表面処理入門

表面処理入門

本編は、原則として金属製品を対象にした表面処理技術について簡単に見ていこうと思います。
主に、防錆や防食、耐摩耗性などの付与を図ることを目的とする処理について記述していこうと思います。
焼入れなどの金属の熱処理については、別の入門編で示そうと考えています。

他の入門編と同じように、いつまでたっても未完成な状態を継続するかもしれませんが、あしからず御了解願います。

 

1.表面処理の定義

本入門編で示す、表面処理の定義を以下に示します。
「表面処理とは、化学的及びもしくは物理的な処理によって、材料表面を改質すること。」

2.除去加工と付加加工

表面処理による改質の形態については、除去加工と付加加工の2種類に分類されます。

(1)除去加工
除去加工とは、材料表面の付着物もしくは材料自身を削り取る処理方法です。 除去加工に対応するものは、「洗浄」や「防錆」、表面の特定部分を物理的もしくは化学的に除去する「エッチング」、材料表面を鏡面仕上げする「電解研磨」や「化学研磨」などがあります。

(2)付加加工
付加加工には、除去加工以外のすべての表面処理が当てはまります。表面処理の大部分が範囲に入ります。 付加加工について、表面の改質状態により、さらに5つに分類されます(注1)。

1) 材料表面の化学的な組成を変化させずに、材料表面の組織を変化させる。
「高周波焼入れ」や「炎焼入れ」などの表面焼入れが該当します。表面焼入れは金属表面を急速加熱・急速冷却するのみで、表面の化学的組成は変化しません。ただし、表面の金属組織はソルバイトなどからマルテンサイトなどに変化して硬化し、耐摩耗性や耐疲労性が著しく向上します。

2)材料表面が化学反応を起こして組織を変化させる
「陽極酸化」や「化成処理」などが該当します。アルミニウムの陽極酸化はアルマイト処理といわれ、表面にアルミニウム酸化物(Al2O3)の層を生成して、耐摩耗性や耐食性を向上させます。化成処理の例として、リン酸皮膜処理があります。これにより防錆効果や、塗装下地として塗料付着性の向上、塑性加工時の潤滑などの効果が得られます。

3)材料表面に他の物質をコーティングする
「めっき」や「塗装」、「ライニング」など、多くの種類の表面処理があります。 材料表面に、基材とは全く異なる材質で処理層を形成する表面処理です。本処理の特徴は、基材と処理層との境界が明確なことです。

4)材料表面にほかの元素を浸透させる
「浸炭処理」や「窒化処理」などが該当します。熱拡散を利用して、材料表面から他の元素を浸透させる表面処理です。 浸透させる元素の濃度は、材料表面から内部に向かって減少します。基材と処理層との明確な境界はありません。

5)材料表面に他の物質を載せて、さらに基材との境界に元素を浸透させる
「溶融亜鉛めっき」や「熱CVD」などが該当します。溶融亜鉛めっきでは、純亜鉛により形成される最表面層の下に、亜鉛と鉄との合金層が存在します。

3.目次

1.金属表面の物理化学的性質
 1.1 金属表面の構造
 1.2 金属表面の現象
  (1)溶解・酸化
  (2)吸着
  (3)電子放射
  (4)ラッセル効果
  (5)レービング効果
  (6)表面エネルギー・表面張力

2.金属表面の清浄化
 2.1 機械的清浄化
 2.2 酸洗処理
 2.3 脱脂
 2.4 研磨
  (1)機械的研磨
  (2)電解研磨
  (3)化学研磨
 2.5 洗浄
 2.6 防錆処理

3.溶融めっき
 3.1溶融めっきの基礎
  (1)溶融めっきの分類 
  (2)固体金属と溶融金属との反応
  (3)めっき条件における合金層
  (4)フラックスの作用
 3.2 溶融めっき各論
  (1)溶融亜鉛めっき
  (2)溶融錫めっき
  (3)溶融アルミニウムめっき
  (4)溶融鉛めっき

4.拡散浸透めっき
 4.1 拡散浸透めっきの基礎
  (1)浸透めっきの特徴
  (2)拡散浸透めっきの一般方式
  (3)拡散機構
 4.2 浸透めっき各論
  (1)クロマイジング
  (2)シェラーダイジング
  (3)カロライジング
  (4)ケイ素浸透

5. 電気めっき
 5.1 電気析出の電気化学
  (1)可逆(平衡)電位
  (2)標準還元電位及び分極
  (3)陰極薄膜
  (4)錯イオンからの金属析出
  (5)めっき液組成
 5.2 電着金属の構造と性質
  (1)結晶の成長に影響する因子
  (2)電着金属の組織
  (3)電着金属の性質
 5.3 光沢めっき
 5.4 合金めっき
  (1)濃度の調整
  (2)電流密度の調整
  (3)固溶体または金属間化合物をつくる場合
  (4)分極性の調整
  (5)添加剤による方法
  5.5 電気めっき各論
  (1)銅めっき
  (2)ニッケルめっき
  (3)クロムめっき
  (4)亜鉛及びカドミウムめっき
  (5)錫めっき

6. 無電解めっき
 6.1 無電解めっきの原理
 6.2 無電解ニッケルめっき

7. 乾式めっき
 7.1 物理蒸着法(PVD)
 7.2 化学蒸着法(CVD)

8. 陽極酸化
 8.1 陽極反応の種類
 8.2 陽極酸化被膜の利用
  (1)不働態皮膜としての利用
  (2)絶縁性皮膜としての利用
  (3)防食皮膜としての利用
 8.3 Al の陽極酸化

9. りん酸塩処理
 9.1 皮膜生成機構
 9.2 りん酸塩処理の管理方法
 9.3 りん酸塩処理の用途による分類
 9.4 非鉄金属のりん酸塩処理
 9.5 金属酸化膜処理

10. クロム酸塩処理(クロメート処理)
 10.1 化成機構
 10.2 処理液及び処理法
 10.3 皮膜の性質

11. 溶射
 1. 概要
 2. 溶射の歴史
 3. 溶射の特徴
 4. 溶射方法の種類
 5. 溶射の施工工程
 6.溶射技術の応用
 7. JIS規格

12. ライニング
 12.1 ガラスライニング
 12.2 樹脂ライニング

13. 塗装
 13.1 塗装の概要
 13.2 下地処理
 13.3 塗料の種類
 13.4 塗装方法

注1:金属表面処理の基礎知識1 :イプロス

 

見直し:2016/8/28 
作成:2015/6/12