレス鋼は、5種類に分類されます。

ステンレス鋼は、5種類に分類されます。
(Stainless steel is classified into 5 types)
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ステンレス鋼は、金属組織の種類から5つに分類されます。詳しくは後述します。
Contents
1.ステンレス鋼とは
ステンレス鋼は、JISの材料記号は”SUS” と書きます。”SUS” は、錆びにくい特殊鋼を表す、”Steel Used Stainless” の頭文字をとったものです。
ステンレス鋼の国際的な定義は、炭素含有量が1.2%以下、かつクロム含有量が10.5%以上の合金鋼と定義されています。ステンレス鋼の錆びにくい性質は、クロムによります(図1)。
図1 Crの含有量による耐錆性
2.ステンレス鋼は5つに分類されます
JIS規格では、現在のところ鋼材としては、82種類規定されています。各メーカでは、JISの鋼種をベースにして、独自の鋼種を開発しています。JIS鋼種を含めると、200種類を超えるステンレス鋼が流通しているといわれています。
ステンレス鋼を成分から分類すると、添加元素がクロムをベースにしたものと、クロム・ニッケルをベースにしたものに大きく分けられます。
また、金属組織によると5種類に分類されます(JIS規格による分類)。クロム系はマルテンサイト系とフェライト系に、クロム・ニッケル系はオーステナイト系、オーステナイト-フェライト系(二相系)、および析出硬化系に分類されます。
・マルテンサイト系ステンレス(クロム系)
・フェライト系ステンレス(クロム系)
・オーステナイト系ステンレス(クロム-ニッケル系)
・⼆相系ステンレス(クロム-ニッケル系)
・析出硬化系ステンレス(クロム-ニッケル系)
さらにクロム・ニッケル以外に各種元素を添加することにより、ステンレス鋼にいろいろな性質を付与できます。
各種元素が添加されることにより、特徴のあるステンレス鋼種が得られます。ここでは、マルテンサイト系、フェライト系、およびオーステナイト系のステンレス鋼について、鋼種のつながりを示します(図2、図3)。
図2 マルテンサイト系・フェライト系ステンレス鋼系統図 ORIGINAL
図3 オーステナイト系ステンレス鋼系統図 ORIGINAL
以下に順に概説していきます。
2.1 マルテンサイト系ステンレス
マルテンサイト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼が低炭素であるのに対して、通常でC=0.25~0.50%、用途によっては1.2%まで高めた高Cr鋼があります。
高温のオーステナイト状態から急冷する焼入れ処理により、マルテンサイト組織にします。その後、適切な温度で焼き戻したものがマルテンサイト系ステンレス鋼です。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、刃物や医療用器具、蒸気タービン翼、ダイス、ゲージ、耐食性ベアリング、耐摩耗性を要求される機械部品などに用いられます。
硬さはC量が高いほど硬くなります。刃物としての切れ味や、機械部品としての耐摩耗性は良好になります。一方、CrとCとが結合して、基地に固溶するCr量を減少させるため耐食性が劣化します。
焼入れ温度はCr量が多いほど高く、950~1050℃に加熱後、急冷します。焼戻し温度は、用途に応じて
100~300℃、または650~750℃とで、この中間の温度での焼戻しは行いません。その理由は、焼戻し温度が400~600℃の場合、Cr炭化物が析出して、その付近の基地の固溶Cr濃度を局部的に著しく減少させて、耐食性が劣化し、焼戻しぜい性を起こし粘り強さが低下するためです。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼は、特に硬化状態では水素ガスによる影響が顕著(水素ぜい性)であり、酸洗やめっき等は十分注意が必要です。
2.2 フェライト系ステンレス
フェライト系ステンレス鋼は、11~30%のCrを含むクロム系ステンレス鋼です。炭素の含有量は比較的小さいです。
金属組織はフェライト単相で、熱処理を施しても機械的性質はあまり変化しません。通常は、焼きなまし状態で用いられます。
フェライト系ステンレス鋼では、いくつかの特性に注意しなければなりません。
(1)鋭敏化
鋭敏化は、860℃以上の高温から急冷する場合に起きる現象です。粒界腐食により耐食性が著しく低下します。
粒界腐食を防止する方法として広く用いられている方法は、Cとの親和力がCrよりはるかに大きいTiやNbを添加して、これらにCを結合させて安定な炭化物にしておく方法です。これらの化合物にはCrを含まないので、基地に固溶しているCr量を減少させることはありません。
(2)シグマぜい性
15%以上の高Cr鋼を、500~800℃、特に700~800℃に長時間加熱すると、炭化物の析出によるぜい化の他に、もろいシグマ相の析出によるぜい化が起こります。これをシグマぜい性といいます。シグマ相が細かく分散して析出すると、強さや硬さは増加しますが、伸びや、絞り、衝撃値などの粘り強さは低下します。
(3)475℃ぜい性
12%以上の高Cr鋼を、450~550℃で長時間加熱後冷却すると、著しくぜい化し耐食性も劣化します。この現象を475℃ぜい性といいます。
フェライト系ステンレス鋼を、600℃以上に加熱したまま、冷却することなく使用する場合は475℃ぜい性は起こりませんが、450~550℃の温度範囲の加熱冷却を繰り返す装置の材料として用いる場合、注意が必要です。
475℃ぜい性の原因については、まだ十分な説明には至っていません。
2.3 オーステナイト系ステンレス鋼
オーステナイト系ステンレス鋼は、オーステナイト単相の金属組織であり、1000~1100℃のオーステナイト状態から急冷することにより、オーステナイト単相にする固溶化処理を行います。
主として、耐食性を重視した目的で使用されます。また、低温じん性にも優れていることから低温用材料として、非磁性のため磁気が問題となる部品に適用されます。
オーステナイトステンレス鋼は変態点を持ちませんので、熱処理により機械的性質を改善したり、結晶粒の調整を行うことができません。また、オーステナイト組織であるため、軟らかくて加工性に富み、板材や、棒材、線材に容易に加工する事ができます。機械的強度は、高温から急冷した状態で引張強さが500~600N/mm2程度です。
しかし、加工硬化性が大きく、加工によりさほど粘り強さを低下させることなく、強さを著しく高くすることができます。また、オーステナイト組織のためフェライト系ステンレス鋼と比較して高温度でも強い特徴があります。
この鋼種の欠点は、
(1) 応力腐食割れを発生しやすいこと。
(2) 熱膨張係数が普通鋼の約1.5倍あること。
(3) 熱伝導度、電気伝導度が、普通鋼の約1/4であること。
などです。
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3. 金属顕微鏡写真
各種類の、代表的な顕微鏡写真を示します。
図2 マルテンサイト系ステンレス鋼
図3 フェライト系ステンレス鋼
図4 オーステナイト系ステンレス鋼
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まとめ
・ステンレス鋼の定義は、クロム含有量が10.5%以上あることです。
・ステンレス鋼の分類は、
添加元素をベースにすると、クロムベースとクロム・ニッケルベースとに大別されます。
金属組織から見ると、大きく5種類に分類されます。
下記リンク先も参照してください。一部は重複していますが、もう少し詳しい情報があります。
参考文献
ステンレス協会HP http://www.jssa.gr.jp/contents/about_stainless/key_properties/
改訂増補版 鉄鋼の顕微鏡写真と解説 佐藤知雄 S56年 丸善
機械工学便覧 第6版 β02-02章
JSG4303 ステンレス鋼棒
引用図表
図1:Crの含有量による耐錆性 日本ステンレス協会HP(http://www.jssa.gr.jp/contents/about_stainless/key_properties/)に追記
図2 マルテンサイト系・フェライト系ステンレス鋼系統図 ORIGINAL
図3 オーステナイト系ステンレス鋼系統図 ORIGINAL
図4:マルテンサイト系ステンレス鋼 改訂増補版 鉄鋼の顕微鏡写真と解説
図5:フェライト系ステンレス鋼 改訂増補版 鉄鋼の顕微鏡写真と解説
図6:オーステナイト系ステンレス鋼 改訂増補版 鉄鋼の顕微鏡写真と解説
REV:2024/07/12
ORG: 2021/07/27